筑波山(その4)

 1月9日に筑波山に登った話のつづき。

 まず最高峰の女体山(877m)に登り、続いて西にそびえる男体山(871m)に登るべく、鞍部の御幸ヶ原にやってきたところから。このあたりの雰囲気は昭和の頃からあまり変わらない。ただ、かつては回転式だったコマ展望台は今はもう回っていない。

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 懐かしい風景だろうと思い、妹弟に写真を送ったら、妹から「自転車で行ったの?」という返信が来た。東京に住む人間が茨城県筑波山に登ったといって、自転車で行ったのか、と聞かれることは普通はない。

 筑波山ライブカメラ

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 さて、こちらもブナ林に覆われた斑糲岩の山である男体山までは御幸ヶ原から普通なら簡単に登れるが、こちらも雪と氷の道なので、慎重に登って、15分ほどでたどり着いた。時刻は11時35分。

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 こちらには男体山御本殿があり、伊弉諾尊イザナギノミコト)が祀られている。

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 御朱印。こちらも女体山と同じクリアファイル付きで500円。

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 男体山からは南から西の眺望が開ける。

 富士山・・・かと思ったら、違った。あれはどこの山だろう? 浅間山かな、と直感的に思ったのだが。

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 こちらが富士山。関東平野の広さを実感できる眺め。

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 男体山には気象観測所がある。日本初の山岳測候所だそうだ。

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 その始まりは今から120年前。1902年に旧皇族山階宮菊麿王が自己資金で山階宮筑波山測候所を建設し、通年観測を開始したのだそうだ。

 1909年には国に寄贈され、中央気象台付属筑波山測候所となり、1928年に現在の建物が完成。

 1976年に完全無人化され、2001年にはアメダス(地域気象観測システム)の統廃合により気象庁の観測所としては閉鎖されるが、筑波大学に引き継がれ、2006年に観測再開。現在は筑波山神社が所有し、筑波大学計算科学研究センターが神社と共同で管理・運営し、最新の気象研究や天気予報に活用されているという。

 

 さて、筑波山の二つの山頂で神様に挨拶を済ませ、御幸ヶ原に戻ってきた。

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 ちょうど昼食時で、お店はどこも賑わっているが、その中で空席があった一軒で昼食。鶏つくねや豚肉、野菜など地元の食材を使った「つくばうどん」を注文。これはどこのお店でも看板メニューになっていて、値段も各店共通の1,000円だ。ちょっと高いが、まぁ、観光地だからね。

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 美味しかった。そして、何よりもお店のおばちゃんの茨城弁に心がなごんだ。茨城弁をしゃべる人に悪い人はいないのではないか、と思ってしまう。

 こんなのがあった。

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  さて、あとは山を下るだけだが、どうしようか。当然、歩いて下るつもりだったが、凍った雪道だと、ちょっと危険かもしれない。ということで、帰りはケーブルカーにしようという気持ちになりかけていたが、ケーブルカーの山頂駅の脇から筑波山神社へ下る「御幸ヶ原コース」を確認したら、整備された階段で、雪もほとんどない。これなら行けそうだ。

 ということで、当初の予定通り、下りも歩き。最初のうちは丸太を使った階段で、どんどん下っていく。登ってくる人たちにとっては最後に長い階段が続き、ちょっと大変かもしれない。半袖のTシャツ一枚になっている男性もいた。

 階段が終わると、露出した岩や根っこを階段がわりにして、下っていく。こちらには白雲橋コースのような名前の付いた巨岩・怪石はあまりないが、斑糲岩がごろごろしているのは同じである。そして、小さな祠もある。

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 御幸ヶ原から筑波山神社まで2.1キロ。

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 最初のうちはブナなどの落葉樹が多かったが、下るにつれて杉が目立ってくる。その下にはアオキなどが多くなる。ブナ林から暖帯林へという植物の垂直分布がはっきりしているのも筑波山の特徴だ。

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 まもなく岩の間から流れ出る湧水がある。これが男女川(みなのがわ)の水源。

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 男女川はここから山麓まで流れ下り、桜川に合流し、土浦で霞ケ浦に通じている。

 小倉百人一首に選ばれた陽成院の歌がよく知られている。

 筑波嶺の峰より落つる男女川 恋ぞつもりて淵となりぬる

 

