越谷オサム『陽だまりの彼女』

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

陽だまりの彼女 (新潮文庫)

 社会人2年目の主人公・浩介が会社の取引先で出逢ったのは中学の同級生・真緒だった。当時、「学年有数のバカ」と呼ばれ、みんなからいじめられていた彼女はいつの間にか「できる人」に成長していた。偶然の再会から、ふたりは恋仲になり、ついには結婚する。
 真緒の衝撃的な過去が明らかになったとはいえ、幸せな新婚生活。このあたりまでは甘〜いラヴ・ストーリー。しかし、読者としては、これは小説なのだから、このままいつまでも幸せが続くはずがないと考えてしまう。この先、どんなストーリーが待っているのかと、不安を感じつつ、読み進めることになる。この時点でもう作者の術中にはまっているわけだ。そして…。
 予想もつかない後半の展開に感情を揺さぶられ、振り回されつつ、読み終えた。この結末には、いろいろな反応がありそうだけど…。
 電車の中で読んでいて、思わず涙が出そうになって、読書を中断する、なんてこともあったが、終わってみると、ちょっと寂しいけど、ほのかに心が温かく感じられるお話。でも、せつない。
 恋愛小説であり、ミステリーでもあり、ファンタジーでもある。いい作品だと思う。