布田道を歩く(2)

 多摩丘陵に残る古道「布田道」を歩いた話の続き。小田急多摩線の黒川駅から歩き始めて、町田市真光寺町(旧多摩郡真光寺村)に入り、町田いずみ浄苑からようやく古道である。

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 しばらくは左下に霊園を見ながら歩く。

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 すぐに地蔵尊があった。天保十年建立だから、1849年である。

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 多摩丘陵の尾根筋を行くいかにも古道らしい道。落ち葉を踏んで歩くのが心地よいが、場所によっては霜柱が立っていたり、それが解けてぬかるんでいたりもする。

 クヌギやコナラなどの落葉樹ばかりでなくシイなどの常緑樹も多く、この季節のわりには緑も多く感じる。竹林も多い。

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 やがて、前方に送電鉄塔が立ち並ぶ場所に出た。電源開発株式会社の西東京電力所というらしい。

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 ここだけ古道が消えていて、コンクリート塀に沿って迂回。芝の生えた道を行く。右手には黒川の谷戸の最奥部が広がり、左右が対照的な風景。その谷戸を越えて何本もの鉄塔がそびえ、送電線が丘陵地帯の彼方へ伸びていく。

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 そばで盛りを過ぎかけたロウバイが芳香を放っていた。

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 電力所を過ぎて、まもなく右手に謎の観音様。

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 このあたり右も左もフェンスが続き、風趣はないが、南側の眺望はよく、横浜方面が見渡せる。その彼方には房総半島の山並みもうっすらと見える。

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 まもなく分かれ道。右の道は入れないように思えるが、ここは右に行くのが正解。柵の脇をすり抜けていく。

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(追記)この時は分からなかったが、この2本の道の間に最近まで三社大権現が祀られていたらしく、また、右手には富士塚のようなものもあり、古墳であるとも言われているそうだ。昔から聖地であったようで、同時に多くの古道が交錯する地点でもあり、合戦場となったこともあるそうだ。

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 ここから右手には野球グラウンドがあり、「小野路太陽の広場・スポーツ広場」というらしい。これまで川崎市麻生区黒川と町田市真光寺町の境界をたどってきたが、ここからは右手も町田市で、しかも、すでに小野路である。黒川は多摩川の支流・三沢川の流域だったが、ここからは鶴見川水系となる。

 左に雑木林の広場を見ながら、グラウンド沿いに進むと、いきなり前方の視界が開けて、雪化粧した丹沢の山々が連なり、その上に富士山が頭をのぞかせていた。

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 富士山から右の方に視線を向けると、山々の彼方に南アルプスの白い峰もわずかに望まれる。

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 絶景ポイントと言えるが、道は廃品回収の集積所みたいなところを通り、下り坂の先で一般道にぶつかる。ここを右に行くと、すぐに五差路があるが、下の写真でトラックの右側の下りながら左へカーブしていく道が布田道である。また、ここを南北に走る道も古道であるらしい。

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 下り坂を左へカーブすると、またもや絶景。そして、ここが東京であることを忘れそうになる。

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 何もないといえば何もないのだけれど、こんな道はどこまでもずっと歩いていきたくなる。

 しかし、道はまもなく4車線の道路に出る。現代の鎌倉街道だ。

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 出てきたところは昔の小野路村の字別所。今も交差点名やバス停に別所の名が残っている。

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 別所という地名は各地にあるが、本寺とは別に造られた草庵、その集落化した場所という意味があるようだ。地図だと近くに別所薬師堂というのがあるらしいので、行ってみた。別所交差点から鎌倉街道を北へ行き、すぐ右に分かれる道に入ると、右側に集会所のような建物があり、敷地内に石仏が並んでいる。

 ここにも地神塔がある。その奥に地蔵尊2体。笠付きの石塔は3面に2体ずつ地蔵を彫った六地蔵であるようだ。

 背後の集会所風の建物が実は薬師堂であるらしかったが、窓からのぞき込んでも、薬師様は見えなかった。

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 その奥にも墓石や石仏が並んでいる。これが別所という地名と関係があるのかどうかは不明。この別所の奥に東光寺という寺があるので、それに対して、この薬師堂が「別所」ということになるのだろうか。東光寺にも薬師如来像があり、あわせて「両薬師」と呼ばれていたともいう。

 さて、ここで興味深いのは地神塔の左隣にある石塔。風化しているが、庚申塔である。そして、「左 府中、右 江戸」の文字が読み取れる。右の江戸とは布田道を指しているのだろう。

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 さて、別所からは交差点の角にあるステーキ屋の裏手の道が布田道である。

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 谷戸田に沿って続く素敵な道である。全国的にみれば、どこにでもあるような平凡な道なのかもしれないが、東京にこんな風景が残っているのは本当に驚く。東京でも昔はどこにでもあった景色なのだが。

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 野菜の無人販売があった。

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 ほうれん草、百円。

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 ここで道は二手に分かれる。布田道は下の道で、ここから右へ上っていく道もかなり魅力的なので、ちょっとだけ歩いてみた。

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 きっと新緑の頃もいいだろうなぁ、と思う。その頃にでもまた来よう。なにしろ、電車賃が片道300円前後で来られる場所なのだ。

 ハイキングのおばさん二人連れとすれ違う。こういう土地だと、見知らぬ人とでも「こんにちは」と挨拶するのもごく自然なことに思える。

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 ムクロジの巨樹。

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 さて、この先、布田道のハイライトのような区間を経て小野路に至るのだが、続きはまた明日。

 

(おまけ)庭のクロッカスが咲いた。まだ1輪だけ。

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