神田広美『待ち呆気』+シングル・コレクション

先日取り上げたフィーバーと同時に購入したのが神田広美のこのCD。唯一のオリジナル・アルバム『待ち呆気(ぼうけ)』に3枚のシングルを追加した作品集である。
1977年に『スター誕生』からデビューしたという神田広美というシンガーを僕が知ったのは実はわりと最近のこと。キャンディーズのCDボックスセット(1998年発売)に作曲家の穂口雄右氏が寄せた文章の中でだったろうか。
キャンディーズのメインライターだった穂口氏が「夏が来た!」以降、レコード会社の方向性に疑問を感じ、キャンディーズのプロジェクトから離れてしまい、代わりに見出したのがこの神田広美だった。
キャンディーズアイドル歌謡曲から離れて、新時代のポピュラーミュージックを追求するような方向性に導いた穂口氏がその路線を神田広美を通じてさらに推し進めようと、力を注いだその結晶がこの作品なのだ。バックには林立夫(Ds)、後藤次利(B)、佐藤準(P)、松原正樹(G)、水谷公生(G)、斎藤ノブ(Per)という今となっては大御所ばかり、当時の先鋭的な若手の最強メンバーである。そして、これはキャンディーズのラスト・シングル「微笑がえし」のレコーディング・メンバーでもある。そう、解散宣言をしたキャンディーズの最終期に穂口氏が再び曲を書くことになった時、この最強のミュージシャン達を引き連れてキャンディーズの最後のレコーディング・セッションに参加し、あの名曲群を生み出したということなのだ。
というわけで、この神田広美のアルバムにもキャンディーズの最終期と似たようなカラーが確かに感じられる。ちなみに全16曲中8曲が穂口作品。作詞には松本隆らが起用され、歌謡曲というよりはニューミュージックに近い路線といえる。ちょっとやまがたすみこあたりにも通じるかも。吉田拓郎の曲も1曲あり。
神田広美は1978年には歌手活動を引退して、野原理香のペンネームで作詞家に転向、さらに岸田采子の名前でも2001年にマキシシングルを発表したりしているとのこと。




Myこれ!チョイス 36 待ち呆気+シングルコレクション

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