池袋の田の神さぁ

 新宿に出かけたついでに池袋まで足を伸ばす。

 池袋駅の東口を出て、線路沿いに北へ行くと公園があり、その中に水天宮がある。

 その傍らに4体の石像。

 これは鹿児島県から宮崎県にかけて多く祀られている「田の神」。あちらでは「たのかんさぁ」と呼ぶらしい。

 様々なタイプがあるそうだが、これは農民型に分類され、しゃもじと飯椀を手にしていることが多いそうだ。

 高校1年の夏、九州南部を旅して、鹿児島県の宿に泊まった翌朝、宿のおねえさんが駅までクルマで送ってくれた。その時、途中の田んぼの中にたたずむ「田の神様」に寄ったのは覚えているが、お地蔵さんのようなものがあったというぐらいの記憶しかない。おねえさんは「たのかんさぁ」などとは言わず、「たのかみさま」と呼んでいたように思う。僕が東京の人間だから標準語を使ったのかもしれないが、それで田んぼの神様なのだな、と理解できたのだった。今から思えば、写真の1枚ぐらいは撮っておけばよかったと思う。

 田の神さぁの写真集なども出ているが、実際、いろいろ見てみると、実に面白い。自分でも田の神さぁ巡りをしてみたいと思うほどだ。

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 で、その田の神さぁがなぜか池袋にあるのだ。なぜ、そこにあるのかは誰も知らないようだが、ずっと前からあるらしい。

 後ろから見ると、こうなっているのも田の神さぁによく見られる特徴のようだ。

 豊作祈願だけでなく、子孫繁栄の願いも込められているということなのだろう。

 

 ところで、この田の神さぁを見て思い出したのだが、世田谷区の大蔵にも似たようなものがある。過去の写真を調べてみると、確かにしゃもじと椀を持っていて、姿形も間違いなく田の神さぁだ(下写真の左端)。

 これもなぜここにあるのか不明であるようだ。