中山康樹『超ジャズ入門』(集英社新書)

超ジャズ入門 (集英社新書)

超ジャズ入門 (集英社新書)

 家を出る時に電車の中などで読む本がなかったので、自分の本棚から適当に選んだ本。なので、読むのは少なくとも2度目である。2001年刊行なので、久しぶりに読んだ。
 ジャズのレコードやCDは何枚も持っているし、今さら入門する必要もないのだが、改めて読んでも面白い。
 著者の中山康樹氏は今はなき老舗のジャズ専門誌『スイング・ジャーナル』の編集長もつとめた音楽評論家で、とにかく文章が面白い。上手い。こういう文章が書けたらいいなぁ、と思う。
 なので、ジャズに入門するために読むというよりはこの人の文章の“芸”を味わうために読んでいるようなものなのだが、本書に書かれている「CDのコレクションは100枚」というのは、なるほどなぁ、と今になって思う。
 ジャズのCDを買い始めて、コレクションが100枚になったところで、いらないCDは手放す。あまり好きではないもの、よくわからないもの、あまり聴かないもの、聴き飽きてしまったもの、など。
 そのように所有するCDを一旦減らして、また100枚に達したところで同じことを繰り返す。
 なぜ100枚かというと、それ以上持っていても、限られた人生の中ですべてを聴く時間がないからだ。
 コレクションの中に何度も何度も聴くCDがある一方で、もう一生聴かないCDもあるかもしれない、という事実には僕ももうだいぶ前から気がついてはいたので、コレクションは100枚で十分という中山氏の主張にはとても納得できるのだが、僕の場合、所有するレコード、CDは軽く1000枚を超えてしまっている。それも買ってはみたもののあまり気に入らなかったもの、もう聴かないであろうものはどんどん処分して、それでもこの枚数なのだ。だから、いまウチにあるのはすべてお気に入りばかりと言えるのだが、じゃあ、この先、ぜんぶ聴くか、というとたぶん聴かない作品も少なからず存在する。
 今から100枚に減らせるか、というとそれは無理、なのだが、でも、極力減らしていきたいとは常に思っているのだ。現実的な目標は1000枚以下か。うーん。

 ところで、僕が初めて買った純然たるジャズのレコードは記憶が正しければ、イギリスのアルトサックス奏者エルトン・ディーンが率いるNINESENSEの“HAPPY DAZE”(1977)だったと思う。
 ブリティッシュ・ジャズ界の精鋭たちが集まった9人編成のグループで、ピアニストのキース・ティペットなどキングクリムゾンに参加していたミュージシャンも名を連ねている。音楽的にはフリージャズの要素を交えながらも、まさに正統派といえる作品で、今でも好きなアルバムだ。でも、これが初めて買ったジャズのレコードという人は世界的にもかなり珍しいのだろう。ふつうはマイルス・デイヴィスとかビル・エヴァンスとか、その辺からだろうからね。

 初めて聴いた時、オーソドックスなジャズだな、と感じたのだが、普通の人が聴いたらどうなんだろう。Seven for Leeというタイトルの通り7拍子だしね。

 このアルバム、アナログとCD、両方持っている。この辺から改めていかねばならないな。

 リーダーのエルトン・ディーンが1991年に来日した時にもらったサイン。

 ちなみに、あのエルトン・ジョンの“エルトン”は若き日に一緒にバンドを組んでいたエルトン・ディーンから名前をとったというのはわりと有名な話。“ジョン”も同じバンドのメンバーだったジョン・ボルドリーから。
 エルトン・ディーンは2006年に60歳で惜しくも亡くなってしまったし、中山康樹氏も残念ながら今年1月に62歳の若さで亡くなってしまった。