茨城県のローカル線旅(その2)

 茨城県ひたちなか海浜鉄道に乗った話の続き。

 終点の阿字ヶ浦駅で下車して、まずは海を見に行く。駅から細い坂道を下っていくと、まもなく目の前に太平洋が広がった。阿字ヶ浦は茨城県の代表的な海水浴場だそうだが、さすがにもう泳ぐ人の姿はない。雲が多い天気で、海には青い輝きもない。南側には漁港、北側には那珂湊外港の港湾施設があり、海の前面は堤防で仕切られ、広々とした海浜という感じではない。前回訪れたのは12月だったが、印象はさほど変わらない。

 しばらく海を眺めて、また駅に戻る。次の列車にはまだ時間があるので、駅周辺を歩いてみたら堀出神社という神社があった。水戸光圀とも関わりのある神社らしい。

 江戸時代、磯崎大明神をはさんで、阿字ヶ浦の前浜村と隣の平磯村が境界をめぐって争い、水戸藩の岡見吉為らが現地を検分した際に備前焼の垣で囲われた窪地が見つかった。掘ってみると、刀や槍、具足などの武具や天目茶碗などが発掘され、これらの品々は水戸城中へ送られ、詮議の結果、「磯前明神の本体であろう」との結論に達した。そこで前浜村の鎮守として創建されたのが掘出神社だという。祭神は応神天皇誉田別尊。ご神体の鏡は藩主・水戸光圀公が奉納したもので、神社名も光圀公の命名だそうだ。

 この歴史ある古社の境内には令和元年創建の「ほしいも神社」という歴史の浅い神社もある。

 黄金色の鳥居、干し芋形の絵馬、干し芋の自販機などがあり、ご利益は「ほしいものはすべて手に入る」だそうだ。茨城県出身のカミナリや磯山さやかなどの色紙が飾ってあった。気象予報士の依田司さんも番組の中継で何度も来ているらしかった。自販機で干し芋を購入。

デヴィ夫人もびっくり?の干し芋自販機。夫人のルーツもこの地域らしい)

 跨って記念撮影ができる「ほしいもバイク」。

 さて、列車を一本逃してしまい、次の列車までまだ時間があるので、阿字ヶ浦駅前の地図でルートを確認して、隣の磯崎駅まで歩いてみることにした。駅間距離は1キロなので、徒歩でも大したことはなかった。

 途中、サツマイモ畑の脇を走る阿字ヶ浦行きとすれ違う。この列車の折り返しに乗る。

 磯崎11時20分発。先ほどと同じ「ほしいも列車」だった。

(各駅の駅名標の文字がその土地にちなんだデザインになっていてユニーク)

 列車はサツマイモ畑の中を時折、左に海を見ながら走る。途中、運転士が沿線の子どもに手を振っていた。

 11時30分に那珂湊着。再びここで下車。

 駅から800メートルという那珂湊漁港まで一本道を歩き、「那珂湊おさかな市場」で昼食。市場に入る観光の車の渋滞ができていて、場内は大変な賑わい。店先で生ガキなど新鮮な魚介が売られており、その場で食べられるので、行列ができている。

 那珂湊茨城県有数の漁業基地で、近海のヒラメのほか、サンマやカツオの水揚げが多いそうだ。

(海鮮丼は食べにくい)

 僕も食堂で海鮮丼を味わい、地元製の鰹節を買う。うちにすっかり出番のなくなった昔の鰹節削り器があるので、久しぶりに自分で鰹節を削るという作業がやりたくなったのである。東京で買うよりだいぶ安かった。

 那珂川河口にある漁港を見て、駅に戻ると、ちょうど列車が出るところで、12時54分発の勝田行きに乗車。