2019年に41年ぶりの歌手活動を再開した伊藤蘭さんのコンサートツアーが今年も行われた。今回は全国のライブハウスを回るツアー。東京の会場はお台場のZepp DiverCity である。この会場は久しぶりだ。
麻布十番で用事を済ませた後、そこから竹芝まで歩き、「ゆりかもめ」でレインボーブリッジを渡って、お台場にやってきた。
お台場というと若者やファミリー層が多いイメージで、オジサンにとってはいささか居心地の悪さも感じるが、今日は僕よりも年齢が上であろう方々がたくさんいる。みなさん、蘭さん目当てであろうことはすぐに分かる。
DiverCity前の巨大ガンダムが立つ広場の大階段で見知らぬアイドルグループがライブをやっている。大人数が歌ったり踊ったりしているのはちょっと苦手。個人的にはあの手のグループはせいぜい5,6人が限界である。もちろん、近づいたりはしない。
すでに開場時刻の16時半は過ぎていて、入場の列ができていた。そこだけ年齢層が高い。当然、チケットはソールドアウトである。
(会場で配布された記念チケット)
ライブハウスだとオールスタンディングということも珍しくないが、客層を考慮してか、座席が用意され、全席指定制だ。僕の席は1階のステージに向かって中央よりやや右。悪くはない。
どこか外国の街を模したセット。中央のドアの上に「Ran」の文字、そして右上に「Candies」。今年のツアーは「Touch This Moment & Surely Candies!」とのサブタイトルがついている。
ソロになってのファーストコンサートからキャンディーズの楽曲もやっていたが、当時はソロシンガーとしての伊藤蘭のほうがメインだった気がするが、だんだんキャンディーズの存在が大きくなってきた。蘭さんとしても、最初は私ひとりでキャンディーズをやっていいのだろうか、という思いもいくらかはあったのかもしれないが、最初のコンサートでの盛り上がりから時代を越えたキャンディーズ楽曲のパワーを再認識して、同じ時代を生きてきたファンとともに一体になれる場、そして、美樹さん、好子さんの存在をどこよりも身近に感じられる場として、コンサートをやる意味がより明確になってきたのではないかと思う。
さて、17時半に開演。
バンドのメンバーは佐藤 準(音楽監督・Keyboards) / 是永巧一(Guitar)/ 笹井BJ克彦(Bass)/ そうる透(Drums)/ 竹野昌邦(Sax)/ 渡部沙智子(Chorus)/ 高柳千野(Chorus)の7人。
重々しいイントロに乗せて蘭さんの語りが会場に流れ、黒の衣装に身を包んだ蘭さんがステージ後方の「Ran」の文字の下の扉から登場。1曲目は2ndアルバムから「You do you」。去年はアンコールのラストに歌った曲だ。すごく好きな曲。先日から始まった蘭さんのラジオ番組「伊藤蘭Ran To You」(ニッポン放送、水曜20:30~)の中で、この曲がかかり、今回のツアーの1曲目に歌っていると言っていたので、これは予想通り。客席のペンライトがものすごく増えた。もちろん、コールなどはまだ禁止である。
続いてトータス松本作の「あなたのみかた」。
ソロデビュー当初は久々の歌のステージで、緊張していると何度も口にしていたが、そういうこともなくなり、キャンディーズ時代と比べても、シンガーとして今が一番ではないかと思ってしまうほど、確実に進化しているのが分かる。
ここで最初のMC。毎度のように出てくる年齢に関する自虐ネタ。記事などで「伊藤蘭(46)」とかいちいち年齢を書かなくてもいいのでは、とか、「私もアラフィフ」とか、微妙なボケがこっそりと散りばめられている。
キャンディーズ時代からの長い付き合いである森雪之丞さん作詞の明るく軽やかな「shalala♪Happy Birthday」。
蘭さん作詞の「愛して恋してManhattan」。
続いて、1stアルバム「My Bouquet」から2曲。
「恋とカフェインとスイーツと猫」
「Walking in the Cherry」
1stにも良い曲がたくさんあるんだよなぁ。聴きたい曲がいろいろと頭に思い浮かび、蘭さんのソロ曲だけのコンサートであっても十分に満足できるなと聴きながら思う。
7曲目は再び2ndから関西方面ではJR西日本のCMで使われているというボサノバ調の「ヴィブラシオン」。
そして蘭さん作詞の「名前のないChristmas Song」。
ここで衣装チェンジ。
「ひきしお」そして、ハードな印象の「ICE ON FIRE」。
非常にパワフルな2曲が歌い終えて、ここで蘭さん、再び退場。そろそろ来るぞ!
バンドのメンバーだけで始まったのは「Super Candies」。しかも、今回はギタリスト是永功一さんの歌入りだ。やはりこの曲をやると、客席全体が燃え上がる感じ。声出し禁止なので、静かなる熱狂。
そして、再び衣装を替えた蘭さんが登場すると、キャンディーズコーナーに突入。
まずは「その気にさせないで」からスタート。
こうなってしまうと、先ほどソロ曲だけでも満足できると思ったことなど忘れてしまう。もともとキャンディーズの楽曲はロックやポップス、ソウルなどの影響を積極的に取り入れたものが多く、歌詞とメロディと歌唱の3要素で成り立つ歌謡曲のように、じっくりと歌を聴くというより、ラン・スー・ミキのコーラスとバンドの演奏をトータルで聴かせるサウンド指向が強かった。なので、このようなライヴでこそ映えるのだ。
さらに「哀愁のシンフォニー」。サビの部分で紙テープの代わりに赤いペンライトが一斉に振られる。
そして「悲しきためいき」。シングル曲ではないので、一般的な認知度がどれ程なのか分からないが、常に数々のヒット曲と同格以上の扱いで演奏され続けた定番曲だ。
「夏が来た!」「ハート泥棒」「ハートのエースが出てこない」
「ハートのエース~」は当初セットリストに入っていなかったそうだが、若いスタッフの「この曲は外せない」という声で復活したという。確かにこれは外せない。
そして、今年限りで音楽活動からの引退を表明している吉田拓郎さんに思いをはせつつ歌われた「やさしい悪魔」。
「年下の男の子」「暑中お見舞い申し上げます」
最後はやっぱり「春一番」。この曲を歌いながら客席に手を振る姿がキャンディーズ時代と同じだなぁ、といつも思う。
これで本編終了。
アンコールは新曲「美しき日々」から森雪之丞作詞・布袋寅泰作曲のしっとりとしたバラード「家路」。そして「恋するリボルバー」の3曲。
演奏終了と同時に会場に流れ出したのが、スーちゃん作の「Please Come Again」だったのが感動的だった。歌っているのは蘭さん。2020年のコンサートのラストでこの曲を歌った時の音源だろうか。
その曲をバックにメンバー紹介。バンドが下がって、ひとり残った蘭さんの最後の挨拶があり、手を振りながら舞台袖に姿を消す。
終演後に蘭さんの声でのアナウンスも。
約2時間のコンサートが終わり、外へ出ると、あたりはすっかり暗くなり、それなりに人は多いのに、なんとなく寂しい雰囲気のお台場だった。
お台場の月。