早春の都民の森(その1)

 3月18日〜19日、東京都檜原村都民の森で開催される自然教室「アニマルウォッチングと冬の星座観察」に参加してきた。もう何度も参加しているイベントで、そのたびに当ブログでも紹介しているので、毎度同じような内容、写真になりますが、あらかじめご了承願います。
 5時40分頃、家を出て電車を乗り継ぎ、武蔵五日市駅へ。ここから8時10分発の都民の森行き急行バスで檜原村の最奥、つまり東京で一番の山奥にある都民の森まで約1時間。まだ行楽シーズンには早いのかな、と思ったが、3連休初日ということもあり、バスは2台運行だった。
 村の一番奥の集落・数馬を過ぎて、奥多摩周遊道路に入ると、標高が上がるにつれて道路沿いにうっすらと雪も現れたが、大した積雪ではなく、山歩きに影響はなさそうだ。
 標高1,000メートルにある都民の森のバス停に到着し、駐車場の売店の裏でさっそくミソサザイの姿を確認。急坂を登って森の拠点施設「森林館」へ向かう。もう何度も参加しているが、この道を登っている時はいつもワクワクした気持ちになるし、トチノキなどの巨樹を見上げたり、小鳥たちの声を聞くと豊かな気持ちにもなる。
 都民の森のマスコット(?)キツツキの「まもる君」。

 雪景色も予想していたのだが、こんな感じ。

 気温は4℃。このぐらいなら大丈夫。

 でも、テラスのテーブルには雪も残っている。

 遊歩道にも雪。

 受付にはまだ間があったので、しばらく野鳥観察。

 カケス。

 コガラ。




 このあと手に乗った! 一瞬だったけど。

 ヤマガラ

 さて、受付で参加費というか保険料として200円を払い、10時過ぎからイベント開始。今回は参加者が多く、老若男女40人ぐらいはいるだろうか。

 午前中は富士山麓を拠点に活動している動物写真家・中川雄三さんのレクチャー。
 昨日撮影したばかりという動画も含めて貴重な映像を見ながらの話で、いろいろな知識を得る。
 今年2月にNHK-BSで放送された「ワイルドライフ」の奥多摩編は中川さんや都民の森のガイド浦野さんが撮影協力でクレジットされていたし、最近放送されたNHKの「さわやか自然百景」の三頭山編もすべて都民の森の映像で中川さんたちが関わったものだった。ちなみにNHKは今もここでエナガの長期取材中らしい(放映は来春?)。
昼食後、浦野さん、中川さんの案内で野外観察に出発。
森林館の軒下にあるスズメバチの古巣を苔などで補修したミソサザイの巣。

 つらら。

 林の中でリスの巣を見つけて、あれは古巣か、それともまだ使っているのか、などと話しているところにリスが現れた。古巣を補修して使っているようだ。
 都民の森にリスはたくさんいるが、こうした山歩きの途中で遭遇するのは貴重な経験だ。ただ、動きが速すぎて写真は撮れず。
 これはカケスの古巣。

 都民の森では数少ないハリモミの木。

 山の中にはクリの大木があちこちにある。カケスが冬に備えて土に埋め込んだ栗がそのまま食べられることなく残り、育ったもの。その栗の木にアオゲラが穴を開け、その古巣をムササビやモモンガ、フクロウその他の小動物や野鳥が利用する。このような穴はキツツキ(特にアオゲラ)にしか開けられない。つまりキツツキがほかの獣や鳥に住まいを提供する役目を果たしているわけだ。あの穴にも何か潜んでいるのかもしれない。

 シカかノウサギが草を食べた痕。この食べ方はノウサギっぽい?

