三浦半島サイクリング

 久しぶりに三浦半島一周サイクリングに挑戦。ということは、完走できれば200キロ前後の長丁場。15年前に記録した1日204キロという自己記録の更新を狙ってみたが、最近はあまり長い距離を走っていないので、不安。その場合は途中から電車で帰ることになる。
 5時40分に出発。東京農大の前を通りかかったら、門の中からいきなり馬が出てきた。まぁ、近くに馬事公苑もあるし、この付近では馬が路上を歩いているのはごく普通の光景ではある。
 二子玉川から多摩川サイクリングロードに入り、川崎へ向かう。ヒバリがさえずっていたり、キジの声が聞こえたりする。道端の草地でムクドリがウロウロしているので、轢かないように注意しながら走る。ハマダイコンが花盛りだ。
 国道1号線にぶつかったところで多摩川といったん別れ、塀越しにパカパカと馬の足音が聞こえる川崎競馬の厩舎前を通り、川崎駅北側を通過して六郷橋の南詰から国道15号線に入る。箱根駅伝のコースだ。
 鶴見の中継所となる地点を通過しながら、2区の難所である権太坂を通ってみようかとも考えたが、やめて横浜駅前から「みなとみらい地区」、関内、根岸、磯子八景島を通り、横須賀へ。
 横須賀市内に入ると、急にトンネルが多くなる、そういえば、タモリ倶楽部で横須賀のトンネル探訪みたいな企画があったなぁ、と思いだす。
 朝食がまだなので、途中で見つけた食品スーパーでおにぎりを買って、海釣り公園で食べる。

(海に浮かぶのは猿島
 さらに走って、観音崎へ。ここまで70キロ。

(ここでもハマダイコンが咲いている)
 いつもならここで岬を散策したり、灯台まで行ってみたりするのだが、今日は5分ぐらい休憩しただけ。200キロ走るつもりなので、いつものようなノンビリしたサイクリングとちょっと違う。時間や走行距離、ペース配分など絶えず考えながら走っている感じで、まるでマラソン選手のようだ。
 浦賀は奥深くまで入りこんだ湾の周りを海に沿ってぐるっと走ると3キロぐらいあるが、湾の入り口付近に渡し船がある。長い距離を走りたいのに、ショートカットしては趣旨に反するわけだが、ちょっと面白そうなので、乗ってみた。
 大人150円、自転車50円。所要時間は3分ぐらい。お客は僕だけだった。


 一応、この航路は横須賀市市道という位置づけで、船も市が運航しているようだ。
 この辺まで来ると、ワカメが干してあったりして、東京湾もだいぶのどかな感じになってくる。今日のコースはほぼ全区間、至るところに外来植物のナガミヒナゲシがくすんだオレンジ色の花を咲かせている。
 久里浜を過ぎ、砂浜の続く海岸に沿って走る。まもなく三浦市に入る。現在、走っているのは国道134号線だが、途中から県道に入り、三浦市の金田地区を通りかかる。ここにはかつて世田谷区の施設があって、小学5年生の時に移動教室で1泊したが、どのへんだったか、よく分からないうちに通り過ぎた。
 徐々にアップダウンが激しくなる。長くて急な上り坂で右の腿が攣ったが、なんとか登りきり、剣崎灯台へ立ち寄る。ここで92キロ。
 ここは僕の好きな灯台で、この灯台と対岸、房総半島の洲崎灯台を結ぶラインの内側が東京湾である。なので、剣崎灯台は白と緑の光を交互に放ち、洲崎灯台は赤と白の光を放つ。これはかつて九州行きのフェリーに乗って確認した。

(細道の先に灯台が見えてくる)

 トビが多く、ウグイスもさかんにさえずっている。ほかにメジロホオジロなどの声を聞く。

(剣崎から見た東京湾

(春霞みの彼方に続く房総の山並み)
 江奈湾。地層がむき出しになっていて、そういえばタモリ倶楽部三浦半島の地層を見にいく、みたいな企画もあったなぁ、と思いだす。

 湾の奥は干潟になっていて、ちょうど潮が満ちてきていた。ハクセキレイ1羽。

 この先にも急な登りがあったはずだが、いつのまにかトンネルが完成していて、楽に通りぬけられた。
 正午に城ケ島大橋を渡り、城ケ島へ。ここで今日の走行距離が100キロになる。100キロ走ったところが今日のサイクリングで自宅から一番遠い場所である。しかし、これは想定通り。
 マグロの水揚げで有名な三崎漁港の対岸にある城ケ島なので、どこでもマグロ丼が食べられる。僕も食堂でマグロ丼を食べた。こういう場合、写真を撮ってブログにアップするのが普通かもしれないが、写真はありません。まぁ、ご飯にマグロの刺身がのっている丼です。ほかにワカメのみそ汁とお新香とマグロの角煮付きで、1250円。でも、注文してから気がついたのだが、海のギャングウツボの唐揚げ丼というのもあって、それもちょっと食べてみたかった。町おこしで、各食堂で出しているそうで、美味しいらしい。
 城ケ島をあとにして、今度は三浦半島の西海岸を北上していく。予定では江ノ島まで行って、そこからいつものルートで帰るつもりだが、なんとなく江ノ島か藤沢から電車で帰ることになりそうな予感。
 ところで、今回、もう一つ目的があって、「黒崎ノ鼻」という岬を探訪してみたい。観光地というわけではないが、僕の好きなマンガ「ヨコハマ買い出し紀行」(芦奈野ひとし作)で人型ロボットのアルファさんがどこへ行ったか分からないオーナーの帰りを待ちながら店番をしている喫茶店「カフェアルファ」の所在地、「西の岬」のモデルがどうやらそこらしい。

