帯状疱疹の続き

 帯状疱疹という思わぬ病気を発症して一週間ぐらいになるだろうか。
 最初にクリニックに行ったのは木曜日。その時はまだ躊躇なく外出できる状態だったが、皮膚科の先生の「これからひどくなります」という予言の通り、翌日には外出どころか起き上がるのも辛い状態になった。左目がほとんどふさがって、発疹もあり、顔の左半分は相当酷いことになっているようだった。この段階で前回のブログを書き、「お岩さん」とか「ボコボコにされたボクサー」とかのありがちな表現を使ったのだった。ただ、実際に自分の顔の惨状を鏡で確認する気にもなれなかった。
 身体がだるくて、食欲も落ちてきて、ただ湯船に浸かっている時だけ、ちょっと気持ちがいい、という感じだった。男だからまだいいけれど、この顔は女性だったら精神的にさらにきついだろうなぁ、などと考えながら、テレビに出てくる若い美男美女の顔を脳内で次々に帯状疱疹にしてみる暗い週末。皮膚科の先生の話通りなら、そろそろ回復に向かうはずだが・・・。

 月曜日の朝、前回出してもらった薬もなくなるので、なんとか起き上がって再び皮膚科と眼科へ。マスクにサングラスにニット帽という怪しすぎる格好で行こうかとも思ったが、生憎の曇り空。サングラスはやめて、マスクとニット帽とメガネという一番見苦しい部分だけ晒したスタイルで、なるべく人通りの少ないルートを選んで駅へ向かい、歩く人はみんな方向が一緒なので、ほとんど顔を見られることもないまま、駅前までたどり着き、最後に人の流れを巨大なドブネズミのように横切って駅前ビルのクリニックのエレベーターに駆け込む。
 ここまで来れば、皮膚科だし、人目を気にしても仕方がない。実際、先生も想定通りという反応だ。順調にステップアップして、もうピークは過ぎたようだ。
 新しい処方箋を出してもらい、続いて眼科へ。商店街にあるが、もう仕方がない。ニット帽も被らない。ただ俯き加減で、黙々と行く。どうせ東京なので地元の町といっても知らない他人ばかりだ。
 眼科にて受付前の廊下で順番を待っていると、スタッフの女性がやってきた。
 「眼圧、測れますか」
 「左目、ふさがってますけど」と僕。
 「あぁ、ほんとですね」と僕の左目を覗き込んだスタッフ。結局、今回は眼圧は測らず。
 その後、診てもらった先生によれば、今のところ眼の中には症状は出ていないようだ。

 最後に薬局へ。二通の処方箋を出しながら受付のおばちゃんに「こんな顔になっちゃいました」と言ったら、「えっ、だいじょうぶなんですか?!」と今日初めてびっくりされた。4日前とは顔が激変しているからね。「入院は?」とも聞かれたから、相当に衝撃的な顔だったのだろう。おばちゃんも帯状疱疹の経験者で、耳の中に発症し、即入院して、お岩さんみたいな顔になったそうだ。「写真を撮っておけばよかった」とも。
 2日分(飲み始めから合計7日分)の抗ウイルス薬(ウイルスは7日で殲滅できるそうだ)や5日分の炎症止め、鎮痛剤など、たくさんの薬を出してもらって、「ちゃんと元の顔に戻りますから」などと慰められつつ帰宅。

 ところで、自分の顔面の状況だが、日曜日に鏡に映った顔をチラッと見た時の瞬時のイメージは実は想像と違っていて、お岩さんでもボクサーでもなく、遮光器土偶
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(数年前に東京国立博物館で撮影した写真がこんな形で役に立つとは!)
 もちろん、顔面全体が土偶みたいになってしまったわけではなく、左目のまわりだけが、あの不思議な縄文人のサングラスみたいなのだった。周辺が腫れ上がって、横線一本みたいな・・・。あくまでも、一瞬の印象。土偶の写真を改めて確認すると、ちょっと違うかな。遮光器土偶にもいろいろあるから、ほかに似ているのがあるかもしれない。
 数年前に友人が帯状疱疹をやった時は、僕とは逆に顔の右半分に出て、けっこう顔が歪んでいて驚いたのだが、僕の場合、腫れてはいるが、歪んではいないようだ(もともとの歪みは別として・・・)。彼は顔面神経が麻痺したというようなことも言っていた記憶があるが、そういうのも今のところはない。

 これが月曜日までの状況。
 幸いにも痛みはほとんどない。鎮痛剤のおかげなのだろう。どうなる土偶
 つづく。