檜原都民の森(2日目)

 12月8日、日曜日。
 昨日から参加中の都民の森での自然観察会「ふたご座流星群とテン・タヌキの観察」。
 まだ流星は見ていないが、テンとタヌキは見たし、きれいな星空も見ることができてとりあえず満足しつつ、寝袋で眠り、4時過ぎに目が覚めた。
 5月のイベントだとこの時間帯は山全体に満ち溢れる野鳥のコーラスが感動的な素晴らしさなのだが、今の季節は鳥は歌わないので静かなものである。まだ夜が明ける気配もない。
 それでもなんとなく起きてみたら、これから彗星を見にいくとのこと。急いで防寒態勢をととのえ、同行することに。さすがにほとんどの人はまだ寝ているので参加したのは10名弱か。
 まだ真っ暗な遊歩道をヘッドランプの明かりを頼りに少し歩き、東の稜線上に見えるというラブジョイ彗星を探す。彗星なんて見たことがないので、ワクワクする。
 しかし、現実のラブジョイ彗星はそんなに明るいものではなく、せいぜい5等星と6等星の中間ぐらい、つまり肉眼では見えないのだった。それでも、プロミナーや双眼鏡を使って、これから昇ってくる太陽とは逆方向の左上に向かって尾をぼんやりと伸ばす彗星が一応は見えたし、その場で撮影した写真によっても、よりはっきり確認できた。とにかく、ここでは彗星の写真を紹介することはできませんので、あしからず。

(この写真は感度をISO6400まで上げて撮影)
 それにしても、東京都心方面は未明だというのにやけに明るい。あれはどの辺だろうか。ちなみにすぐ近くのオレンジ色の光は奥多摩周遊道路の道路灯。

(この辺のどこかに彗星があるはず…たぶん。いずれにせよ、写ってないけど…たぶん)
 山の中からはシカと思しき鋭い笛のような声が何度か聞こえた。
 とりあえず、生まれて初めて彗星というものを目撃し、それ以上に闇の中を歩く非日常感を楽しみ、しかし、猛烈な寒さから逃げるように森林館に戻り、夜明けを待つ。そういえば、人工衛星もひとつ見たが、結局、流れ星は見えなかった。

(夜明け前の都民の森)

(最後まで輝いていた金星)


 森林館の温度計を確かめると、氷点下4℃ほど。驚くほどの寒さではないが、もうずいぶん長らく体験していない気温ではある。昔、北海道を旅行した時も旅の中盤の氷点下15℃よりも最初に函館に着いた時の氷点下1℃の方が身体に応えたものだ。

 少しずつ明るくなると、また上空を飛行機が次々と雲を引きながら通過するようになる。


 周辺ではミソサザイが相変わらず1羽だけさえずっている。

 ゆうべ動物たちが出てきた斜面には朝になってカケスが5羽ほど次々とやってくる。山に行けばカケスの声はよく聞くが、こんな風に間近に観察できる場所は日本でも珍しいそうだ。でも、ちっともじっとしていないので、うまく写真は撮れない。やっぱり、こういう場所に来ると、もっといいカメラが欲しくなる。

 この時間帯、いつもならカケスとともにニホンリスが姿を見せるはずなのだが、今日は一匹も出てこなかった。というか、最近、森林館周辺であまり見なくなったそうだ。あの黒猫が食べちゃったか?
 さて、みなさん、荷物の片づけや簡単な朝食を済ませ、カケスを観察して8時過ぎから、再び朝の散歩。コガラやヤマガラのほかはコゲラがいたり、ルリビタキがちらっと見えたりしたぐらいで、結局、時間がないので先ほど彗星を見た展望台まででおしまい。


 しかし、ここでビックリするような事実が判明した。
 この展望台からの風景は何度も眺めているし、写真をこのブログでも何度も紹介しているが、それは大抵は春から初夏にかけてのもので、重なり合う山々と眼下に曲がりくねった奥多摩周遊道路、あとは空だけの風景だった。しかし、空気の澄んだ12月だと山の彼方、先ほどやけに明るく見えた夜景の正体が判明した。 なんと遠くに東京湾まで見えるではないか。対岸の房総半島も見える。プロミナーを使うと、海上のタンカーや羽田空港の滑走路、千葉県の工場地帯の煙突の煙、東京都心のビル群から横浜のランドマークタワーまで望まれるのだった。自然観察でも何でもないが、これはこれで面白い。

 植物の根元にできた霜柱。

 森林館に戻って、テラスで野鳥観察。上空を飛ぶノスリ、モミの木の枝にいるイカルなどを見る。

 その後、イベントのまとめ、そしてアンケートを書いたりして10時に終了。
 帰りのバスは10時15分。ちょっと慌ただしい。もう少しここにいたいが、その後は15時半までバスはなさそうだし、路線バスのある数馬まで歩くことも考えたが、結局、10時15分のバスに乗ることにした。
 春にも会った父子と「また来年の春にでも」と別れの言葉を交わして、森林館をあとにすると、昨日最初にルリビタキ♂を見た付近で大砲のようなレンズを何かに向けて連写している人が。ルリビタキがいるのかと思って、何がいるんですか、と聞くと、カヤクグリだそうだ。なんだそっちか。たぶん、カヤクグリの方が貴重なのだと思うが、地味だし、あのカメラの横で自分のカメラを出すのはちょいと気が引ける。ということで、そのまま坂を下ってバスに乗ったら、帰りは数馬ではなく村の中心に近い払沢の滝入口まで無料で運んでくれた。おかげでそこからのバス代も半額で済んだ。
 それにしても、バスの車窓を眺めていると自転車で登ってくる人がやけに多い。僕も何度も走っているし、都民の森に最初に来た時も自宅から自転車で完全自走、峠を越えて奥多摩湖畔に下り、青梅街道経由でまた自宅まで170キロ超のサイクリングだったっけ。この時季、自転車は多いが、バイクは少ないね。自転車なら体が温まって寒くないが、バイクは寒いのだろう。
 とにかく、僕は武蔵五日市駅から電車で睡魔と闘いながら帰り、家に着いたらとりあえず寝る。