エレクトリック・アストゥーリアス

 吉祥寺のライブハウスCLUB SEATAにヴァイオリンがフロントのロックバンド、エレクトリック・アストゥーリアス(エレアス)のライブを観に行く。
 今回は2ndアルバム“Elementals”の発売記念ライブということで、満員の大盛況だった。
 メンバーはテイセナ(Vln)、平田聡(G)、川越好博(Kb)、大山曜(B)、田辺清貴(Ds)の5人で、スペシャルゲストとして元ザバダック上野洋子さんの出演も告知されていたから、それだけでも見逃せないライブだった。
 開場は17時15分、座席を確保すると、とりあえず物販コーナーで先行販売のエレアスの新作を購入。メンバーのサイン入りポストカード付き。

エレメンタルズ

エレメンタルズ

 エレアスのライブを観るのはちょうど1年ぶりだ。
 18時ちょうどに開演。演奏が始まると同時に幕が左右に開くと、向かって左にキーボードの川越氏、その右後方にベースの大山氏、センターにエレクトリックヴァイオリンを手にした紅一点のテイさん。右端にギターの平田氏。テイさんの真後ろにドラムの田辺氏という並び。
 エレアスの音楽はリーダー大山氏の音楽的嗜好を反映したプログレッシヴロックの王道を行くもので、変拍子を多用し、めまぐるしく展開する構成も複雑でやたらに演奏するのが難しそうなのだが、パワフルでテクニカルでありながら、むしろ美しいメロディーが耳に残る。そのあたりはプログレ大好きな大山氏ならではのファン心理をよく知るが故のツボを押さえた曲作りの特徴的な部分でもある。一度聴いただけでは、どんな曲なのか、よく分からず、普通のポップスばかり聴いている人にはワケのわからない音楽かもしれないけれど。
 そう意味ではステージ中央でミステリアスな雰囲気をまといながらヴァイオリンを弾きまくるテイセナさんの音楽面だけでなくヴィジュアル面も含めた貢献度は大きい。彼女がいなければ、あとはオジサンのバンドだしね。

 前半中盤でアコーディオンを手に上野さんが登場。3曲に参加。アストゥーリアスの3作目『クリプトガム・イリュージョン』より「O Tempo Passa」が聴けたのは貴重。そして名曲「Ryu‐Hyo」が上野さんのアコーディオン入りで聴けたのもよかった。
 ちなみに大山さんと上野さんの出会いは30年近く前、大山氏が音楽業界に足を踏み入れ、レコーディングの現場で裏方として働き始めた時、最初の仕事が上野洋子さんと吉良知彦さんのユニット、ザバダックの録音だったらしい。プロのレコーディングの現場で新しい音楽が生まれる瞬間に立ち会い、ものすごく感動し、衝撃も受けたという。ただ、その後、ものすごくたくさんのレコーディングに立ち会っているものの、あのような経験はあの時一度だけだそうだけれど。とにかく、それ以来、上野さんと親しくなり、大山さんが自らのプロジェクト、アストゥーリアスを始動させ、作品を制作することになった時、ヴォーカルで参加してもらったのだという。
 その上野洋子さんはザバダック脱退後、ソロや様々なユニットで音楽活動を続けていて、僕も何度かライヴを観ているが、最近はアヴァンギャルドな活動も多くなっているようで、「拍子や音程とはサヨナラしました」(笑)とのこと。年齢を重ねても、あの美声は相変わらずだった。
 さて、前半が終わって、休憩。会場内に設置されたモニターでアルバムの告知や会場で販売されているテイセナさんプロデュースのRyu-Hyoカクテルの宣伝などが流れるが、なかでもエレアス初のライブDVD発売決定の知らせは嬉しい。2013年のアメリカでのライブの映像が作品化されるそうだ。テイさんという看板娘がいるのだから映像作品を出さない手はないと思っていたので、これは本当に素晴らしいニュースだ。楽しみ。ついでにアコースティック・アストゥーリアスの映像作品もお願いしたい。
 後半。ステージに登場したメンバーの胸には今回のアルバムジャケットのイメージカラーにちなんだ青い花のコサージュが。テイさんの衣装が赤を基調としたものから黒に替わったのはもちろん気がついたが、今回は男性陣も衣装替えをしたらしい。平田氏の帽子を脱いで出てきたこと以外、全く気づかず。
 とにかく、後半戦も4部構成の組曲など濃密な演奏で聴衆を圧倒し、定番「Double Helix」で本編終了。

 アンコールは上野さんを迎えてマイク・オールドフィールドのカバーを、というので、有名な「Moonlight Shadow」かと思ったら、なんと「To France」というサプライズな選曲。この曲、好きなのだ。エレアスの大山氏以外のメンバーはこの曲を知らなかったそうだけれど。アコースティック・アストゥーリアスのメンバーでフランスに留学した筒井香織さんに捧げるという意味もあるようだった。
 そして、最後にメンバーだけで「Distance」。終演は20時半頃だった。

[Set List]
1. Deadlock Triangle            
2. 時を支配する人々
3. The Lancer         
4. Tangram Paradox
5. 聲無キ涙  
上野洋子コーナー          
6. Papiliones
7. O Tempo Pasa
8. 流氷(アコーディオンVer.)

  • 休憩-

9. Honeycomb Structure
10. 嵐が丘(新曲)
11. 組曲「エレメンタル」
   ウンディーネ
   サラマンダー
   シルフィード
   グノーム
12. Double Helix

  • En-

1. To France(Mike Oldfield カバー)
2. Distance

 大山氏がお客に新作の宣伝をよろしく、と盛んに言っていたが、正直なところ、エレアスの音楽はややマニアックで聴き手を選ぶようなところはあるかも。美しい音楽が好きな人なら誰でも楽しめるのは、ギター、ヴァイオリン、クラリネット、ピアノという室内楽編成のアコースティック・アストゥーリアスの方かな。


マーチング・グラス・オン・ザ・ヒル Marching Grass On The Hill

マーチング・グラス・オン・ザ・ヒル Marching Grass On The Hill

レジェンド・オブ・ゴールド・ウィンド

レジェンド・オブ・ゴールド・ウィンド

(おまけ)ザバダック/遠い音楽
 上野洋子さんがザバダックに在籍した最後のライブで最後に演奏された「遠い音楽」。