今野敏『リオ〜警視庁強行犯係・樋口顕』

先日読んだ『隠蔽捜査』が面白かったので、続編を読もうと思ったのだが、その前に図書館でこれを見つけたので、さっそく借りて読んだ。『隠蔽捜査』の主人公・竜崎は「東大以外は大学じゃない、家庭内のことは妻の仕事、部下といえども決して心を許さない」という警察庁のキャリア官僚だったが、こちらの主人公・樋口は「人見知りで、つねに人からどう見られているかを気にし、自分に自信が持てず、人間関係においてもなるべく波風を立てないように心がけ、家庭を大事にする」という、竜崎とは対極的なキャラクターの刑事。読み始めて最初の数ページで多くの読者が反感を抱くであろう竜崎に比べると、樋口には最初から感情移入しやすい。しかし、読んでいくと、この二人、警察のあるべき姿に対する考え方は共通しているのが分かる。1955年生まれで、全共闘世代の後始末をさせられた世代と自らを位置付ける樋口(作者の今野敏も1955年生まれ)の世代論も興味深い。

リオ―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)

リオ―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)