 男女川を越えると、道はいったん登りに転じたりもするが、すぐにまた下る。この道は昔、家族でも登ったり、下ったりしたし、中学生の時には友人と3人で登ったりもした。その時は御幸ヶ原から筑波山の北側に少し下った地点にあったユースホステルに泊まったが、そのユースも今はなくなってしまった。

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 やがて、ケーブルカーの線路が見えてくる。下り始めの時点では線路は左側にあったのだが、登山道の下をケーブルカーはトンネルで抜けているので、ここでは右側に線路がある。ちょうど中間地点で、行き違いが行われる区間だ。

 そして、ここにはかつて中の茶屋という茶店があったが、これもすでに廃業して、今は礎石を残すのみだ。跡地にはベンチがある。

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 ケーブルカーが登ってきた。


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 ケーブルカーの行き違いを見物して、さらに下る。

 筑波山は上部が斑糲岩、下部が花崗岩になっていて、このあたりから花崗岩地帯になるそうだが、風化が進んで、土壌化してしまったのか、はっきりと花崗岩と分かるような岩は見当たらなかった。斑糲岩は相変わらずゴロゴロしている。

 それでも筑波山の内部には巨大な花崗岩が存在し、その岩体は筑波山から北の山地へと続いている。筑波山北麓の真壁やさらに北の笠間では花崗岩が石材として採掘され、真壁石、稲田石として知られている。稲田石は国会議事堂や東京駅にも使用されている。

 

 とにかく、ヒガラ、ウグイス、メジロ、カケス、アオゲラなどの声を聞きながら下り続け、ケーブルカーの宮脇駅のそばで登山道は終わり。そこに鳥居がある。

 女体山と男体山御朱印をいただいたので、筑波山神社でも、と思っていたが、大行列ができていたので、今回はパス。筑波山神社御朱印は過去に2回頂いている。

 ということで、神社の境内を通り抜け、子どもの頃に散歩した懐かしい道を歩く。

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 陽射しが暖かい。ホオジロやモズの姿を見かけ、今年初めてオオイヌノフグリが咲いているのを発見。小さな春を見つけた気分になる。

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 最後に江戸時代までは筑波山信仰の中核だった旧中禅寺の大御堂にも寄ってみた。

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 2020年に新しい本堂が完成したそうだが、ご本尊の千手観音像も金ぴかになっていた。一度山崩れに飲み込まれ、土の中から無傷で現れたというあの黒々とした観音様は秘仏になったのだろうか。それともあの観音様を修復して、金箔をはり直したのだろうか。

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 ここでも御朱印を頂こうと思ったが、数人が並んでいたので、諦めて、15時10分のバスに乗って山を下ってきた。17時45分に帰宅。22,297歩。



 

筑波山(その3)

 1月9日(日)に茨城県筑波山に登った話のつづき。

 筑波山神社から「白雲橋コース」の登山道を登り、女体山頂に近い尾根筋にたどり着いたところから。時刻は10時を過ぎたところ。

 このあたりからは冷涼な気候を好むブナが多くなる。筑波山の山頂付近に孤立的に生えるブナは氷河期の生き残りだそうだ。

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 このあたりの尾根道は比較的平坦で歩きやすいが、凍っている場所もあるので油断はできない。

 冷たい風が強く吹きつけてくるが、体はすっかり温まっており、少し汗ばむぐらいだ。

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 立ち枯れたブナ。大気汚染や温暖化など人為的な原因で枯れたのだろうか。関東でもブナの生えた山は各地にあるが、どこでも枯死する木が増えて、ブナは危機的状況になっている。

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 また高くそびえる巨岩が現れた。「北斗岩」だ。

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 説明文によれば、天空に輝く北斗星のように決して動かないという意味だそうだ。動かないということは、ここでいう「北斗星」とは北極星のことだろう。

 傍らにある祠は小原木(こはらぎ)神社で、月読尊(ツクヨミノミコト)を祀っているという。

 北斗岩もくぐれるので、くぐった。

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 いよいよ山頂が近づき、道はまた険しさが増してきた。岩場が多くなり、しかも、その上に雪が積もって凍っている。手で岩につかまりながら、恐る恐る足を運ぶ。他の人たちも同じで、「筑波山で滑落なんて嫌だなぁ」などと言っている。

 まぁ、崖下に転落なんてことはないが、滑って転んで怪我をするというぐらいのことは起こりうる。一歩ずつ慎重に進む。

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 まもなく「屏風岩」。

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 ロープウェイの真下にあり、素戔嗚尊(スサノヲノミコト)を祀る安座常(あざとこ)神社が鎮座している。

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 ロープウェイがやってきた。女体山頂はすぐそこだ。でも、まだあんなに登るのだ。

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 すぐにまた巨岩が現れる。この岩にはどんな名前がついているでしょう?

