12月7〜8日、東京都檜原村にある都民の森で開催された自然観察会「ふたご座流星群とテン・タヌキの観察」に参加してきた。
都民の森でのイベントは今年5月にも行ったし、過去に何度も参加しているが、冬のイベントは初めて。標高1,000メートルを超える場所にあるので防寒態勢を厳重にして行ってきた。
電車とバスを乗り継いで檜原村、南秋川沿いの最奥の集落、数馬に10時前に着き、この先の路線バスは12月1日から冬期運休中なので、無料の送迎バスに乗り、10時15分頃、都民の森に到着。
5月だとバスを降りた途端にミソサザイやオオルリの声が聞こえてきて、一気に気分が盛り上がるのだが、今はカラ類の声がわずかにするばかり。輝くような新緑の季節にくらべると、すでに針葉樹以外はすっかり葉を落として、彩りも乏しい。
都民の森のシンボルツリー、トチの巨樹もすべての葉を落とした。
急な坂道と階段を上り、森の拠点施設「森林館」に着く直前にツツジの植え込みの中に何やら野鳥がいる。茶色っぽい小鳥でホオジロかなと思ったのだが、あとで聞くと、どうやらカヤクグリのようだった。さらにもう一羽、これはもう間違いない。鮮やかなブルーのルリビタキ♂。いきなりのシャッターチャンスと思ったが、まともな写真は撮れず。
(そこにルリビタキがいるということが分かるだけの写真)
たぶんこのあたりに居ついているのだろうし、またチャンスはあるだろうと、とりあえず森林館の研修室で受付。
春は天気が悪くて参加者が非常に少なかったのだが、今日は多い。老若男女40人以上はいそうだ。申し込みの時点では話題のアイソン彗星が健在で、ここからならバッチリ観測できそうだったことも大きかったかもしれない。
ボランティアのスタッフに顔なじみがいるほか、参加者の中にもなんとなく見たことのある顔が…。小学生の男の子。向こうもこちらを見ている。
「春にもここで会ったよね?」
「あ〜、おぼえてる!」
小学2年生の彼は5月のイベントにも父親と参加していたのだった。そのお父さんとも7か月ぶりの再会の挨拶。ほかにも子ども(特に女の子)がたくさんいるが、こういうイベントに参加する子はみんないい子ばかりだ。
さて、10時半から始まったイベントは午前中、富士山麓を拠点とする動物写真家・中川雄三さんによるレクチャー。写真や動画を見せながら、動物や野鳥の生態から自然と人間の関係など文明論的な話まで。日本列島は世界的に見てもアフリカやアマゾンと同じぐらい動物や鳥の種類が豊富な地域なのだそうだ。
(お昼の気温が1.5℃。寒い!)
森林館にやってきたコガラとヤマガラ。
都民の森上空は昼夜を問わず頻繁に飛行機が通る。
昼食後、13時から中川さんや都民の森の名物ガイドで野鳥の声マネ達人・浦野守雄さんの案内で野外観察へ。標高1000〜1500メートルに広がる広大な都民の森の中を歩きながら、自然観察。
季節を勘違いしたらしいミソサザイが一羽、森林館周辺で盛んにさえずっている。
そのミソサザイの古巣。
スズメバチの古巣。どこかに潜りこんで越冬中の女王蜂のほかはすでに死滅してしまったはずとのこと。
スズメバチではないけれど、コース沿いに蜂の巣があり、この夏は1日に何人もの登山客が刺されたこともあったそうだ。
リスかモモンガの巣。けっこうあちこちにある。森林館の建物を含め、コウモリやヤマネもあちこちで冬眠しているらしい。
ツルリンドウの実。
シカに食べられたカエデの苗木。
これもシカの食痕。樹皮がはがされている。
シカの足跡。至るところで登山道を横切っている。
シカだけでなく、カモシカ、イノシシ、ツキノワグマなども通るらしい。
シカの角研ぎの痕。
イノシシが体に付着した泥をなすりつけた痕。子どもらしい。
テンやフクロウの糞も数か所で見つけた。
けっこう険しい道もあり、途中、急斜面に架けられた木道はだいぶ老朽化が進んでいるが、なかなか予算が下りないらしく、このままでは通行不能になりかねない場所も。アスレチックコースのあるスポーツ歩道も老朽化でずっと閉鎖のままだ。
