樋口有介『窓の外は向日葵の畑』

 真鍮色の光におおわれる夏。松華学園高校、江戸文化研究会の部長・高原明日奈が姿を消した。部員の「ぼく」は後輩の紅亜に叱咤され、無理やり事件にまき込まれる。元刑事の「親父」も美人教諭への下心から、やはり事件を追う。東京の下町を舞台にくり広げられる爽やかで可笑しくて、ちょっと切ない青春ミステリー。

 同じ作者の『ぼくと、ぼくらの夏』を思わせる作品だが、あちらは武蔵野を舞台にしていたのに対して、こちらは下町。主人公の高校生は生粋の「江戸人」の末裔で、趣味は盆栽という渋い少年。ただ、愛車を「自転車」と書いて「ビアンキ」と読ませるところが同じビアンキ(イタリアの老舗自転車ブランド)乗りとしては、おっと思ったりする。
 ま、それはさておき、本というのは読み終わったら、さっさと手放してしまう本と、ずっと手元に置いておきたい本の2種類があるが、これはとりあえず後者かな。
 「爽やかで可笑しくて、ちょっと切ない青春ミステリー」とあるが、それ以上のものがある。意外な結末に驚かされるし、ラストもいい。よく出来た作品だと思う。
 明太子入りのチーズモンジャが食べたくなった。

 作中に出てくる北海道のヒマワリ畑はこんな感じかな。

(おまけ)シマウマの赤ちゃん