山手七福神巡り

 東京にも浅草、深川、隅田川下谷、亀戸、東海など、いくつかの七福神巡りがあるが、その中でも歴史が古いらしい山手七福神巡りに行ってきた。
 そもそも七福神信仰は室町中期に始まったらしく、江戸中期に庶民の間に定着したという(山手七福神巡りのパンフレットによる)。その中で「山手七福神」は江戸城裏鬼門守護のため、将軍が鷹狩りの際に参詣した目黒不動尊へ通じる参詣道沿いに設置された江戸で最初の七福神巡りなのだそうだ(江戸で最初の七福神には異説あり)。
 ということで、まずは東京メトロ南北線白金高輪駅まで行き、目黒通りと桜田通りのぶつかる港区白金台1丁目にある清正公・覚林寺にお参り。ここには毘沙門天が祀られている。四天王の一員として祀られる時は多聞天と呼ばれる毘沙門天は元来はインドの神で、災難除けなどの福徳をもたらすという。

(覚林寺)

毘沙門天堂)
 週末ということもあって、老若男女(どちらかというと「老」に近い人が多い)が大勢訪れていて、朱印所には行列ができていた。本堂を拝んだ後、境内にある毘沙門天堂に手を合わせ、僕も列に加わる。15分ほど並んだかな。僕も朱印帳は持っているが、今日は色紙を買って御朱印をいただく。色紙込みで500円。色紙の裏にすぐ名前を書き入れる。

 さて、ここから目黒通り沿いに目黒不動尊までほぼ一直線に七福神が並んでいる。将軍が江戸城から目黒へ向かうのに通った道なのだ。覚林寺でもらったパンフレットをあとで読んで知ったのだが、覚林寺の側から巡ると「無病息災・長寿祈願」となり、反対に目黒不動側から巡ると「商売繁盛祈願」の御利益があるそうだ。
 目黒側から来る人たちとも次々とすれ違いながら、徒歩8分(所要時間はパンフレットによる。以下同じ)で、通りから少し左に入ったところにある瑞聖寺。布袋尊が祀られている。
 まず寺務所で色紙を預け、本堂を拝む。堂内の向かって右手に布袋様が安置されていた。豊かな暮らしと円満な家庭の守護神とのこと。


(中国の禅僧がモデルの布袋尊

 寺務所に戻ると、まもなく名前を呼ばれ、色紙を受け取り、代金300円は陶製の白い象の中に入れる。このお寺ではご朱印料はすべて日本赤十字に寄付するそうだ。

(これで七福神御朱印がちゃんと収まるのか?)

 さて、三つ目のお寺は徒歩8分で、目黒通りから左に少し下った場所にある白金妙見の通称をもつ妙圓寺。ここには福禄寿と寿老人が祀られている。たがいによく似たおじいさんの神様が一緒に祀られていて、御朱印もあわせて一つなので、色紙に六つの朱印で七福神がちゃんと収まるようになっているわけだ。
 ともに中国伝来の神である福禄寿は幸福・財産・長寿の神で、寿老人は学芸・智恵・長寿の守護神だそうだ。


 ここは小さなお堂の中に靴を脱いで上がり、福禄寿と寿老人を拝み、そこで御朱印をいただく方式なので、狭い堂内はお参りの人たちで、超満員。大量の色紙や朱印帳に朱印を捺す人と文字を書き入れる人(ご住職)と2人でやっているが、けっこう待たされた。途中で応援にもう1人。団体参詣のグループの代表が一度に十数冊の朱印帳を持ち込んだりもするので、休む間もなさそうだ。

 やっと自分の色紙を受け取り、300円を納めて、次のお寺へ。

 次は目黒駅の向こうの大圓寺まで徒歩10分。
 港区から品川区に入り、まもなく目黒駅。目黒駅は品川区にあるのだ。ちなみに品川駅は港区だ。
 山手線の上を越えて、目黒通りから左へ分かれて、行人坂を下る。坂の多い東京都内でも屈指の急坂だ。すぐ品川区上大崎から目黒区下目黒に入り、坂の途中にあるのが大圓寺。ここには大黒天が祀られている。五穀豊穣の神だ。

(坂の途中にある大圓寺

 台地から目黒川の谷へ一気に下る急斜面に立地する境内には石造の五百羅漢がある。1772年、江戸の町の3分の1を焼き尽くした「行人坂の火事」の火元となったのがこの寺で、大火の犠牲者の供養のために造られたという。また、清涼寺式釈迦如来像も御開帳され、拝むことができた。

 行人坂を下りきって、雅叙園前を過ぎ目黒川を渡る。

 さらに道なりに進むと、山手通りにぶつかり、歩道橋を渡ると大圓寺から10分で蟠龍寺。目黒川右岸の台地斜面に立地するお寺で、七福神では紅一点の弁財天が祀られている。受付に色紙を預け、池に架かる橋を渡って本堂を拝んだ後、少し高い所にある弁天堂の弁天様(木像)に手を合わせ、さらに崖の洞窟に祀られた岩屋弁天も拝む。


(弁天堂)

(岩屋弁天)

(あとひとつ…)

 さて、最後は目黒不動尊瀧泉寺だ。徒歩10分。
 山手通りを南へ行き、右に入ると、五百羅漢寺(ここは必見!)を過ぎ、まもなく瀧泉寺の前に出る。江戸時代から浅草寺深大寺などとともに多くの人々が参詣と行楽を兼ねて訪れた名刹だけに、これまでのお寺に比べても賑わいが断然違い、露店も出ている。不動明王を安置する本堂のほか阿弥陀堂地蔵堂など諸堂が並ぶが、七福神で最後にお参りする恵比寿様は、門前の池畔に祀られている。ふつう七福神のエビス様は恵比須と書くが、ここでは恵比寿のようだ。



(恵比寿様)

(寒くて水が凍っている)

(お寺の名前の由来となった湧水の滝と水かけ不動明王

(台地上の不動堂)

修験道の始祖・役行者像)

七福神が全員集まりました)

 高低差の大きな境内を散策し、江戸時代の庶民の楽しみを共有した気分で、お寺を後にして、本日拝観無料だった五百羅漢寺にも寄って、目黒駅まで歩いて戻った。