写真展「はな子のいる風景」


 井の頭自然文化園で昨年5月に69歳で世を去ったアジアゾウの「はな子」。井の頭で過ごした60年以上の歳月の間に動物園を訪れた無数の人々のアルバムの中に「はな子」の写った写真があるはず。武蔵野市立吉祥寺美術館が井の頭自然文化園などの協力のもと、世の中にバラバラに存在する膨大な「はな子のいる風景」を収集し、一冊の記録集にまとめる、そんな試みが昨年の初夏から始まり、12月末までの募集期間に約550枚の写真が集まった。その中から169枚の写真を選んで、このたび記録集『はな子のいる風景〜イメージを(ひっ)くりかえす』が完成し、関連イベントとして、応募写真を集めた展覧会が井の頭自然文化園内の彫刻館で始まった。

 去年、この企画を知り、自分のアルバムをめくってみたら、「はな子」の写った写真が2枚あった。僕は子どもの頃からとにかく動物園が好きで、井の頭、上野、多摩をローテーションで何度も何度も親に連れて行ってもらったので、幼い頃のアルバムにも動物園で撮った写真がやたらに多い。そして、記念すべき動物園写真の第1号が井の頭の「はな子」の前で撮ったものなのだった。まだ1歳にもなっていないので、記憶はないけれど、それが初めての動物園であり、初めて見たゾウだった。もう1枚はその約1年後の写真。
 とりあえず、2枚とも送ってみたら、そのうち1枚が記録集に収録されることになった。近いうちに1冊送られてくるらしい。9月上旬から吉祥寺美術館ミュージアムショップにて販売開始予定とのこと。
 というわけで、自分が写った写真がどんなふうに展示されているのか、ちょっと観に行ってきた。一番古い1950年の写真から年代別に展示された写真。60年代まではほとんどモノクロで、70年代からほぼカラーだ。60年代のパートにすぐ自分の写真は見つかった。ボツになったもう一枚も展示されていた。家族の写真、子どもの写真、遠足の写真。友達と一緒に撮った写真。様々な写真が並んでいて、すべての画面に「はな子」がいる。実際にはまだまだたくさんの「はな子のいる風景」が埋もれているはずで、会場には「うちの写真も出せばよかったなぁ」なんて言っている人もいた。
 館内には今年5月に吉祥寺駅前に設置された「はな子」の銅像の原型も展示されていた。

 長崎の平和祈念像で知られる北村西望氏の作品を集めた彫刻館の屋外展示。妙に気になる作品。


 「はな子」が長い年月を過ごし、最後に倒れて息を引き取ったアジアゾウ舎。もう「はな子」はいないということは分かっていても、いまでも訪れる人は多い。


 等身大の写真はそのまま。

 ここでも写真の一部を20分ほどのスライドショーにしてループ上映。

 亡くなる4日前のはな子。最後の数か月は引きこもり状態で、運動場に出なくなっていた。