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 正解は・・・。

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 大仏岩。高さ15メートル。

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 大仏岩から10分、険しい岩の間をなんとか登り切って、ついに筑波山の最高峰、女体山の頂上に到達。標高877メートル。時刻は10時37分。

 ロープウェイやケーブルカーで登ってきた人たちも含めて老若男女で賑わっている。f:id:peepooblue:20220111134818j:plain

 筑波山日本百名山にも選ばれている。百名山の中で標高1,000メートルに達しない唯一の山であるが、名峰であることは確かだろう。

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 ところで、これまでずっと見てきた斑糲岩の「糲」という字は黒米を意味するそうで、斑糲岩は角閃石や輝石などガラス質の有色鉱物を多く含むどちらかというと黒っぽい岩石で、石材としては黒御影とも呼ばれる。登山道でも長い年月、人々に踏まれ続け、磨かれて、黒光りしている部分があった。ところが、この女体山周辺の斑糲岩は無色鉱物の斜長石を多く含み、全体が白っぽく見える。これはマグマが冷えて固まる過程で、比重の軽い斜長石が上の方に集まり、その部分が女体山の岩体となっているからだそうだ。一方、男体山の斑糲岩は黒っぽいという。

 女体山付近の岩。

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 一等三角点。僕が子どもの頃は筑波山(女体山)の標高は876メートルと覚えていたが、1999年から877メートルになった。かつてはこの三角点の位置を筑波山の標高としていたが、山頂にはそれよりも1メートルほど高い岩があるので、それに合わせて訂正されたということらしい。

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 とにかく筑波山の最高地点である。女体山からは霞ケ浦など東側の眺望が優れている。

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 女体山には女体山御本殿があり、伊弉冉尊イザナミノミコト)が祀られている。

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 ここではお守りなども売られていて、御朱印もある。500円もするが、せっかくなので頂いてきた。予想通り、予め準備されたものに日付を入れるだけのもの。表にダイヤモンド筑波山の写真がプリントされたクリアファイル付き。

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 この後、男体山にも登るので、そこでまた500円ということになる。

 女体山から男体山方面を望む。

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 ここからは女体山と男体山の間の鞍部にあたる御幸ヶ原へと下っていく。道沿いには電波塔がいくつも立ち並んでいる。かつては電波銀座などと呼ばれていた。

 雪さえなければ、気軽にハイキング気分で歩ける道だが、今日は各所で凍っているので、なかなか苦労した。一度、ツルッと滑ってコケそうになった。危ない、危ない。

 鶺鴒(せきれい)石。セキレイがこの石の上に止まって、男女の道を教えたということなのだが、これはイザナギイザナミ両神に教えたということなのだろうか。

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 この石の前にはせきれい茶屋がある。

 路傍にあったお地蔵様。

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 お店の並ぶ御幸ヶ原にやってきた。時刻は11時10分。

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 ここからは北側の眺望が開け、日光連山が望まれる。

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 女体山を振り返る。

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 昼食にはまだ早いので、とりあえず男体山にも登ってこよう。

 ということで、つづく。

筑波山(その2)

 1月9日に茨城県筑波山に登ってきた話の続き。

 筑波山神社に参拝し、神社東側の渓流にかかる白雲橋を渡って、白雲橋コースと呼ばれる登山道に入ったところから。時刻は8時50分。

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 木の階段が整備された登山道はとても歩きやすく、雪もほとんどない。むしろ、山麓の方が積雪が残っていたぐらいだ。

 杉の巨木にシイやカシなどの常緑広葉樹が交じる森の中をスイスイと登っていく。

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 登山道沿いには巨岩がごろごろしている。斑糲(はんれい)岩で、これは日本ではそんなに多くは見られないらしい。

