越谷オサム『いとみち 二の糸』

いとみち 二の糸

いとみち 二の糸

 祖母譲りの濃厚な津軽弁にコンプレックスを持ち、極端な人見知り、でも津軽三味線が得意で、青森のメイド喫茶でアルバイトをする高校生、相馬いとの青春を描く『いとみち』の第2弾。
 高校2年生になった彼女の春・夏・秋・冬の4つの話を収録。バイト先では先輩メイドたちが急によそよそしくなってしまったり、学校では中学相撲部出身の後輩男子が登場したり、親友と喧嘩したり…、いろいろな事件が起きるものの、全体としては相変わらずのほのぼの路線。でも、前作以上の充実作。

 いとが通学で使う五能線車中での友達との会話。
「いいなあ、いとっちのバイト先」
えりりんはレースとか入ったロリータっぽい服、好ぎだはんでね」
「それもそうだけど、カフェじゃなくてもいいからバイトやってみたい。うちは親に禁止されでるがら。あ、サナは春休みからバイト始めたんだべ。五所川原のコンビニで。どんな感じ?」
「そえが仕事覚えるのたいへんで、たった四時間でもうだでぇ疲れる。学校始まったら土日限定でっつう約束しといで助かったじゃ。片道一時間かけて青森市さ行って六時間半働いてるいとっちのタフさを思い知った」
 こんな調子で会話はほとんどすべて津軽弁。昔、五能線で旅をした時も車中の女子高生たちはこんな言葉だったのを思い出す。

 個人的には津軽メイド珈琲店の自称「エースメイド」福士智美のキャラがいい。越谷オサムはこういう元気な女の子を描かせると、抜群に上手い。
 2年生編が出たということは、少なくとも3年生編の「三の糸」も出るわけだな。三味線ということで…。

いとみち

いとみち