 ということで、京浜急行三崎口駅の少し北方で国道から脇道に逸れ、春キャベツの出荷の最盛期らしいキャベツ畑がどこまでも広がる畑の中の道を行く。キャベツが終わると、次はスイカ、そして夏が過ぎれば大根の畑へと移り変わっていくのだろう。
 そんな台地の果てに別荘が並ぶ一角がある。あの向こうは海だろう。カフェアルファもあの台地の端っこに建っていたはずだ(近未来の話なので未来形か)。

 「ヨコハマ買い出し紀行」は海面上昇により、海に飲み込まれつつある三浦半島を舞台に、文明が静かに滅びゆく「夕凪の時代」を生きる人々と、彼らと交流する人型ロボットたちの、のんびりとした日常を詩情豊かに描いた作品だ。若い女性の姿をしたロボットであるアルファと交流する人間たちは着実に年齢を重ね、やがて世を去っていく。子どもたちも成長し、彼女を追い越して大人になり、土地を離れていく。年をとらないがゆえに取り残されるロボットの悲しみが作品の通奏低音となっているのだ。
 もう訪れる人もほとんどいない最果ての岬にぽつんとある喫茶店。そんなイメージ通りの風景が広がるのかどうか。
 道のどんづまりに売り物にならなかった作物の廃棄処分場があり、そこの柵をくぐって、細い土道を下っていくと、それらしい岬がみえてきた。

 笹や様々な植物が生い茂る中の獣道のような細道をかき分けていく。


 風景そのものはほぼイメージ通り。でも、誰もいない静かな場所を想像していたのに、磯遊びの家族連れなど、けっこう人がいるのだった。

 それでも、こんな場所で文庫本でも読んだり、昼寝したりしながら過ごすのは気持ち良さそうだな、と思った。

 とにかく、「聖地巡礼」ができて満足し、あとはひたすら走り続ける。実際にはここまで走ってきた横浜も横須賀も三浦海岸も城ケ島もみんな作品の舞台である。ただし、現在の市街地はほとんど海面下に沈んでいるわけだが…。僕の脳内では先ほどからずっとアニメ版「ヨコハマ買い出し紀行」のサントラがエンドレスで流れている。

ヨコハマ買い出し紀行 OVA OP

 三浦市から横須賀市に入り、陸上自衛隊の武山駐屯地あたりは作品では海中に没している場所だな、などと考えつつ走る。
 アップダウンを繰り返しながら北上し、葉山町に入ると、すぐに長者ヶ崎。


 ここも「ヨコハマ買い出し紀行」で印象的に描かれた場所。「北の大崩れ」のモデルだ。
 江ノ島が見える。

 逗子市を経て、鎌倉市の滑川の交差点を通過したのが、15時。
 稲村ケ崎でちょっと休憩。

 渋滞するクルマをどんどん追い抜いて江ノ島まで走ったが、まだ走れそうだ。
 ということで、ここで小田急線に乗るという選択肢は捨てる。

 藤沢もノンストップで通過。ここで走行距離が150キロになる。家まであと50キロ。遠いなぁ、とは思うが、行けそうな気もする。

 遊行寺で参道の桜の写真を撮り、境川のサイクリングロードに入る。向かい風を心配したが、どうやら大丈夫そうだ。しかし、ここから先の長さを考えると、急に疲れがどっと出て、急激にペースダウン。とにかく10年以上経験していない長距離を走ってきたせいか、早朝の多摩川沿いを走ったことも、横須賀あたりを走ったことも、城ケ島でマグロ丼を食べたり、黒崎ノ鼻を訪ねたことも遠い過去のように思えて、今日のこととは思えない。150キロ以上も自転車で走ってきた体験の密度が濃すぎて、そう感じるのだろうか。
 とにかくヘロヘロになりながら、境川の遊水地の休憩所で10分ほど休むと、だいぶ回復して、調子が出てきた。
 17時過ぎに国道246号線にぶつかったところで、さてどうするか。アップダウンの激しいR246を行くか、それともさらに境川に沿って町田まで北上し、小田急沿いを帰るか。どちらにしても、まだまだ遠いなぁ、と思う。
 結局、記憶に従えば、アップダウンが比較的緩やかだった気がする町田経由を選択。途中で道に迷ったり、道を間違えたりしたが、鶴川からは一本道。記憶よりは上り坂が多かったが、まぁ、なんとか乗り切り、世田谷まで意外に快調に走り続ける。ただ走行距離が記録更新にちょっと届かない感じなので、最後に少し遠回りして、19時半に帰宅。走行距離は205.1キロ。自己最高を15年ぶりに0.9キロ(笑)更新する新記録達成!

 相当疲れたのは確かだが、このブログを更新する元気が残っていたのも事実、ということです。
 明日は階段の上り下りにも苦労するかも…。