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 そもそも筑波山はどのようにできた山なのか。地上に恐竜が闊歩していた今から7500万年ほど前の白亜紀後期、まだ日本列島がユーラシア大陸の一部だった時代に海底に土砂が堆積した地層の中に地底深くから上昇してきた玄武岩質のマグマが貫入する。このマグマがそのまま地層を突き抜けて地表に出れば海底噴火となったわけだが、噴火には至らないまま、地中深くでマグマはゆっくりと冷えて、固まってしまう。こうしてできたのが斑糲岩である。

 その後、およそ6000万年前に再び地球の内部から別のマグマが上昇してくる。このマグマも地中深くで冷えて固まり、今度は斑糲岩とは成分や性質の異なる花崗岩となる。

 これらの岩体が地殻変動によって隆起して陸地化し、岩体を覆っていた地層は侵食され、さらに風化しやすい花崗岩はボロボロと崩れて、周囲になだらかな傾斜を生み出し、一方、硬くて侵食や風化の影響を受けにくい斑糲岩が取り残されることで、筑波山が生まれたのだという。そのため、筑波山は中腹より上の斑糲岩部分は傾斜が急で、山麓へ行くほどなだらかになるという特徴がある。

 

 さて、そのような筑波山を山頂めざして登っていく。

 周囲に斑糲岩がゴロゴロしているのは、マグマの冷却と収縮の際や地中で凄まじい圧力を受けたり、地下から押し上げられ地表に出て高圧から解放された時に多くの割れ目(節理)が生じ、そこで割れた岩石が度重なる山崩れ、土石流によって転がり落ちた結果である。花崗岩のように粉々になることなく、斑糲岩は大きな塊のまま転がっている。これらの石は筑波石として庭石などに利用されている。そして、うちにも小ぶりな筑波石があるので、実は筑波石=斑糲岩は毎日目にする一番馴染みのある石でもあるのだった。

 

 さて、軽快に登っていくと、やがて、つつじヶ丘方面へ行く「迎場コース」が右に分岐。

 さらに登ると、左手の巨岩の上に小石が積まれ、その上に小さな祠がある。これが白蛇弁天。白蛇が棲んでいるといわれ、見かけると、財を成すという伝説があるらしい。ここまで神社から20分ほど。

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 いた! 違うか。

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 道はだんだん岩場が多くなり、険しさも増してきた。ただ、平坦な部分もあり、まだきつくはない。

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 ヒガラのさえずりが聞こえ、ヤマガラも近くに出てきた。ほかにコゲラも見かける。あとはシジュウカラやウグイスの声もする。ウグイスはもちろんホーホケキョではなく、チャッチャッという地鳴きである。

 巨岩の上に小さな祠が祀られている。至るところに神様がおわす。

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 筑波山神社から1.1キロ、女体山頂へ1.6キロ。

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 スギやモミ、ヒノキなど針葉樹中心の林だったのが、だんだん広葉樹が目立ってきた。少し明るい雰囲気になり、野鳥の声も多くなり、木々の間を飛び交っている。

 森の貴重な彩り。

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 少し雪が増えてきた。気温が上がったせいか、木々の枝に残った雪がザザッと落ちて、それが陽射しでキラキラと輝いている。f:id:peepooblue:20220110163628j:plain

 平坦で気持ちの良い道。珍しいアカガシの純林。

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 筑波山神社から1時間、前方から子どもたちの声が聞こえてきて、つつじヶ丘からの登山道と合流する。ちょっとした広場になっていて、子ども連れのグループが休憩している。昔はここに弁慶茶屋という茶店があった。子どもの頃、休憩した記憶がある。江戸時代からおよそ270年続いたというが、店主の高齢化と後継者不在で2006年に廃業したそうだ。険しい登山道の途中で、車も入れず、商品を運ぶのもお店の人が通うのも大変だったのだろう。

 ここで視界が開けて、霞ケ浦が見えた。はるか彼方には太平洋も見える。そして、気づかぬ間にロープウェイの下をくぐっていて、ロープが下に見える(下写真の画面右下)。

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 ここにも小さな祠。

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 少し休んだだけで、また歩き出し、弁慶茶屋跡を振り返る。

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 ここからが筑波山登山のハイライトで、いきなり最大の見どころともいえる「弁慶七戻り」がドーンと現れる。岩と岩の狭間に巨大な岩が引っ掛かっていて、今にも落ちてきそうなので、あの武蔵坊弁慶も通るのに躊躇して七度も引き返したという話だが、実際は弁慶ですら、もしここを通るとするなら、ちょっとためらうに違いないという想像から生まれた名称だろう。

