初夏の奥多摩を歩く(その4)

 6月12日(土)に奥多摩へ行った時の話の続き。多摩川の惣岳渓谷に架かる吊り橋「しだくら橋」を対岸へ渡って、また戻ってきたところから。時刻は12時06分。

 青梅街道の前身となった古道「奥多摩むかし道」をさらに行くと、すぐに右手の石垣の上に「縁結びの地蔵尊」というのがある。

 人に知られずにこっそりと二股の大根を供えて一心に祈れば縁結びの願いが叶うということだが、これも地蔵尊ではなくて馬頭観音のような気がする。

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 ところで、今回、奥多摩へやってきた一番の目的はオオルリキビタキのような夏鳥の声が聞きたい、できれば姿も見たい、ということだった。ここまで歩いてきて、遠くでオオルリがさえずっていたり、山の上の方からキビタキの声が聞こえたり、ミソサザイの歌声が響いていたり、ということはあった。でも、姿を拝めそうな気配はあまりなかった。オオルリは木のてっぺんや枝先でさえずるので、渓谷沿いにいれば、あの青い姿が見られるかもしれないな、とそんなことを考えながら歩いていたら、いきなり近くでオオルリらしき声がした。

 あ、いた。すぐ近くの枝に止まっている。でも、青い鳥ではない。茶褐色のメスだ。でも、鳴いている。そして、そばにもう一羽いて、お互いに鳴き交わしているようなのだ。

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 オオルリのメス。いわゆるオオルリのさえずりとはちょっと節回しが違う気がするが、それでも高らかにさえずっている。

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 そして、そばにいた! オオルリのオス。

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 虫を捕まえたルリ子ちゃん。

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 とにかく、2羽が鳴き交わしているのをずっと見ていて、気がついたら25分以上も経っていた。きりがないので、歩き出す。

 しばらく行くと、人家が数軒現れるが、ほとんど廃墟化している。

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 そんな集落跡に湧き水を使った「馬の水飲み場」がある。かつて、ここには立て場があり、街道を行き交う人馬が休息をとったのだ。もちろん、水飲み場は今は使われていないが、崖から滴る水が流れ込んでいるようだった。

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 次は馬頭観音ではなく珍しい牛頭観音。荷物の運搬に馬だけでなく、牛も少数ながら使われていたので、牛頭観音も造立されたということのようだ。

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 むし歯地蔵尊

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 歯が痛い時に炒った大豆をお地蔵さまに供えて一心に祈れば、痛みが治まるという民間信仰があったそうだが、これも地蔵尊ではなさそう。やはり馬頭観音ではないか。

 とにかく、次々といろいろあるものだ。

 まもなく、少し開けた場所に出て、そこにテーブルとベンチがあるので、自家製梅干しのおにぎりで昼食にする。

 そばに川合玉堂の歌碑。

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 山の上のはなれ小むらの名を聞かむやがてわが世をここにへぬべく

 この歌は玉堂が29歳の時に小河内に写生に出かけた際に詠んだものだという。

「人里離れた山の上で息をひそめるように生活しているあの集落は、何というところだろう。私もいつか、きっと、あのような場所で余生を送りたいものだ」といった意味らしい。この時、まさか戦時疎開という形で奥多摩に住むことになるとは思わなかっただろうが、疎開先に奥多摩を選んだのは偶然ではないのだろう。

 歌碑の前の畑。お年寄りが農作業をしている。

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 15分ほど休んで、また歩き出すと、すぐにまた吊り橋がある、今度は道所橋という。しだくら橋より短くて、いくらかしっかりしているように見えるが、やはり一度に渡れるのは2名までである、幸い、周囲には誰もいない。

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 対岸に渡って、また戻ってくる時に動画で撮影してみた。

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 まもなく、コース中最後の公衆トイレがある休憩所で何人かが休んでいた。

 その先で江戸方面と甲府方面を結ぶ青梅街道旧道としての「奥多摩むかし道」は途切れてしまう。この先に小河内ダムがあり、街道はダム湖の底に沈んでしまったからだ。そして、行く手を遮る柵の向こうは東京都水道局の用地となっている。

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 ここからは街道から分かれて山上の集落へ通じる道を行くことになるが、それはまた明日に続く。たぶん、次で奥多摩湖までたどり着く予定。ここで時刻は13時32分。