大磯散策(その1)

 朝からどこかへ出かけようと思っていたが、行きたい場所はいろいろあって、行き先が決まらないまま、朝5時前に家を出た。とりあえず、駅に着くまでに下り方面か上り方面かを決めようと、あれこれ考えを巡らせ、上りの新宿方面のホームに上がった。

 しかし、雨上がりの空にほんのりピンクに染まった富士山が浮かんでいるのを見て、考えが変わり、下り方面に移動して、伊勢原行きの各駅停車で出発。

 相模大野で藤沢行きの急行に乗り換え、藤沢で東海道線に乗り継いで大磯で下車。

 まずは海岸へ。大磯は湘南発祥の地で、大磯の浜は日本で最初の海水浴場でもあるそうだ。明治十八(1885)年に元陸軍の軍医総監だった松本順氏(1832‐1907)が健康増進に効果があるという海水浴の好適地として大磯を日本初の海水浴場に指定したのだそうだ。徒歩で旅する時代が終わって宿場の賑わいが失われた大磯が活気を取り戻すきっかけとなった。松本氏は東京で大磯の海水浴場の宣伝に努めたほか、大磯駅の設置を働き掛けるなどしたという。

 アオバトが海水を飲みに飛来することでも有名な照ヶ崎へやってきた。大磯も砂浜海岸だとばかり思っていたら、ここは石浜だった。そして、水も意外にきれい。釣り人が多い。

 正面には伊豆大島、右手に伊豆半島から箱根、そして富士山まで見えている。

 海岸にはアオバト目当てらしい人が数名。三脚にカメラをセットして、望遠レンズを岩礁に向けているが、カメラマンは海に背を向けて、山の方を双眼鏡で見ている。アオバトが来るのを待っているのだなと分かる。

 説明板によると初夏から秋にかけてアオバトがこの海岸に飛来するといい、多い日には延べ2千羽にもなるそうだ。しかし、今は緑色のハトの姿はまったく見えない。そのうち諦めたのか、撤収する人も出てきた。僕もしばらく海岸で石拾いなどしていたが、アオバトは諦めて、次の目的地へと向かう。

 あとで気づいたのだが、『よつばと!』第15巻でよつば達が「いい石」を探しに行ったのが、照ヶ崎の海岸なのだった。確かに「いい石」がたくさんあった。

 

 

 普通のハトはたくさんいた。

 イソヒヨドリもいる。

 いったん大磯駅に戻り、次は町の背後にある大磯丘陵の湘南平をめざす。

 駅の西側のガードをくぐり、高台の住宅の間をつづら折りの急坂で登っていく。やがて眼下に大磯の町と海が広がった。

 東海道本線の電車も見える。

 水平線上には伊豆大島

 素敵なお宅がたくさん。こんなテラスで優雅なティータイムなんて羨ましい。でも、車がなければ暮らせない。

 高田公園のフジ。大磯に住んでいた劇作家で随筆家の高田保氏(1895‐1952)を記念する公園。高田氏はこの付近に土地を購入し、家を建てたが、完成を待たずに病没。遺族が暮らした高田邸の近くにこの公園を造り、公園の片隅に墓碑が建立された。「海の色は日ざしで変わる」という言葉が刻まれている。

 公園どうぶつ。

 ここまでは舗装路だったが、この先は山道となり、雨上がりで滑るのでは、という不安もあり、思っていたよりもハードだった。今年初めてキビタキの声を聞く。

 

 つづく

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