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 僕は何の躊躇もなく、あっさりと通り抜ける。筑波山には大人になってからも何度も来ているが、ここは小学生の時以来かもしれない。

 そこにあった説明板によれば、「古くから、神々の世界と現生を分かつ場所とされてきた石門」ということだ。

 反対側から。

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 東日本大震災の時、つくば市では震度6弱を観測し、筑波山でも強い揺れに見舞われたはずだが、弁慶七戻りは無事だった。でも、絶対に落ちないのか、と言われれば、絶対落ちないとは誰も断言できないだろう。調べてみて、あの地震の時、筑波山で下山中の女性が頭部に落石の直撃を受けて亡くなったという事実を初めて知った。

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 つづいて現れるのが「高天原」。

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 巨岩の狭間を登っていくと、岩の上に筑波山神社の摂社で天照大神を祀る稲村神社がある。祠の背後にも見上げるような岩壁がそびえている。ここは知らなかった。父と登った子どもの頃は弁慶七戻りは強く印象に残っているが、ここは素通りだったろう。

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 つづいて「母の胎内くぐり」。修験道の行場で、岩の間をくぐり抜けることで、罪穢れのない清らかな心身に立ち返るのだという。ここにも石祠がある。

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 これも上からのしかかる巨岩を下で支える岩が硬い斑糲岩だからこそ、押しつぶされないということなのだろう。僕は何気なくくぐり抜けたが、改めてよく見ると、けっこう恐ろしい。下の石がごろんと転がったら、全体が崩れそうだ。

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 そばにもうひとつあったので、こちらもすり抜ける。

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 こんなことをしているのは僕だけで、ほかの登山者は傍らをさっさと素通りしていく。

 次は陰陽石

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 相反する陰(地・女・月・夜・静・暗など)と陽(天・男・太陽・昼・動・明など)に見立てた二つの巨岩が寄り添うように聳え立っていることから陰陽石。寄り添っているというより、一つの石が二つに割れたのだろうけれど。

 10時に標高750メートル地点を通過。

 ちょっとした鎖場になっている険しい岩の間を登っていくと、尾根上に出て、今度は「国割り石」。遠い昔、この場所に神々が集まり、この石の上に線を引き、それぞれが治めるべき地方を割り振ったという伝説からこの名前。岩に幾筋もの亀裂(節理)が縦横に走っていることから、このような想像が生まれたのだろう。

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 だんだん積雪が増え。しかも凍っている場所もある。一歩一歩、慎重に歩かなくてはならない。

 次に見えてくるのは「出船入船」。石の姿がまるで出ていく船と入ってくる船が並んでいるように見えることからこの名前がつき、航路の安全を守る船玉神が祀られ、昔、修験者がここから聖地である熊野を遥拝したとのこと。

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 渡神社。祭神はイザナギイザナミの間に最初に生まれた御子とされる蛭児命(ヒルコノミコト)。

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 この神社の手前に大黒様の後ろ姿に見えるという「裏面大黒」という岩があったはずなのだが、見逃した。足元に注意しながら歩かねばならないので、この先、岩石ばかり見ているわけにはいかなくなったのだ。女体山頂はもうすぐのはずだが、まだ着かない。

 ということで、つづく。

筑波山(その1)

 茨城県筑波山へ行ってきた。昔、祖父が山の中腹に家を建てて住んでいたので、子どもの頃から何度も登った懐かしい山である。祖父の家はもうなくなったが、今でも自転車を使って何度か出かけている。自転車なので、登るのはせいぜい中腹までで、最近は山頂に立っていない。それで今回は久しぶりにちゃんと歩いて頂上まで登ろうと年末から考えていたのである。

 ところが、3日前に東京で大雪が降り、筑波山の山頂にも雪が積もっているのはライブカメラで確認した。それで筑波行きは延期しようかとも考えたのだが、映像で見る限り東京と同じぐらいの積雪だし、天気予報では気温も上がるらしい。まぁ、なんとか登れるのではないか、ダメならケーブルカーやロープウェイを使ってもいいし・・・と気楽に考えて、朝6時過ぎの電車に乗って、とりあえず行ってしまった。

