台風19号

 10月6日に中心気圧992hPaだったのが、翌日には915hPaまで一日で77hPaも急降下して、あまりに急激な発達ぶりが世界中から注目されている大型で猛烈な台風19号が関東をめざして北上してきた。

 先月、千葉県を中心に大きな被害を出した台風15号から1か月。まだ復興も進まないうちに、あんな台風はもう来ないだろうと思っていたら、またやってきた。前回よりさらに強い勢力で、なおかつ大型の台風だ。関東で予想される最大瞬間風速は60mにもなるという。

 昼頃には鉄道各社も計画運休を実施し、交通はほぼストップ。コンビニやスーパーを含むお店も休業が相次ぎ、繁華街からも人が消える。首都圏は台風に備えて、厳戒態勢に入った。

 関東に襲来する台風の場合、事前にマスコミが危機感を煽るわりには、実際に来てみると、意外に大したことはなかった、ということが過去には何度もあり、南九州出身者に「東京に来るのは、あんなの台風のうちに入らない」などと言われたこともあるのだが、最近はちょっと違ってきた。楽観はまったく許されなくなった。

 地球温暖化の影響として、かつてないスーパー台風が日本列島を頻繁に襲うようになる、というようなことが以前から言われていたが、すでにそれが現実化したのかもしれない。

 自宅は台地上にあるので雨については基本的にあまり心配していないのだが、とにかく暴風が怖い。前回は台風進路の左側だったので、大きな被害はなかったが、15号と同程度の風が吹いて、しかも進路の右側に入ったりすることを想像すると、本当に不安だ。屋根が飛ばされたりするかもしれない。明日以降、ブルーシートで覆われた屋根の下で過ごすことになるかもしれない。そもそもブルーシートはどこで入手できるのだろう。先月の房総半島の家々と同じようなことが自宅にも起こるかもしれないとあれこれ思いを巡らせる。自主避難者のために世田谷区が開設した避難所に行ったほうがいいのだろうか、なんてことも考える。世田谷区の防災無線で、何やら放送しているが、聞き取りにくい。区役所のホームページもアクセスが集中しているようで、繋がらない。

 ということで、個人的には専ら台風による暴風を心配していたわけだが、テレビの台風情報はほとんど豪雨関連ばかりだ。神奈川県の箱根町などではすでに記録的な豪雨になっている(最終的に箱根では12日だけで922.5㎜、10日の降り始めから1001.5㎜という観測史上全国1位の降雨量を記録)。台風はまだ海上にあるが、湿った空気が関東・東海地方にどんどん送り込まれ、それが関東平野を取り巻く山地にぶつかって、そこに大量の雨を降らせているのだ。当然、そこから流れてくる河川もどんどん増水していく。各地のダムで貯水量が限界に達し、「緊急放流」などという言葉も出てくるようになった。

 東京の多摩地方を含む関東各地や静岡県に「大雨特別警報」が出され、「命を守るための行動を」などと呼びかけられ、関西の親類が心配して電話をかけてきたりする。

 あとで確認すると、世田谷区では12日16時前後が最も降雨量が多かったようで、区内の河川もこの頃から水位が急上昇していた。12日の区内の降雨量は250㎜~280㎜ぐらいだったようだ。

 世田谷区雨量・水位情報の画像より。

 仙川・鎌田橋付近 12日5時

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 同 7時

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 同 16時

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 野川・大正橋付近 6時

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 同 16時

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 見たこともないほど増水した多摩川の映像に驚いたりしながら、時間を過ごすうちに暗くなり、激しい雨の中、風も強まって、もはや屋外へ出て避難所へ、という選択肢は消えた。雨戸も早めに閉めて、自宅でじっとしているしかない。

 19時前に台風は伊豆半島に上陸。この頃には「猛烈」から「非常に強い」そして「強い」に勢力を落としていたが、それでも関東を襲う台風としては最強クラスのまま、どうやら東京を直撃しそうだ。しかも、町田あたりを通りそうだという。進路の右側に入る。最悪だ! 上陸したことでさらに勢力が衰えることを願うばかりだ。

 豪雨の範囲が北関東、東北へと拡大し、「大雨特別警報」の対象範囲もどんどん追加されていく。河川の氾濫情報も続々と伝えられる。恐怖の時間を過ごすうちに21時頃からいよいよ暴風が吹き荒れだした。ブワッと猛烈な風が家にぶつかってくる。一瞬、家が揺れる。東京では都心で41.5mという戦後最大の風速を観測したようだ。

 しかし、暴風は長続きはしない。時折、激しい風が吹いても、すぐに静かになり、また思い出したように、強い風が唸りを上げる、という感じ。

 そして、21時半頃には雨音も聞こえなくなり、風もほとんど止んだ。22時頃には外から風や雨の音のかわりに虫の声が聞こえてきた。

 あれ、これで終わり? もう安心していいのか? 

 二子玉川多摩川が氾濫したというニュースに見入りながらも、自分は助かったのかな、という安堵感。

 15号の時のように恐怖の一夜を過ごすつもりだったが、ホッとした気持ちで、床にき、そのまま眠ってしまった。

 各地で想像以上の大水害が発生していたことを知るのは翌朝になってからである。