千代田線の乃木坂駅から直結した美術館に着くと、チケット売り場に行列。ある程度の混雑は予想していたが、予想以上かもしれない。
実際、会場に入ると、ほとんど満員電車のような混雑。絶えず人と接触しながら絵を鑑賞するような状況で、これなら自宅で画集を眺めていたほうがいいな、と思ってしまった。
作品の前に立つと、あっというまに周囲を人に囲まれて、次に進むには、人をかき分けて行かねば、どこへも行けない。自分と同じぐらいの身長の男性を見て、他人から見たら自分もこの人と同じぐらい邪魔なんだろうな、などと思ったりする。
作品はもちろん素晴らしいのだが、ざっと見ただけで、出てきてしまった。
観覧料1,600円払って、500~600円分ぐらいの満足度。1,000円損した気分。
初めて東山魁夷の展覧会に出かけたのは僕が高校2年の時で、それ以来、何度か足を運んでいるが、今回みたいな混雑は初めてのような気がする。
長野の信濃美術館東山魁夷館が一番良かったかな。あそこへ出かけたのはそんなに昔のことではないような気がしていたが、もう25年も前のことだった。
ところで、今回、改めて東山作品を目にして、気がついたこと。
かつて北海道の釧路から根室にかけて自転車で旅行した時、針葉樹林の彼方に眺めた厚岸湖や温根沼の風景について「まるでスカンジナビア半島の湖みたいだな」と実際に行ったこともない土地の風景を心に浮かべつつ眺めたのだが、そんなイメージの源泉は東山魁夷がフィンランドの湖水風景を描いた「白夜光」という作品だった。
ついでにいえば、僕が風景の写真を撮る時、東山魁夷の描く風景のイメージを参照しながら、似た構図を切り取る、ということを半分ぐらい自覚的にけっこうやっている気がする。まぁ、大した作品が生まれるわけではないけれど。
(おまけ)今宵の月