MAGMA 40th Anniversary Tour in Japan

フランスのプログレバンド、マグマ(MAGMA)が4年ぶり4度目の来日。おとといのクリスチャン・ヴァンデのソロ公演に続いて、マグマ東京公演2日目に行ってきた。会場は渋谷のO−EAST。全席指定で、パイプ椅子ながら座席が用意されていたのは、正直なところありがたかった。
プログレ系のコンサートといえば、聴衆のオヤジ率が異様に高いというのが普通なのだが、今日は若い人もけっこういる。女性も意外に目立つし、20歳前後と思しきカップルまでいる。マグマファンの男が彼女を誘ったという図式かと思うのだが、大丈夫だろうか?! まぁ、上野の東京国立博物館で開催中の阿修羅展に若い女性が詰めかけているというし、フランスの八部衆=マグマに女性ファンがいてもおかしくないか…(今回の来日メンバーはちょうど8人)。
開演前にステージそばまで行ってみたら、ヴォーカルマイクの下の床に歌詞のカンペが貼ってあるのを発見。ほとんどコバイア語だが、1枚だけ英語詞だったので「コバイア」だと解かる。

MAGMA 
Christian Vander(drums,vocal)
Stella Vander(vocal,percussions)
Isabelle Feuillebois(vocal,percussions)
Hervé Aknin (vocal,percussions)
James MacGaw(guitar)
Philippe Bussonnet(bass)
Benoit Alziary(vibraphone,piano)
Bruno Ruder (piano, clavier)

セットリスト
1.Slag Tanz(仮題、新曲)
2.Felicite Thosz(新曲)
3.Emehnteht-Re(完全版)

(encore1)
Kobaia
(encore2)
Wohst Klaahmeun(仮題)

1曲目はいきなりヘヴィな印象の曲。この曲のイントロのみStellaがピアノを弾いていた。
新ヴォーカリストのHerveはガッシリとした体格で、パワーを誇示するかのようにマラカスを振りながら歌っている。マグマに合った声質で声量も十分。
みんな黒ずくめの中で1人だけ赤いシャツのBenoitのヴィブラフォンが新鮮だ。曲は10分ぐらいだったか。

2曲目も新曲。中間部でBruno以外は全員ステージから姿を消して、延々とエレピのソロが続くという、マグマのライブでよくあるパターンだが、この曲はよかったな。Stellaがソロで歌うパートがたくさんあるのも嬉しいし、Christianのヴォーカル・パートもあり。やっぱりChristianの歌声は圧倒的だわ。ドラムにしても還暦とは思えない桁外れのパワーを感じる。まさに阿修羅のごとき演奏だ。
マグマの音楽というと、暗くて重苦しくて…という印象もあるのだが、その後に必ずすべてを浄めるようなカタルシスが訪れ、閉塞感から開放感へ、暗闇から光明へ、という展開が待っている。あたかも地底深くでうごめいていたマグマが噴火口から爆発的に噴き出してくるような…。そこが快感なわけだ。この曲もまさにそんな感じだったが、後半にいくほどへヴィで陰鬱だったとはいえるかも。まぁ、この曲は30分近くはあったので、一筋縄ではいかない。

そして、今回のコンサートの目玉、70年代から構想され、断片が演奏され続けてきた超大作Emehnteht-Reがついにその全貌を現わした。今秋にはスタジオ盤の発売も予定されているそうだ。
この曲の中に組み込まれたHhaiにはいつもイントロから興奮させられる。そして、Christianが立ち上がり、ハイハットでリズムを刻み、シンバルを乱打しながら熱唱する場面は何度聴いてもカッコいい。

そして、世界中のロックバンドを黙らせることができそうなほどの圧倒的なパワーをもつ超絶アンサンブル。コーラスも含めて生身の人間に演奏可能な限界ギリギリ、極限の音楽。もう凄すぎるとしか言い様がない。凝ったライティングも非常に効果的だ。
この曲は50分以上はあったと思うので、ここまで3曲でもう1時間半ぐらい。
これで本編終了。

アンコールは“Kobaia”。オリジナルのホーンセクションのパートをStellaとIsabelleが声でなぞっていた。Herveも足元にあるはずのカンペは見ずに歌っていたようだ。



2度目のアンコールはまずChristian,Philippe,Brunoの3人が登場し、ピアノとベースをバックにChristianが感動的な歌を聞かせてくれる。静かに盛り上がっていくようなバラードだ。前回の来日時にも最後に演奏され、Christianがまるでジョン・コルトレーンが乗り移ったかのようにマイクをサックスに見立てたパフォーマンスを見せてくれたのが記憶に残っている。やがて、ヴォーカルの3人が登場し、Christianの声にコーラスを添え、ギター、ヴィブラフォンも加わって天上の音楽を奏でる感動的なエンディングだった。

トータルで2時間15分、今回も堪能した。早くも次の来日が待ち遠しい。
会場を出ると、外はけっこうな強い雨になっていた。