十九夜塔

 先日、渡良瀬遊水地付近をちょっとだけ散歩した際に、堤防の下の木陰に「十九夜」と刻まれた石塔を見かけた。写真は1枚しかないが、同じ場所にもうひとつ存在し、いずれも「十九夜」の文字とともに如意輪観音像が彫られているのが特徴だ。造立年代を確認しておけばよかった、と今になって思う。

 よく見かける二十三夜塔などと同様、十九夜が旧暦の十九日の月待ち講の遺物なのは分かるが、ちょっと興味が湧いたので、ざっと調べてみて、分かったことをメモしておく。

1.十九夜塔は関東地方、とくに栃木県で多く見られる。僕が見た場所は栃木、埼玉、群馬の県境付近だが、おそらく栃木県内。

2.十九夜には女性たちが当番の家やお寺のお堂などに集まり、守護仏である如意輪観音の像などを拝み、供え物をして、お経をあげたり、念仏を唱えたりといった勤行の後、飲食をしながら談笑する、信仰と娯楽を合わせた集まりだったようだ。女子会の元祖?

3.十九夜には厄除け、安産、子供の健やかな成長などを祈願した。

4.十九夜なのは女性の厄年が十九歳だったことと関係がある(?)。

 とりあえず、こんなところ。
 二十三夜とか十九夜とか、月待ち信仰というのはもはやほとんど廃れてしまったのだと思うが、ちょっと魅力的ではある。
 昔、祖父が茨城県筑波山に住んでいて、麓の駅からバスに乗ると、途中に「二十三夜前」というバス停があった(たぶん今もあるはず)。このちょっと不思議で神秘的とも思える名前が小学生の頃からずっと気になっていて、それが月待ち信仰と関係があるらしいということが後になって分かってきたのだが、そこに何があるのか確認しないままになっている。
 そのうち見てこようかな、と思う。自転車で筑波まで行った時など、これまでにもチャンスはいくらでもあったのだけど…。