都民の森・自然教室(1日目)

 また行ったのか、と思われそうだが、また行ってきた。檜原都民の森の自然観察会。でも、3月は初めてである。
 3月14日、土曜日。6時前に家を出て、電車とバスを乗り継ぎ、9時10分頃、東京都檜原村の最奥、標高1000〜1500メートルの山岳に広がる都民の森に到着。まだ雪景色かと思ったが、雪はところどころに残っているだけだった。気温は1℃に届いていない。5月だと着いた途端にミソサザイオオルリなどの声が迎えてくれるのだが、今日はヤマガラなどカラ類の声ぐらいだった。と思ったら、ミソサザイがまだ少しぎこちない歌声を聞かせてくれた。


 また、カケスやヤマガラ、コガラの姿も次々キャッチ!



 1泊2日のイベントで、宿泊施設がないので、寝袋持参。参加費は無料だが、傷害保険料がこれまでの100円から200円にアップしていた。でも、これだけでとても満足度の高いイベントに参加できるのだから有難い。
 今回は40名近い申し込みがあったそうだが、インフルエンザなどで直前のキャンセルが相次ぎ、実際の参加者は25名ほど。子どもは幼稚園の男の子や小学生女子(1、2年生)が計4名。毎回、チビッ子参加者はけっこういるが、小学生でも高学年はあまり見たことがない。そうしたファミリーを除けば、僕も含めてオジサン、オバサンが多い。
 イベントのパターンは大体、いつもと同じで、都民の森の拠点施設・森林館の研修室で10時過ぎから始まり、スケジュールや注意事項の説明の後、野生動物や野鳥に関して、動物写真家・中川雄三さんによるスライドやビデオを使ったレクチャー。
 日本という国はアマゾンやマダガスカルガラパゴスなどと比べてもひけを取らない生物多様性ホットスポットなのだそうだ。要するに国土が狭いわりに気候が多様なせいもあり、生物の種類が非常に多いというわけだ。
 ミサゴが捕まえた魚の写真を見て、ずっと水の中で暮らしてきた魚が生涯の最後に空高く飛行する気分とはどんなものだろう、などと意味もなく考えたりした。
 朝は晴れていたが、講義の途中から窓の外は牡丹雪が舞いだした。まぁ、積もらない春の淡雪だろう。


 昼食後、午後は野外観察。一時はかなり激しく舞った雪もさいわい止んでくれた。

 標高1,078メートルからの眺め。

 中川さんや都民の森の名物ガイドで野鳥の声マネ達人、浦野さんの案内で大滝遊歩道を散策。
 ウソの群れがいたが、写真は撮れず。ほかにヤマガラ、コガラ、シジュウカラ、ヒガラ、キクイタダキなどの姿を確認。
 ケヤキの大木にあるムササビの巣穴。もとはアオゲラが開けたものらしい。小さい穴はモモンガが入っているのかも。

 そのケヤキの下に散らばっていたムササビのフン。しばしば正露丸みたいな、と譬えられる。

 このケヤキのそばにあずま屋があったが、去年2月の豪雪で倒壊し、そのまま撤去されていた。
 事前の予想ではこの道も雪に埋もれているかも、と思っていたのだが、この通り。

 三頭大滝までやってきた。滝も一部凍っている。実際、とても寒い。



 ここでしばらく休憩後、帰りは「けやきの路』経由。
 カケスの巣の名残。

 たぶんキツネの足跡。

 テンのフン。餌食になった動物の毛がまじっている。

 やんでいた雪がまた降り出した。先ほどは牡丹雪だったが、今度は粒が細かい。

 シカが笹を食べた痕。

 ほかにリスの古巣や、リスやモモンガが巣材にするために杉の皮を剥いだ痕などを見る。

 それにしても雪がどんどん強くなってきて、たちまち地面が白くなりだす。


 今夜は星空観察の予定もあるのだが、絶望的な天候だ。それどころか、このまま積もったら、明日は道路閉鎖で、ここに閉じ込められる、なんてことにもなりかねない。一方で、少しの積雪なら動物の足跡などの痕跡がわかりやすくなる、ということもある。

 15時20分頃、森林館に戻り、少し休憩。山の中は凍える寒さだったので、暖かくて、ホッとする。


 16時からは天体観測のボランティア、ナミキさんの天体に関するレクチャー。気が遠くなるほど広くて遠い宇宙の話。来月4日の皆既月食についての情報も。
 講義の間になんと、あれほど激しく降っていた雪が止み、青空まで見えてきた。これなら星空も拝めそうだ。
 夕食は少し早めにレストランで。舞茸と山菜の天ぷらそばを食べる。

 17時20分頃の都民の森。


 ちなみに都民の森は16時に閉園し、一般のお客さんはもういない。奥多摩周遊道路も夜間は閉鎖なので、この一帯は夜は無人境となり、我々だけが山の中で過ごすことになる。

 18時頃から夜行性動物の観察。研修室の窓の外の斜面に餌を撒いて動物が出てくるのを待つ。
 18時10分頃、さっそくテンが出てきた。まだ冬毛で、黄色い体に白い顔。

 テンは3匹登場。夏毛に変わりつつある個体もいた。

 テン以外では20時45分にタヌキが2匹出てきた。ところが、そこへテンがやってきて、タヌキはすぐに逃げてしまい、それきり姿を見せなかった。なので、まともな写真は撮れず。辛うじて、タヌキだと分かる写真はこれぐらい。

 子どもたちはテンはしっかり見られたし、可愛い、と大喜びだったが、タヌキは見られなかったようだ。
 さて、一時は絶望的と思われた今夜の天体観察。夜には上空はすっかり晴れて、満天の星空となった。
 惑星で唯一見えた木星天体望遠鏡で縞模様や4つの衛星までバッチリ観察し、ほかに双眼鏡でプレアデス星団(すばる)を見たり、春の大三角形、オリオン座の星雲などを見る。人工衛星もひとつ見えたが、飛行機もよく通る。
 オリオン座とシリウスシリウスは約8年がかりで届いた光。いつ超新星爆発を起こしてもおかしくないベテルギウスは500年以上かけて届いた光。ベテルギウスが爆発すると地球から見ても太陽みたいに明るく輝き、地球にも何らかの影響を及ぼす可能性があるという。こういう話をいろいろ聞いていると、天体について勉強したくなる。そんな時、中川さんによると子ども向けの図鑑が最新の情報も盛り込まれていて、わかりやすくて最適だそうだ。

 北側尾根に昇ってきた北斗七星が一応写っている。最近は子どもたちに説明する時に「柄杓の形」とは言わず「フライパンの形」というのだね。



 素晴らしい星空だが、とにかく寒い。もう氷点下なのは間違いない。
 ということで、室内から動物を見たり、テラスで星を見たり、ほかの参加者やスタッフとおしゃべりしたり、と楽しい時間を過ごし、22時頃にはシュラフに潜り込む。