母娘(仮)

 昨年12月25日に横浜のズーラシアから多摩動物公園に引っ越してきたオランウータンのバレンタインとチェリアの母娘。
 バレンタインは名前の通り1986年2月14日に英国の動物園で生まれ、日本にやってきたが、一貫して人間に育てられたため、子育てができず、これまでに2度出産を経験しているものの、赤ちゃんはいずれも人工哺育だった。
 そこで子育て経験豊富なママたちがいる多摩動物公園にやってきて、バレンタインはオランウータンの子育ての仕方を学ぶ一方、2014年11月19日生まれで2歳になる娘のチェリアも代理母と生活をすることでオランウータンとしての生き方を身につけることになったのだった。育児放棄されたオランウータンを代理母に預ける試みは日本では初めてだが、欧米の動物園では近年、かなり行われているそうだ。
 チェリアの代理母になったのは51歳のジュリー。1981年に一度だけ男の子を出産した経験がある高齢オランウータンだ。今年36歳になるひとり息子は今、北海道の旭山動物園にいるジャック。
 飼育員さんがチェリアと対面させた時、ジュリーは「わぁ、かわいい! 抱っこさせて!」というような反応を見せたらしく、そのまま代理母となり、本当の母親のようにチェリアの面倒を見ているようだ。ジュリーはもともと子ども好きなのだ。
 そのジュリーがチェリアを抱いて放飼場に出ていた。

 色白の美少女だね。でも、かなり大柄で、大きさはリキとほとんど変わらない。

 これまで人間の手で育てられ、オランウータンに抱かれた経験がほとんどないチェリアは今どんな気持ちなのだろう。

 ジュリーも思わぬ形で新しい娘ができて、幸せそうに見える。



 しかし、ここに複雑な心境の子がひとり…。
 ジュリー&チェリアはジュリーの母親のジプシー(62)、さらにキキ(16)&リキ(4)母子と一緒に出ているが、ジプシーは少し離れて見守る感じ。キキは我関せずで遊んだり食べたり。ところがリキはチェリアに興味津々である一方、今まで良き遊び相手になってくれていたジュリーがチェリアにかかりきりで、まったく遊んでくれず、面白くないらしいのだ。
 ということで、リキはジュリー&チェリアに付きまとい、やたらとチョッカイを出している。




 あまりにしつこいので、ジュリーに怒られる。


 でも、懲りずにチョッカイを出し続ける。



どこまでも付きまとう。

 で、怒られる。

リキがチェリアと遊べる日はいつになるだろう。
 チェリアはまだ2歳。これからオランウータンの群れの中で暮らして、いろいろな経験をしていけば、オランウータンらしいオランウータンに成長していくチャンスは十分にあるだろう。

 むしろ心配なのは実母のバレンタイン。ほかのオランウータンとほとんど接したことのない30歳。ということで、今のところ単独で出ている。しかも、地面に降りられず、ずっと高いところにいる。なので、芝生の運動場には出られず、今のところ、室内展示のみ。

 同世代のボルネオくんはバレンタインに一目ぼれらしい(?)。隣の運動場から室内のバレンタインを覗き込んでいる。

 ボルネオ、31歳。