3月15日、日曜日。東京の山奥、檜原村の都民の森で1泊2日のイベントに参加している。
昨夜は素晴らしい星空を堪能し、ひと眠り。午前4時過ぎに目が覚めると、テラスに人影があったので、僕も寝袋を抜け出し、外へ出てみた。
空はすっかり曇り、少し霞んだ月だけが光っている。それでも天体望遠鏡に土星が入っているという。確かに南西の空にぼんやりと小さな星が微かに見える。望遠鏡を覗いてみると、土星がリングもしっかり確認できた。
5月のイベントだと明け方の山々はたくさんの野鳥たちの歌声で満ち溢れて、それが感動的なのだが、この季節だと静かなものである。それでも、僕がこのイベントに何度でも参加したくなるのは、この未明から夜明けにかけての時間帯の独特の空気感みたいなものを味わいたいというのが一番の理由だったりする。
5時過ぎの都民の森。
夜明けのブルー。
気温は氷点下3℃ぐらい。このぐらいならまぁ大丈夫だ。
5時半頃。
ミソサザイがさえずっている。アオゲラの声も聞こえた。
だんだん人が起きてきた。子どもたちの一番の楽しみはリス。夜行性のテンが山のねぐらに帰る頃からが彼らの活動時間だ。
しかし、その前にヤマドリのオスがいる、という情報。野生のヤマドリは初めてだ。森林館の建物の真下という、すごく見にくい場所で、しかも大勢が狭い場所に殺到したので、まともな写真は撮れず。
6時10分、リスが出てきた。
子どもたちも、お父さん、お母さんも「かわいい、かわいい」と大喜びだ。
リスは4匹確認。
昨夜も遅くまで上空を飛行機が通過していたが、朝になってまた飛行機がやってくる。
ヤマガラやコガラ、カケスもパンくず目当てにやってくる。
カケスは山では珍しくない鳥だが、こんなに間近で観察できる場所は貴重らしい。
7時頃、山の稜線からようやく太陽が顔を出した。
そして、テラスの真下にスミスネズミが出てきた。初めて見るネズミ。またの名をカゲネズミ(鹿毛鼠)。短い尻尾が特徴。スミスはSmithで、1902年にイギリス人のRichard Gordon Smithが六甲山でこのネズミを新種として発見したことに由来する。ということで、外国人の名前が付いているが日本の固有種だ。
野鳥ではベニマシコ、アトリなどの声も聞いた。ベニマシコは姿もちらっと。
各自それぞれに朝食をとり、8時から再び野外観察へ。奥多摩町との境の鞘口峠まで。
雪の上に残ったタヌキの足跡。
モモンガの食痕(スギの球果)。
ミソサザイの古巣。
テンの足跡。
リス(かモモンガ)の古巣。
鞘口峠にあったシカの足跡と食痕。昨夜のものだ。森林館からも昨夜、シカの声が聞こえたそうだ。僕は聞かなかった。もうひとつ、トラツグミも鳴いていたそうで、これを聞き逃したのは残念。あの不思議な声はぜひともまた聞きたかった。
やはりシカは増えていて、このように樹皮をぐるりと剥いでしまうと、木は枯れてしまう。
鞘口峠から眺める東京都の最高峰、雲取山(2,017m)。
ミソサザイやゴジュウカラ、ヒガラなどの声を聞きながら峠まで往復し、9時40分に森林館に帰着。
観察会のまとめとアンケートの記入で、今回のイベントも10時過ぎには終了。
哺乳類 テン3匹、タヌキ2匹、リス4匹、スミスネズミ1匹。
鳥類 カケス、ヤマガラ、ヒガラ、コガラ、キクイタダキ、ミソサザイ、ウソ、コゲラ
ヤマドリ、アオゲラ、ベニマシコ、ゴジュウカラ、アトリ、マヒワ、カヤクグリ。
(野鳥は声のみも含む。マヒワ、カヤクグリは僕は未確認)
五日市行きの急行バスは10時35分発だが、まだ早いので、都民の森から数馬まで歩いてみることにした。自動車の走る奥多摩周遊道路だと5キロぐらいだと思うが、急勾配でまっすぐ下る登山道ならそこまでの距離はないだろう。
森林館のすぐ下で、赤い鳥を目撃。写真は撮れなかったが、たぶんベニマシコだろう。ほかにも小鳥がいたので、適当に撮ったら、カヤクグリが写っていた。
都民の森から数馬までの山道は歩く人もおらず、何やら動物の足跡もあちこちで見かけ、シカならいいけれど、イノシシが出てきたらイヤだな、と思いながら歩く。クマはまだ出ないと思うが、もちろん油断はできない。
最初に谷底まで一気に下って、あとは沢沿い。
ここで右岸から左岸へ渡る。近くでミソサザイが鳴いたが、姿は見えなかった。
菅平の滝。
山林の中で動くものがあり、クマかと思ったら作業員だった。一瞬あせった。
ちょっと心配な老朽橋がいくつもあった。
夢の滝。なんでこんな陳腐な名前にしてしまったのか。昔はナメ滝と呼ばれていたらしいが。
奥多摩周遊道路の料金所跡付近で道路と再会し、その旧道に入る。人里に入って、ホッとした。
まもなく珍しい神さまを発見。足王さま。
こんな神さま、初めて知った。
九頭竜の滝。
1時間余りで数馬の集落に着いた。
この地方特有の兜造りの古民家。屋根は茅葺きではなく、杉か檜の皮で葺いてある。
山岳ツーリングの自転車が次々と登ってくる。僕もこの道は何度も走った。女性サイクリストの二人組もやってきて、よい香りの風とともにすれ違って行った。
数馬のロウバイ。こちらからも芳香。
数馬からはバスで帰る。