1127012437*マグマ東京公演 第二夜

 昨日は渋谷のO−Eastだったが、本日は同じ渋谷でもクアトロが会場。こちらにはグランドピアノがあるからか。 
 というわけで、6時半開場、7時半開演。超満員で、この1時間がかなり辛い。できれば、座って観たいなぁ。それにしても、ステージ上にスタンドマイクが5本並んでいるのを目にしただけで、これからすごいことが始まりそうだ、と期待で胸が膨らむ。あの方々がここで並んで歌うわけですね。

 さて、ライブはほぼ定刻に始まった。グランドピアノにエマニュエル。そして、目の前に右からクリスチャン、ステラ、ヒミコ、アントワーヌ、イザベル。衣装はイザベルだけが赤で、あとはみんな黒。アントワーヌは例によってマグマTシャツ(安上がり)。
 いきなりTheusz Hamtaahk三部作メドレーからスタート。といっても、これだけで1時間近い。譜面なしで、ひたすら強烈なリズムを叩き出すエマニュエルのピアノをバックに超絶コーラスの嵐。クリスチャンがピアノで作曲し、歌をつける、まさにマグマの巨大な音楽の生まれたままの姿がそこにある。
 今回のライブではアントワーヌ&ヒミコのパガノッティ兄妹の活躍ぶりが目立っていたが、やっぱりクリスチャンの歌声はすごい。今年で確か57歳ぐらいではないかと思うのだが、その声は昔と変わらない。全く衰えを知らない人だ。
 予定調和とは無縁の圧倒的なコーラスに会場も異様な盛り上がり。世界最強の音楽集団マグマが目の前で演奏しているという夢のような現実に誰もが興奮し、感動しているようだった。まさに至福のひととき。
 昨日も大作Emehnteht-Reの1パートとして演奏されたHhaiを2曲目にやって、ここで第1部終了。

 第2部はガラッと変わって、ヴォーカル抜きの演奏。扇の要にドラムのクリスチャン。左右にギターのジェームズとベースのフィリップ、そして両端にエレピ&シンセのエマニュエルとフレデリックが向き合うように位置するお馴染みの布陣。
 1曲目はKohntarkosz。ヴォーカル不在ながら有名な1975年のライブ・アルバムとほぼ同じアレンジだが、目の前で演奏されているせいか、それ以上にテンションが高いように感じられた。ふだんはあまり目立たないギターがかつてのヴァイオリン・パートだけでなくヴォーカル・パートも担っており、結構な活躍ぶり。ベーシストとしてのマグマ在籍年数では最も長くなったフィリップのベースは伝説的な歴代ベーシストに全く引けを取らないド迫力で、会場を異様な熱狂状態に引き込んでいく。そして、ここでもやっぱりクリスチャンのドラムは凄い!としか言い様がない。あれだけ歌えて、これだけ叩ける。そして、これだけの曲を作り出す。こんな音楽家がほかにいるだろうか。
 後半へ行くにつれてどんどん盛り上がる爆発的な演奏の後、会場全体の熱を冷ますようにフレデリックがソロで静かにエレクトリックピアノを弾き出す。あれ、この曲、何だろうと思っていると、やがて、エマニュエルも加わり、徐々に聞き覚えのあるメロディが…。Sowiloi+KMXだ。長らく幻の存在だったこの曲を実際にナマで聴ける日が来るとは! ベーシストのためにあるようなKMXでフィリップのベース、暴れ回る。しかし、こんな演奏をバックに長らくマグマのリードヴォーカルを務めたKlaus Blasquizって凄かったんだなぁ、と改めて思う。

 これで第2部終了。熱狂的なアンコール。再びステージ中央にスタンドマイクが1本、セットされる。何が始まるのか。
 拍手と歓声の中、エマニュエルとフィリップ、そしてクリスチャンが登場。ピアノとベースのみの静かな伴奏でクリスチャンが歌い出す。新曲なのだろうか、タイトルは分からない。アルバム“A Tous Les Enfants”(すべての子どもたちへ)の中の曲みたいな、それまでの激しさとは対極の世界。ステラ、イザベル、ヒミコ、アントワーヌも加わる。コーラスの4人が下がり、ジェームズとフレデリックが加わる。相変わらず演奏は静かで、クリスチャンの歌声だけがすべてを癒すように会場に響き渡る。もちろん、コバイア語である。意味不明なのに、何かが確実に伝わってくる。クリスチャンの創造言語であるコバイア語はどこの国の言葉でもないが故にどこの国でも通じてしまうのだ、ということを改めて思った。涙が出そうになる。いや、本当はちょっと出た。
 演奏が終わって、再度のアンコールにはメンバー全員がステージに揃って応えてくれた。クリスチャンが日本語で「ありがとう」というのを初めて聞いた。
 全体で2時間半余り。昨日以上に感動的なライブだった。今回は4年ぶりの来日だったけれど、また来年も来て欲しい。