展望台でちょっと休憩。
ちょっと雲が出てきた。
多摩川の支流・秋川のそのまた支流の南秋川の最上流、三頭沢に下り、あとは沢沿いに下ると、都民の森で最大の観光スポット、三頭大滝(落差33m)。
あとはウッドチップを敷き詰めた歩きやすい遊歩道を戻るだけ。夏鳥シーズンならオオルリなどたくさんの野鳥の声を楽しめる道だが、今日はヒガラぐらい。ほかにウソが横切ったが、一瞬でほとんど観察できず。
ケヤキの大木にはいくつもの穴が。もともとアオゲラなどが開けた穴をムササビやモモンガなどが利用。いまもたぶんムササビが中で寝ているはず。
標高1078メートルの展望台から都心方面の眺め。
15時50分に森林館に戻り、16時からは天体観測ボランティアの方のレクチャー。彗星や流星群の話を中心に。
アイソン彗星は崩壊してしまったが、ラブジョイ彗星というのが明日の明け方に見えるかもしれないとのこと。
三大流星群のひとつ、ふたご座流星群のピークは実は来週らしい。ちなみに流れ星の光る時間は平均0.2秒だという。願い事をするのも大変だ。
森林館も夕方には閉館になり、奥多摩周遊道路も夜間閉鎖なので、普通なら都民の森一帯は夜は無人境となるが、今日は宿泊イベントなので、レストランも我々のために営業してくれている(ラストオーダー17時半)。とんかつ定食を食べる。
(すっかり暗くなった都民の森)
夕食後はそのまま夜間の動物観察へ。
森林館の南側の斜面にパンくずを撒いておき、それを目当てに出てくる夜行性動物を室内から観察するわけだ。
ところが動物が出てくるはずの斜面下の通路に軽トラックがやってきた。何事かと思ったら、大滝方面へ遊歩道を走っていき、しばらくして、荷台に神妙な顔つきの若い登山客3名を乗せて戻ってきた。真っ暗になった山の中で道に迷ったのだろう。ペコペコと頭を下げていた。まぁ、遭難しなくてよかった。
さて、改めて動物観察。と思ったら、またしても意外な邪魔者が…。黒猫。
少し前から目撃情報があったらしいが、誰かが捨てていったらしい。なかには餌と一緒に犬を捨てていく人もいるらしい。困った奴がいるもんだ。
とにかく、そこに猫がいる限り、他の動物は警戒して出てこない。ということで、中川さんと浦野さんが何度となく追い払うが、猫は一度姿を消しても、また戻ってきたりする。
おかげで普段ならすぐに出てくるはずの動物たちもなかなか出てこなかった。大人はいいが、小さな子どもたちはきっと今朝も早起きしてきたのだろうし、眠気との戦いのような状況になってきた。実は僕もすでにかなり眠い。
もうひとつの楽しみである天体観察があるが、こちらは当然屋外のテラスでのものなので、猛烈に寒い。すでに氷点下に下がっているはずだ。流れ星を見るには30分は空を見上げている必要があるというが、そんな気力もない。
ようやく20時25分にテンが登場。しかし、猫の臭いが残っているせいか、すぐに行ってしまう。顔が白い冬毛のテンを自然界で見るのは初めてだ。
20時50分にもう少し小さいテンがやってきたが、これもすぐ立ち去る。さらに同一個体が21時16分、21時30分、21時35分にもやってきて、最後はようやく木に登ったりして、しばらく滞在してくれた。
子どもたちも大喜び。小学生がベテルギウスが超新星爆発などと言っているから、天体望遠鏡でベテルギウスやオリオン座の大星雲でも見せてもらったのだろう。
外はいつしか満天の星空だ。それでも都心方面の空はぼーっと明るい(下の写真ほどではないけど)。まだ飛行機も通る。やっぱり東京の夜空ではあるのだ。
(東の空にオリオン座。22:00)
(木星)
天体望遠鏡で木星の縞模様や周囲を回る衛星を確認したりして、僕もそろそろ寝ようか、と思ったところで、タヌキが出てきたという情報。再び研修室に戻る。
22時20分から53分まで30分以上も楽しませてくれた。
これで満足して、持参の寝袋に潜り込む。
この後、23時35分にハクビシンが出てきたそうだが、そこまで見たのはほんの数人だったようだ。