松本清張『黒の回廊』

 1970年代前半に連載された長編作品。
 1964年に自由化された海外旅行がまだ今ほど一般的ではなかった時代に企画された女性限定、講師付きの25日間ヨーロッパ旅行。添乗員(男)、講師とともに30人の参加者が羽田からヨーロッパへ旅立つが、経由地のアンカレッジ、そして最初の観光先、コペンハーゲンで小さな“事件”が続発し、スコットランドの湖ではついに参加女性の死体が発見されるという事態に…。
 これらの事件に関連はあるのか、、一体、誰が、どのように、何のために…?
 ヨーロッパの観光地を巡る旅が続く中で、明らかになる真実とは…。
 謎解きの醍醐味を前面に打ち出した本格推理モノがヨーロッパ旅情をまとった600ページ近い作品で、これはなかなか面白かった。
 随所で松本清張の女性観があらわれていて、女性の読者の中にはそれは偏見だと思う人もいるかもしれないし、納得する人もいるのだろう。