 小田急線、千代田線を乗り継ぎ、北千住からはつくばエクスプレスの快速に乗れたので33分でつくば駅に到着。つくばエクスプレスは本当に速い。

 つくばエクスプレスの車内からも筑波山が見える。

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 ここから山へ直行のシャトルバス。8時の始発便に乗るつもりだったが、バス停に待っていたバスに乗り込んだら7時52分発の臨時便で、すでに座席がほぼ埋まっていて、約40分間立ちっぱなしだった。

 バスは本来、筑波山の東の肩にあたりロープウェイの乗り場があるつつじヶ丘行きだが、本日は路面状況が悪いため、途中の筑波山神社入口までだという。僕は最初からそこで降りるつもりだったので問題はないが、山の上はバスの運行に支障が出るほど雪が積もっているのだろうか。実際、つくばの市街地にも日陰にはまだだいぶ雪が残っている。

 バスは右前方に筑波山、正面に雪をかぶった日光連山を見ながら時速60キロで走り続け、8時半ごろには筑波山神社入口に到着。

 山を登る途中、路上にカラスがいるので、何かと思ったら、車に轢かれた動物が横たわっていた。毛色からするとタヌキでもハクビシンでもなさそうだ。アナグマかな、と思ったが、確かめようがない。バスは避けるように通過した。最近、茨城県に来ると、必ず動物の轢死体を見る。タヌキ、ハクビシン、ネコ・・・。毎日毎日、たくさんの生き物がクルマの犠牲になっているのだ。

 さて、バスを降りると、停留所付近から富士山がうっすらと見えた。広大な関東平野をはさんで、対峙しているようだ。昔、江戸では「西の富士、東の筑波」と並び称されたという。

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 まずは筑波山神社へ。ホテルや旅館、土産物屋、食堂が並ぶ通りはまだひっそりとしている。

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 参道には昔ながらの土産物屋があって、子どもの頃の記憶にあるおじさんとおばさんがそのままおじいさんとおばあさんになって、最近まで店を続けていたが、数年ぶりに来てみたら、お店が跡形もなく消えていた。

 でも、この界隈は本当に懐かしい。

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 子どもの頃、この池でザリガニ釣りをした記憶がある。

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 樹齢800年の大杉。僕が子どもの頃から800年だが、まだ900歳にはならないのだろうか。名物「ガマの油売りの口上」が披露されるようだ。

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 標高270メートルの地にある筑波山神社拝殿。まだ初詣仕様だ。筑波山は山そのものが御神体であり、ここから上はすべて神域である。

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 筑波山の標高は877メートルに過ぎず、さほど高い山ではないが、平坦な関東平野にあたかも独立峰のようにそびえ、恐らくはこの地に人が住み始めた当初から神聖な山として仰がれたと思われる。万葉集にも筑波山を詠んだ歌が25首も収められているなど、古来、人々に崇められ、親しまれてきたが、素朴な山岳信仰から神仏習合の時代には今の神社の位置に筑波山知足院中禅寺という真言宗寺院が建立され、山岳霊場へと発展する。中禅寺は延暦元(782)年に徳一上人により創建されたと伝えられ、長い間、筑波山信仰の中核となり、徳川時代には江戸の鬼門の方角に位置する祈願所として幕府の崇敬と保護を受け、寺は大いに栄えたという。

 ところが、明治時代になると、神仏分離廃仏毀釈の狂乱によって伽藍はことごとく破壊され、中禅寺は廃寺となってしまう。かろうじて難を逃れた本尊の千手観音像だけは地元の信者に保護され、昭和5年に再興された大御堂に安置されたが、昭和13年に発生した山崩れによってお堂ごと埋没。しかし、この時も観音像は奇跡的に無傷で土中から現われたということだ。
 往時の中禅寺境内は筑波山神社となり、かつての本堂の跡地に立派な拝殿が建てられ、今も多くの参拝者を集めているわけだが、旧中禅寺の観音様は神社の西隣にこじんまりと存在する大御堂に奉安されている。鎌倉時代から中禅寺は坂東三十三観音の第25番札所になっており、僕も15年ほど前に札所巡りで大御堂に参拝しているが、当時は目立たない存在で、参拝者も神社に比べれば、ずっと少なかった。しかし、先ほどその前を通ったら、いつのまにか本堂も境内もすっかり新しくなり、通りから立派な石段が通じて、観光客にもその存在をアピールしているのだった。

 

