荒川サイクリング

 毎年、春になると荒川のサイクリングロードを走りたくなる。ということで、今年も出かけてきた。
 8時45分頃、自宅を出て環八〜笹目通りといういつものルートで19キロ、笹目橋で荒川左岸のサイクリングロードに入る。
 真っ先に聞こえてきたのはツバメの声。そして、キジ。ツバメはたくさん飛び回っているが、キジは声だけ。
 彩湖のほとりを走り、秋ヶ瀬公園の中を走り抜け、錦ヶ原サクラソウ園でちょっと休憩。このあたりの荒川河川敷はサクラソウの自生地で、花は今が見ごろ。明日からサクラソウまつりが開かれるそうだ。


 ベニシジミ

 ゴルフ場やグラウンドの中を走り、今回もまた指扇の山田うどんでかなり早めの昼食。この先、ずっと河川敷の道で食事のできるような店はほとんどなく、コンビニすらないのだ。

 国道16号線を過ぎて、道はどんどんのどかになっていく。

 自転車乗りにとってここは天国か、と思ってしまうほど気持ちのよい道。

 いつもの場所にいつものように牛がいた。


 11時半に上尾市榎本牧場に着く。ここには何度も来ているが、今回も立ち寄り、特製のアイスを食べる。毎回、ポイントカードを作りますか、と聞かれて断っていたのだが、ついにカードも手に入れてしまった。まぁ、年に1回ぐらいしか来ないのだけど。

(荒川もここまで来ると、すっかり狭まって、ずいぶん雰囲気が違う)

 榎本牧場の乳牛たちは24時間全自動で管理されている。


 休息エリアにいる牛たち。

 搾乳ロボット。


 べつの牛舎には生まれたばかりの仔牛もいた。ホルスタインのオス。当然、乳牛にはなれないので肉になる。その場合、高級な「和牛」ではなく、比較的安価な「国産牛」として市場に出回る。野生動物の場合でも肉食獣の餌食になることはあるが、うまく生き延びる可能性もある。でも、家畜の場合は生まれた時から運命は決まっているのだ。もちろん乳牛になる雌牛もたくさんの乳を搾りとられ、乳の出が悪くなれば肉になったり廃牛になったりするのだ。まぁ、僕も牛乳を飲むし、牛肉も食べるので、何も言えない。
 あちこちで八重桜が満開。

 榎本牧場をあとに、さらに上流へ向かって走る。まだ正午前だ。
 草原を緑の波が走る。どこまでも走って行きたくなるような気持ちよさだが、風向きから帰りは向かい風であることが分かる。


 桶川市に入る。見えるお寺は泉福寺。


 いつもヤギがいる場所。今年は4頭に増えていたが、去年までのヤギの姿が見当たらなかった。




 ヤギさん、バイバイ。帰りもたぶんまた通るけど。


 すっかり細くなった荒川。

 鴻巣市の常勝寺。名前のせいか、旧日本軍関係者の崇敬を集めたらしい。

 お寺のネコ。

 ヒバリが空高く舞いあがってさえずる道。地上にもあちこちにいた。

 キジの声はこれまで何度も聞いたけれど、ようやく姿が見えた。気がついた時は通り過ぎてしまい、慌てて自転車を停め、振り向きながら撮影。雌も一緒に行動していた。

 ほかにコジュケイホオジロ、セッカ、ガビチョウ、ウグイス、エナガシジュウカラツグミキジバト、カラス、スズメ、コゲラなど。ツバメもたくさん飛んでいる。
 さて、どこまで走ろうか。昨年は鴻巣市の海から70キロ地点で折り返したのだが、今年はもう少し走ってみよう。
 「決潰の跡」という石碑があった。

 昭和22年9月のカスリーン台風により荒川がこの地点で堤防を越え、決壊したそうだ。洪水は埼玉県北部の村々を襲い、同時に決壊した利根川の濁流と合流して南下、東京にも押し寄せ、甚大な被害を出したのだった。

 この説明文を読んで、僕はいま熊谷市まで来ていることを知った。そろそろ引き返さないといけないな、と思いつつもさらに進むと、すぐ右手にJR高崎線の線路が見えてきた。市街地も近い。
 ということで、結局、荒川を離れて熊谷駅まで行ってしまった。ここまで自宅から74キロ。

 今も石灰石輸送列車が運転されている秩父鉄道電気機関車

 ここで引き返す。
 いまや熊谷市にしか生息しない絶滅危惧種の淡水魚ムサシトミヨの生息地というのがあった。


 冷たい湧き水が流れる、水草の繁茂した細い川に生息しているそうだ。いくら生息地でもそんな稀少な魚がウジャウジャいるはずもなく、当然ながら見つけられず。ムサシトミヨはたしか井の頭自然文化園の水生物館で飼育されているはずだ。
 ちなみにこの清流は元荒川の源流部。元荒川は荒川がかつて利根川に合流していた時代の流路で、江戸初期に荒川を入間川につなげた時に本流から切り離された。今の水源は人工的に汲み上げた地下水だそうだ。

 さて、再び荒川の土手に出て、今度は下流へ向かって来た道を走るわけだが、覚悟していたとはいえ、想像以上の向かい風だった。こんなに風が強かったのか。全然進まない。家までまだ70キロ以上走るのかと思うと気が重くなる。往路は自転車乗りのパラダイスに思えた道が今や逆風地獄と化していたのだった。
 もう頑張るのはやめて、ちんたらちんたら行くことにする。往路は時速25〜30キロぐらいで走っていたが、帰りは20キロを下回ることもしばしば。時には15キロ以下に落ちたりもする。風の音が耳の中でブォーッと鳴り続けて、ヒバリの声もあまり聞こえない。
 高崎線の貨物列車。

 土手の反対側は昔からほとんど変わっていないと思われる眺め。

 都会ではほとんど見なくなった「屋根より高い鯉のぼり」。

 武蔵水路利根川の水を取水して荒川に流すのが武蔵水路。この水は荒川を下って朝霞の堰で取水され、東京都民の水道水となる。

 鴻巣市の原馬室湿地。鴻巣市では市名にちなんでコウノトリの野生復帰を目指しており、農薬を使わない米作りのモデル水田があったり、このようなコウノトリの餌場となる湿地があったりする。このあたりならコウノトリも暮らせそうな気がする。


 またキジがいた。


 いい雰囲気の野道。でも、対岸には飛行場。


 それにしても、午前中はサイクリングを楽しむ人たちがたくさんいたはずなのに、出会う自転車がめっきり少なくなった。やっぱり強風のせいだろうか。風はますます強くなったようで、本当に進まない。

 午前中は寝そべっていた牛が起きていた。

 猛烈な逆風の中、熊谷から50キロ以上、荒川沿いに走ってきて、すっかり消耗。いつしか日没が近い。
 笹目橋で荒川に別れを告げ、笹目通りに入ったのは18時近く。自宅に帰りついたのは19時半過ぎだった。疲れた〜!
 本日の走行距離は148.5キロ。世田谷から熊谷まで、というのは自転車で行く距離ではない、ということが分かった。

(おまけ)今朝、今年初めてハイビスカスが開花。まだ室内の窓辺に置いてある。