今日の東京は朝から弱い雨が降ったり止んだりだったが、日中は晴れ間も出る。そして、夕方にはまた弱い雨。ということで、本日、関東甲信地方が梅雨入りしたと見られると気象庁が発表。
さて、梅雨入り前の6月12日(土)に奥多摩へ行ってきた話の続き。
標高320メートルの白丸駅で降りて、標高343メートルの奥多摩駅前までやってきたところから。時刻は9時45分。
まだ朝食もとっていないので、とりあえず駅のそばの商店でパンを買い、歩き出す。ここから奥多摩湖まで10キロほどの道のりである。
氷川集落の鎮守・奥氷川神社に参拝。
氷川大橋から日原川の峡谷を見下ろす。
青梅街道を奥多摩湖方面に行くと、まもなく「奥多摩むかし道」の入口。青梅街道の旧道だ。
いきなり急坂。羽黒坂といい、左手の山の上にある羽黒三田神社に由来。道行く人や馬にとっては大きな難所だった。折しも、マウンテンバイクのカップルがやってきて、自転車に乗ったまま坂に挑む。男の方はすぐに自転車を降りて押し始める。女子の方は立ち漕ぎで頑張っていたが、さすがに無理だった。
僕は神社の下にあるゲートボール場のベンチでパンとコーヒーの朝食。それから神社にお参りしようとしたのだが、あまりに急で長い石段に途中で断念。
途中の神門で神像を拝んで戻ってきた。正月など、お酒を飲んで初詣に行ったりしたら転落する人もいるのではないか、などと考えた。
さて、急な羽黒坂を上り、まもなく廃線跡があるというのはもう分っているが、こういう風景は何度見てもいいものだ。
小河内ダムの建設資材を運ぶために敷設された線路。トンネルと橋梁が連続する路線で、建設費も莫大だったと思われ、ダムの完成とともに打ち棄てられてしまったのは惜しい。ただ、列車の転落事故もあったというから、お客さんを乗せて列車を走らせるほどの安全対策は最初からなされていなかったのかもしれない。
廃線跡は谷を橋梁で越え、そのままトンネルに消えるが、古道は沢の上流を短い橋で渡り、等高線をなぞるように続く。
まもなく車も通れる舗装路に合流。新旧の石仏が並んでいる。
槐木(さいかちぎ)の集落に入る。ここまで「むかし道」入口から1.2キロ。
斜面上の住宅には自家用モノレールが設置されている。
サイカチの老樹がある槐木は古来、街道を行き交う人々の休息の場になっていたという。いまは公衆トイレがある。
念仏供養塔と馬頭観音などがある。
槐木をあとに杉林の中の道を行く。多摩川の対岸からだろうか、オオルリの声が聞こえてくる。姿を探すのは難しそうなので、耳だけで楽しみながら歩く。ウグイスも盛んにさえずっている。
去年の秋に歩いた時は紅葉が色づき始めだったこともあり、たくさんの人が歩いていたが、今日はそれよりもだいぶ少ない。
先ほどは眼下に見えた廃線路が今度は急斜面の上に見える。
奥多摩駅と奥多摩湖を結ぶ観光列車を走らせたら、と夢想してみるが、トンネルが多くて、トンネルを出れば森の中で景色はそんなに良くなかったかもしれない。少なくとも、ずっと多摩川の渓谷を眺めながら走るというわけではないだろう。
奥多摩湖から奥多摩駅までは青梅街道を何度か自転車で走ったことがあり、2度ほど猿に遭遇しているので、今回も期待しているのだが、今のところ気配はない。
まもなく桧村という集落にさしかかる。
急斜面上に広がる集落を抜け、多摩川の支流の谷の奥へと入り込む。昔の道は谷を長い橋で越えるなんてことはできなかったので、地形に忠実に谷の上流へ遡って、谷が狭まったところに短い橋をかけて沢を渡り、また谷の出口まで戻ってくるというパターンを繰り返していた。そのため、鉄橋とトンネルでまっすぐに進む現代の道路よりも距離が長い。便利なのは現代の道路だが、面白いのは断然昔の道である。
彼方に鉄橋が見える場所が境の集落だが、間に多摩川支流の谷があるので、迂回しないといけないのだ。
沢の上流を短い小中沢橋で渡ると、そこに公衆トイレがあるが、素通り。
まもなく、杖を突いたお年寄り2名とすれ違う。ずっと人に会わなかったので、マスクは胸のポケットに入れていたから、無言で会釈だけしたら、「こんにちは」と挨拶されたので、こちらも慌てて言葉を返す。地元の人のようだったが、散歩だろうか。
しばらく行くと、境の集落。ここには清水が湧いている。
どこの家でもいろいろな花を育てていて、ウチでも育てているカンパニュラが咲いていたりする。
こんな山奥でも東京都なので、7月の都議会議員選挙を前にして、あちこちで緑のおばさん(都知事)の顔写真を見かける。
ここでちょっと「むかし道」からはずれて坂を下ると、「境の清泉」がある。見た目はイマイチだが、蛇口に取り付けられたホースの先から絶えず水が出ている。もちろん、そのまま飲める。
氷川で買ったペットボトルのコーヒーを飲み干して、かわりに水を詰める。
ここでは沢水を流し込んで、ワサビ田がつくられている。
こういう場所を訪れると、奥多摩はいいところだな、と思う。
ずっと曇りがちだったが、青空も広がってきた。
電線でカワラヒワがさえずっている。
ここまで奥多摩駅から3.7キロ、奥多摩湖まであと6.4キロ。歩くのが楽しくて、この道がずっと続いてほしいと思うほどである。
つづく。