 シカが皮を剥いだ痕。幹の周囲をぐるりと剥かれてしまうと木は枯れてしまう。こうした食痕は至るところで見られるが、樹皮がシカの好物というわけではない。数が増えすぎて、こんなものまで食べないといけないぐらいの食糧難なのだ。シカは増えすぎた結果、全体的に体が小さくなる傾向にあるらしい。

 アオバトの古巣。

 中川さんによれば、アオバトの巣は全国でも50例も見つかっていないという。キジバトなどもそうだが、その巣は粗末な作りで、葉が茂ってしまうとまず発見できない。その貴重な巣が都民の森でいくつか見つかり、アオバトの子育ての様子が昨年、NHKダーウィンが来た」で放映された。その撮影にも中川さんや浦野さんが関わっていたのだった。
 恐らくコルリの古巣。

 2月の「ワイルドライフ」でオオルリの巣にカッコウの仲間ジュウイチが託卵する場面があったが、あの貴重な映像も都民の森で撮影されたそうだ。

 イタヤカエデの幹にアオゲラが開けた穴。

 まるで機関銃で撃たれたようだが、こうして幹に傷をつけ、沁み出した樹液(メイプルシロップ)を飲むのだそうだ。それはほかの鳥たちにとってもご馳走であり、この後、コガラが樹液を飲んでいるのを目撃できた。
 冬の朝に樹液がツララになり、それを小鳥たちがホバリングしながら飲む映像は午前中に見せてもらった。

 雪の上に残るリスの足跡。ほかにキツネの足跡もあった。


 この付近で倒木の下に出入りするミソサザイを目撃。ミソサザイは先ほどからあちこちでさえずっている。日本の野鳥界でもナンバー1の歌い手だと思う。
また、上空をイカルの群れが飛んでいた。鳥が群れをなして飛んでいるのは見えてもそれがイカルだと分かるのは都民の森の名物ガイド浦野さんのおかげである。
 シカの糞。この後もあちこちにあった。植物の被害が深刻なので、駆除もしているそうだが、まったく追いつかないらしい。しかし、僕は都民の森では一度もシカを見たことはない。食痕はそこらじゅうにあるのだけど。

 シカに食べられた笹。葉っぱはほとんど食べ尽くされ、先端に食いちぎられた痕が残っている。

 老朽化で廃止されたフィールドアスレチックのコース(スポーツ歩道)を抜け、展望テラスに出た。標高1,162メートル。

 ここで遠い稜線上のモミの木に止まっている日本最大の鷹、クマタカを浦野さんが発見。フィールドスコープでバッチリ見ることができた。野生のクマタカを見るのは初めてなので感動した。
 「ワイルドライフ」でもクマタカの子育てがストーリーの主軸になっていたが、奥多摩は国内でもクマタカの生息密度が高い地域らしい。それだけ餌になる生き物が多いということなのだろう。東京の自然は実はとても豊かなのだ。
 写真はないので、参考までに上野動物園クマタカの写真を載せておきます。

 さて、あとは森林館へ向かって下っていくだけ。

林の中でシカが鋭く警戒の声を発したが、姿は見えず。でも、確かに近くにいた。我々からは見えなくても、さまざまな動物がこちらの存在に気づいて、息をひそめているのだろう。
 キツツキが虫を探して木をつついた痕。まだ新しい。アオゲラアカゲラか。

 まだ新しいノウサギの糞。図上ではエナガが賑やかだ。

 テンの糞。テンは今晩見られるだろう。

 森林館近くの斜面の木々。ことごとくシカに齧られている。今年に入ってからのもので、人のいなくなった夕方に群れでやってきたらしい。

 3時間ほどの散策を終えて森林館には16時頃に戻った。
 この後、天体観察のボランティア、ナミキさんによる星や星座についてのレクチャーがあって、その後、夕食。
 すでに都民の森は閉園になっているが、本日は宿泊イベントのためのレストランが延長営業していて、僕はとんかつ定食を食べる。

 日も暮れてきて、都民の森はすっかり静かになった。

 これから夜行性動物の観察および天体観察の時間だが、空はすっかり曇ってしまった。果たして星空は見えるのか。
 つづく。