新緑の御岳山(その3)

 5月4日に奥多摩の御岳山に登ってきた話の続き。ロックガーデンを散策し、御嶽神社まで戻ったところから。

 最初の予定ではあきる野市の上養沢方面に下るつもりだったが、道が崩落により通行止めになっていたので、御嶽駅に戻ることにする。そうすると、玉堂美術館に立ち寄ることもできる。

 往路はすべて徒歩で登ってきたが、帰りはケーブルカーに乗ろう。

 神代ケヤキ

 ケーブルカーの御岳山駅付近から見る御師集落。

 カエデの中には若葉が真っ赤なものもある。新緑ではなく新紅。これから緑色に変わっていく。

 ケーブルカーの駅前では藤の花が見頃。下界ではもう咲き終わりだが、ここは標高831メートル。

 東京都心方面を望むが、今日は遠くはすっかり霞んでいた。

 ケーブルカーには行列ができていたが、さほど待たずに乗れて、標高差420メートル以上を6分で下って、14時10分頃、麓の滝本駅に着いた。ここからは歩く。

 朝、オオルリの姿を見た地点でまたオオルリ(たぶん同じ個体)を見て、吉野街道まで下ると、御嶽駅近道の標識があり、それに従って、多摩川の渓谷沿いの遊歩道に入る。

 山の上も人がいっぱいだったが、川にもたくさんの人がいて、キャンプをしたり、釣りをしたり、ラフティングをしたりしている。

  御嶽渓谷とラフティングボート。群馬県利根川でラフティングの死亡事故が起きたのは、この翌日のことだ。


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 それにしても、ふだん見ている多摩川と同じ川とは思えないほど清らかな水だ。もっとも、この水はほとんど都民の水道用水として羽村で取水されてしまうので、すべてが海まで流れていくわけではない。ちなみにこのあたりで海から71キロほどである。

 渓谷美を堪能しながら1キロほど歩き、御嶽駅前に架かる御岳橋の下をくぐると、まもなく渓谷に面した玉堂美術館。戦時中に奥多摩疎開し、東京の自宅を戦災で失って、戦後は84歳で亡くなるまで御岳で過ごした画家・川井玉堂(1873-1957)の作品を収蔵・展示する美術館である。ここへ来るのは3度目ぐらいか。

 入館料500円を払って、館内に入ると、来館者は老若男女いたが、数は多くないので、静かだった。館内はフラッシュは禁止だが、撮影はOKだった。

 展示室には玉堂が十代の頃に描いた作品から巨匠としての地位を築いた円熟期の作品、そして晩年に到達した画境を示す作品、絶筆となった作品まで展示され、ひとつひとつの絵の世界に引き込まれる。とりわけ、奥多摩の自然を愛した玉堂が、美しくも厳しい自然の中で、慎ましく健気に生きる人々を描いた作品に胸を打たれる。

 ほかにも数々のスケッチや写生画、愛用の画材などが展示され、アトリエも再現されている。

 奥多摩の自然を借景とした庭園。

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 山の中を歩いていた時とはまた違った落ち着いた時間を過ごし、御嶽駅から満員の電車に乗る。

 自宅から自宅で32,090歩。