4月11日(土)、ふと思い立って神奈川県清川村の宮ケ瀬に出かけた。本厚木駅からのバスの時刻を調べずに行ったら、宮ケ瀬行きは1時間に1本しかなく、それ以外に途中の上飯山行きがやはり1時間に1本あることが分かった。
次のバスは10時20分発の上飯山行きで、とりあえず宮ケ瀬の前に飯山観音にでも寄ろうと思い、それに乗る。最初はそれなりに乗客がいたが、市街地を抜けて車窓が小鮎川沿いの田園風景に変わる頃にはガラガラになって、飯山観音前に着いた時は僕を含めて客は2人だけだった。飯山は温泉もある静かな山里で、ここへは過去に自転車で来たことがある。坂東三十三か所の観音霊場巡りをしていた時のことで、小田急線座間駅を起点にまず座間の第八番札所・星の谷観音に参拝し、この第六番・飯山観音、さらに平塚市の第七番・金目観音と巡り、最後は大磯の海岸まで走って、平塚駅をゴールとしたのだった。あれはもう20年前のことだ。

バスを降りて、時刻表を確かめると、次の宮ケ瀬行きは20分後の11時発だ。ちなみに今日は小田急の宮ケ瀬フリーパスを買ってきた。本厚木駅までの小田急線往復と、本厚木から宮ケ瀬までのバスがセットになって1720円だった。あとで知ったのだが、本厚木~宮ケ瀬のバスの片道運賃だけで890円もするので、大変お得な切符なのだった。
しかし、20分では飯山観音に参拝するのもかなり慌ただしい。間に合わないかもしれない。その次のバスは1時間後の12時発だ。まぁ、それでもいいか、と思い、とりあえず、朱塗りの橋(庫裏橋)で小鮎川を渡って、飯山観音・長谷(ちょうこく)寺へ。

このあたりは桜の名所でもあるが、ソメイヨシノは咲き終わって、八重桜が咲いている。山々はピカピカの新緑で、ウグイスやメジロのさえずりが聞こえる。熊蜂がやたらに多い。



山門から続く石段は山寺らしい雰囲気があったが、登りきると、駐車場が整備され、前に来た時とは印象が変わっていた。檻の中に猿が飼われていたが、それはなくなり、トイレにあった「蛭が大量発生しています」の注意書きもなかった。
実直そうな仁王像はそのままだが、鮮やかにお色直しされていた。宝永六(1709)年に奉納されたものらしい。



丹沢山系の東端に位置する白山(284m)の中腹にある飯山観音・長谷寺(真言宗)は20年前に比べると、境内全体がすっきりとして明るくなった印象だが、本堂は変わっていない。賽銭箱の奥にネットが張ってあり、「野生の動物が入りますのでネットをしております」の張り紙も相変わらずだ。

(2006年3月の飯山観音)

とりあえず、ご本尊の十一面観世音菩薩に手を合わせる。

境内には「開山千三百年」の幟がはためいている。寺伝によれば、奈良時代の神亀二(725)年に行基によって創建されたという。本当かどうかは分からないが、坂東三十三か所霊場は鎌倉時代の初期に成立したので、それ以前からあったことは確実で、古刹であることは間違いない。

前回は裏山の白山の頂上まで登ったが、今回はバスの時刻が気になるので登らない。山には野生動物の侵入を阻止するための電気柵が張り巡らされ、登山道にもゲートが設けられていた。

参拝を終えて寺をあとにするが、もう11時は過ぎて、次の宮ケ瀬行きのバスは12時までない。
ということで、庫裏橋の近くにある金剛寺(曹洞宗)にも行ってみる。今まで近隣にこのようなお寺があるとは気づかなかった。
参道を行くと、左手に古いお堂がある。今にも倒壊しそうな建物である。


お堂の横や裏には古い石仏がたくさん並んでいるが、ひっくり返りそうになっているものもある。

この古いお堂は大師堂であるらしい。金剛寺は大同二(807)年に弘法大師・空海が開いたと伝わり、その後、衰退したが、室町時代の天文年間(1532‐55)に再興され、この時に曹洞宗に改宗したという。往時は七堂伽藍を備えた大寺院であったようだ。小鮎川の庫裏橋も金剛寺の庫裏に向かって架かっていたことからの命名だそうだ。

はずれた扉が立てかけてある山門をくぐって、奥へ行くと、新しい本堂や収蔵庫があった。この寺には平安後期の木造阿弥陀如来像や鎌倉期の木造地蔵菩薩像など、貴重な文化財があるらしい。
大師堂の主。


地元の人々が世話をしているネモフィラ。

こちらも庫裏橋の近くにある龍蔵神社。ここも神亀二(725)年に行基が勧請したと伝わる。祭神は級長津彦命(シナガツヒコノミコト)、級長戸辺命(シナガトベノミコト)。

シナガツヒコはイザナギとイザナミの子で、風の神とされる。『日本書紀』によると、シナガトベの別名がシナガツヒコで、国産みの際にイザナギが朝霧を吹き払ったら、その息がシナガトベ(シナガツヒコ)になったと書かれている。
(小鮎川と庫裏橋)
庫裏橋の袂にある石造物。著しく風化した双体道祖神(左端)。


12時発の宮ケ瀬行きバスは5分以上遅れてやってきた。
つづく