房総半島一周の旅(4)

 房総半島一周の旅の話のつづき。

 半島をほぼ一周して、君津から快速電車に乗り、このまま帰ってもよかったのだが、最後にもう一カ所、寄り道をするため、市原市五井駅で下車。6月にも乗りに来た小湊鉄道の起点である。もう何度も乗った鉄道だが、今日は夕方から夜にかけてのローカル駅の雰囲気を味わいたいと思って、ちょっとだけ立ち寄る。

 本当なら、鬱蒼とした緑に押しつぶされそうな上総大久保あたりで、夜更けのムードを味わうというのが魅力的なのだが、そこまで行ってしまうと、帰るのが大変なので、五井から二つ目の海士有木(あまありき)あたりを訪ねてみよう。

 ただ、まだ16時を過ぎたばかりで、日没には間があるので、一度改札を出て、小湊鉄道の駅構内に隣接して新しくできた「こみなと待合室」というカフェ併設の休憩スペースで一休み。

 海士有木まで250円の片道切符を買って、17時18分発の上総中野行きに乗車。キハ200とキハ40の混結である。

 海士有木17時26分着。

 駅の周辺を散策していたら、コクワガタを見つけた。アブラゼミやミンミンゼミが賑やか。上空を旅客機が頻繁に通る。

 踏切の音が聞こえたと思ったら、トロッコ列車がやってきた。

 海士有木の駅舎は大正14年の開業時からのもので、国の登録有形文化財

 出札口や荷物の受付カウンターも昔のまま。ただし、もう駅員はいない。券売機がラーメン屋の食券販売機みたい。

 和田浦の食堂で台風が来るらしいという話を聞いたが、本当のようだ。

 実際、台風8号が関東を通過した13日の夕刻から小湊鉄道は運転見合わせとなったらしい。

 日没間近。ヒグラシの声が聞こえ、草むらではエンマコオロギが鳴きだす。この雰囲気を味わいたかったのだ。

 駅に灯がともる。改めてよく見ると、天井板が割れたり、ズレたりしていて、老朽化が著しい。建てられて、もうすぐ100年になるのだ。

 18時21分発の上総牛久行き。前回は見なかったキハ200とキハ40の混結編成が今日は多い。エンジン音の違いがよく分かる。


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 このあたりはまだ街が近いが、奥地へ行くと人家もまばらで、夜は恐ろしいぐらいの闇が支配しているのではないか。そんな駅にも降りてみたい。

 18時48分の五井行きがもうすぐ来る。この列車で帰ろう。

 キハ40の単行で、車内はけっこう混んでいた。

 18時56分に五井に着き、内房線総武線を乗り継いで帰る。江見から和田浦の海岸を歩いたり、クジラを食べたりしたのが、ずいぶん前のことのように感じられた。