新宿区荒木町には都会の奇跡のような池が存在する。人と車が行き交う新宿通りの北側に深い窪地が存在し、その谷底に小さな池があるのだ。その名を「策(むち)の池」という。
江戸時代、この界隈は美濃国高須藩主・松平摂津の守の上屋敷になっていて、邸内の湧水が4メートルほどの滝となり、その下には大きな池があった。この水で徳川家康が鷹狩の帰途に策を洗ったという伝承があり、池は「策の池」と呼ばれるようになったという。ただ、この伝承地は新宿駅西口の駅前付近にもある。
とにかく、この地に池と滝があったわけだが、明治時代になって池の周囲は庶民に開放され、景勝地として多くの人が集まり、花街として発展する。そして、摂津の守を縮めた「津の守」という呼び名が今も付近の坂や通りの名称などに残っている。
池畔には弁財天が祀られている。
滝は失われ、池も大幅に縮小したが、今も澄んだ水を湛え、鯉などの魚が泳いでいる。前に訪れた時はスッポンがいたという記憶があるが、見当たらなかった。冬眠中か。
地形は険しく、道も階段になっているところが多い。
近くにある金丸稲荷。江戸時代に大名屋敷の敷地内に勧請されたものだという。
花街だった頃の名残もみられる。
荒木町。いろいろな意味でディープな町である。
(きょうの1曲)Naomi & Goro / Winter Wonderland