中村弦『ロスト・トレイン』

ロスト・トレイン (新潮文庫)

ロスト・トレイン (新潮文庫)

 この作品の語り手である牧村は25歳の会社員。奥多摩廃線跡を訪ねた際に、62歳の鉄道マニア・平間と知り合う。偶然にも二人とも吉祥寺に住んでいたことから、世代を超えた交流が始まる。
 しかし、その後、平間は身辺整理を済ませた上で突然、失踪してしまう。その直前、牧村は平間からこんな伝説を聞いていた。
「日本のどこかにまだ誰にも知られていない、まぼろし廃線跡がある。それを見つけて始発駅から終着駅までたどれば、ある奇跡が起こる」
 平間がこの廃線跡の所在をつかみ、訪ねて行ったのではないか、と考えた牧村は、平間から紹介されていた旅行代理店に勤める鉄道マニアの女性・菜月を訪ね、彼女とともに平間の行方を調べ始める。「まぼろし廃線跡」とはどこにあるのか、そこで一体どんな奇跡が起こるというのか。ストーリーはこのあたりからミステリーっぽくなってくるわけだが、さらには『銀河鉄道の夜』を思わせるようなファンタジーの要素も色濃くなってくるので、その辺がちょっと評価が分かれそうではある。