アイヌ詞曲舞踊団「モシリ」東京公演

 ここ数年の北海道旅行で毎回、アイヌ詞曲舞踊団「モシリ」(静かな大地の意味)のライヴを観ているが、彼らの久々の東京公演が実現した。

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屈斜路湖畔「丸木舟」にて)

 昨年秋に案内ハガキが届き、チケットの電話予約受付は元日の朝9時からだった。北海道・屈斜路湖畔のライヴハウス「丸木舟」では観客5名だけという日もあったため、今回もチケットは簡単に買えるものと甘く考えていたが、いざ正月の朝にモシリ企画に電話してみると、全然つながらない。それでも定員400名ということで、鷹揚に構えていたら、14時頃にようやく電話が通じた時には1時間前に完売とのことだった。唖然、茫然、大ショック。とりあえずキャンセル待ちということで、わずかに望みをつないでいたところ、1月15日になってモシリ企画よりキャンセルが出たのでチケットが取れたという嬉しい連絡があった。というわけで、1月22日にチケット(5,000円、代金引換)が郵送で届き、いよいよ今日が待望のモシリ東京公演の日である。

 

 会場は芝公園abc会館ホール。全席自由席のため、会場に着いた時にはすでに長い行列ができていたが、幸いステージに近い席を見つけることができた。

 全体的に客の年齢層は高め。みんな北海道でモシリライヴに接した人たちなのだろう。一般的には全く無名ながら、確実に彼らの支持者が増えつつあることを実感する。

 開演は18時。モシリのアルバムのほとんどに参加しているサックス奏者の坂田明氏なども出演するのかな、と思っていたが、実際にステージに立ったのはモシリ・ファミリーとでもいうべきいつものメンバーだった。リーダーのアトゥイ氏を中心に、ヴォーカルのシノチャキ房恵さんとカピウ節子さん。それにシンセサイザー奏者が2名。そして、アイヌの古式舞踊をベースにしたパフォーマンスを繰り広げるのはアトゥイ氏の娘さん6名と息子さん2名。今回は一番下の女の子も舞台に立っていた。

 

 全体的な印象は屈斜路湖畔「丸木舟」で観たライヴの拡大版といった感じ。2部構成で、途中15分の休憩をはさんだ2時間のステージ。

 演奏は最新のテクノロジーも駆使し、打ち込みサウンドも使っていたが、そこにアトゥイ氏のギターや民族楽器ムックリや人間の歌声が加わることで、音楽は土俗的かつ宇宙的な響きを持ち、会場全体を不思議な空間に一変させてしまう。そして、アイヌの民族衣装を基調にした様々なコスチュームに身を包んだ踊り子たちの呪術的なパフォーマンスは観客の目を引きつけて放さない。照明や映像も効果的に使って、完成度の高い舞台演出が見事だった。

 今回は釧路、和歌山県貴志川町、沼津、東京と全国4か所のツアーだったそうだが、もっと多くの人にモシリのことを知ってほしいと思う。

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カムイ・プヤラ