 筑波山神社の拝殿前から隋神門を振り返る。この隋神門は旧中禅寺の仁王門だった。

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 さて、神様に手を合わせ、神社の東側に登り口がある白雲橋コースに入る。ほかにも同じルートを選ぶ登山者が数名、前後を歩いている。登山道に入る前の急坂で雪が凍っていて、みんな足を滑らせている。最初からこんな調子で大丈夫か、と思ったが、そこをなんとか通過すると、雪もほとんどなく、これなら山頂まで行けるかな、という気にはなった。

 「是より女體山」。筑波山男体山(871m)、女体山(877m)の二峰からなり、それぞれの山頂にイザナギイザナミの二神が祀られている。 

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 「売り物件」と書かれた古民家風の空き家がある集落を抜けて、いよいよ登山道に入る。入り口には鳥居がある。コース名の「白雲橋」というのはどこにあるのだろうと思っていたが、先ほど渡った筑波山神社の東側にある橋が白雲橋なのだった。子どもの頃から知っている橋だが、名前は初めて知った気がする。

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 このあたりでツグミの声を聞き、シロハラの姿を見た。冬鳥ウォッチングも楽しみなのだが、どんな鳥に会えるだろうか。

 筑波山神社から女体山の山頂まで約2.8キロ、標高差610メートルだそうである。

 つづく。今回も話が長くなるパターンである。

雪晴れ

 昨日の大雪から一転、東京は朝から青空。東京ではこのパターンが多いが、雪国だと大雪の翌日も大雪というのが普通なのだろう。冬の日本の天気のなんと不公平なことか。

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 とにかく、今日の東京は晴れたが、まだ路上にも雪が残り、しかも朝の気温が今季最低の-3.5℃まで下がったため、道路があちこちで凍っていた。転倒事故が続出したそうだが、僕はスパイク付きのスノーシューズのおかげで普通に歩くことができた。

 雪に埋もれたパンジー

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 厳しい冷え込みの中、咲くビデンス。というより、咲いたまま凍ったという感じか。

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 公園の花壇もこんな具合。

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 今宵の月。

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積雪10㎝

 昨日の天気予報で、今日は南岸低気圧の影響で東京でも雪が降り、23区内でもうっすらと積もる可能性があると伝えていたが、実際に昼前から雪がちらつき始め、だんだん降り方が激しくなって、午後には大雪注意報、さらに大雪警報まで発令される事態になった。

 「大雪」の基準は地域により全く異なり、雪国の人には笑われそうだが、東京の場合、5センチの積雪が見込まれる場合に注意報、10センチに達しそうだと警報が出されるらしい。

 実際、午後には道路も含めてどんどん白くなっていき、都心も含めて気温は軒並み氷点下に下がる。都心の場合、今日の最高気温は10時25分に記録した2.6℃、最低気温は15時49分の-0.4℃だった。積雪は都心で18時に10センチに達したから、一応、大雪警報の基準は満たしたことになる。東京23区で大雪警報が出るのは4年ぶりだそうだ。

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 例によって、交通の混乱も発生。雪は夜には止んだが、明日の朝は氷点下の冷え込みになるということなので、雪が凍結して、また大変そうだ。

 

 東京の新型コロナの新規感染確認が昨日の390人から今日は641人と急激に増えている。沖縄県では981人と深刻だ。ただ、これらの数字には無症状の人も含まれているのだろうし、ごく軽い症状の人もいるのだろう。その辺の内訳をもう少し詳しく知りたい。また、無症状で検査を受けていない感染者も街には多数いるのかもしれない。

 いずれにせよ、今年も一年ずっとマスクをし続ける覚悟はできている。

 

(きょうの1曲)RENAISSANCE / Winter Tree


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多摩川のハヤブサ

 だいぶ前に撮った写真だが、多摩川の宿河原堰にいた猛禽。小さくしか写っておらず、オオタカかなと思っていたが、改めて拡大してみたら、ハヤブサだった。ハヤブサであることが分かる程度にトリミング。

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 明日の東京は南岸低気圧の接近で、23区でも積雪の恐れがあるという。これまではこの手の予報は当たらないことが多かったが、最近は台風などでも予報を上回るような状況になることが増えている気がする。明日はどうなるだろう。一冬に一度ぐらいは雪景色も見たいとは思うが。

 

(きょうの1曲)Frederick Delius / Sleigh Ride


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