先週末、檜原村の都民の森で自然観察会に参加してきた話の続き。
午後、森林館から三頭大滝まで野鳥の観察などをしながら、ゆっくりと散策して森林館に戻ったところから。イベントはここからが本番といってよい。
早めの夕食も済ませ、野鳥の声など聞きながらテラスで夕暮れのひとときを豊かな気分で過ごしていると、日没からまもない18時40分ぐらいに山の方からコウモリが飛んできて、頭上を通過していった。ヒナコウモリだ。森林館にも巣箱があり、そこから出ていくのを観察する予定だったが、それより早く、山中の樹洞か建物の隙間か、とにかく巣からヒナコウモリたちが次々と飛び出してきたのだった。これから下の駐車場や奥多摩周遊道路周辺の灯火に集まる虫などを捕食するために出撃だ。
(コウモリが巣から飛び出してくるのを観察中)
コウモリが出す超音波を人間の耳でも聞こえるように周波数を低くする機器(バットディテクター)がコウモリの出す音をとらえ、その動きが探知できる。
しかし、写真で撮影するのは難しいので、動画にしてみた。何かが頭上を飛んでいくのが分かる程度だが、バットディテクターがキャッチした音も聞くことができる。
およそ10頭ほどのヒナコウモリが頭上を飛んでいくのを観察し、同じころにさえずり始めたマミジロの「キョロン、チー」という澄んだ声に聞きほれている間にもう研修室の裏手の斜面にハクビシンが出てきたようだ。
さっそく研修室に移動。時刻は19時。
いた、いた。ハクビシン。ゆっくりとした動きで餌を探しているのか、ニオイ付けをしているのか。
さらに5分ほどしてテンが出てきたが、ハクビシンがいるため、警戒しており、すぐに姿を消した。顔が真っ黒になった夏毛のテンだった。顔が白い冬毛のテンは里にも姿を見せるので、遭遇のチャンスは比較的多いようだが、夏毛のテンを見るのは極めて難しいのだそうだ。ただ、敏捷で写真はほとんど撮れず。
動画で撮ってみた(いろいろな話し声が入っているので、BGMをつけています)。
テンやハクビシンが姿を消して、19時32分にはタヌキが出てきた。額が白い珍しい個体。
さて、動物観察の一方で星空観察もあるわけだが、いつのまにか空が曇ってしまった。夕方には見えていた月も雲の隙間から顔をのぞかせたり、隠れたり。
西の稜線付近がわずかに晴れていて、光っているのはカペラだそうだ。
その後もハクビシンが2頭別々に姿を見せ、相変わらずゆっくりと動き回っていたが、突然、ものすごい勢いで逃げたと思ったら、またタヌキが出てきた。
これで力関係はタヌキ、ハクビシン、テンの順となっていることが分かる。
白い鼻筋が特徴のハクビシン。
その後もまたハクビシンが出たり、タヌキが2頭で出てきて、そこへもう1頭がやってきて、2対1で喧嘩になったり。
タヌキは計3頭出たが、みんなふっくらして、まだ冬毛のままのようだ。
今回はテンが1頭だけで、個体数も登場回数も少ない印象。
そうこうするうちに先ほどまで夜空を覆っていた雲が次第に切れて、星空が広がってきた。それでテラスでまた上空を見上げる。思ったほど寒くはない。一応、東京の空なので、旅客機が頻繁に通る。
北斗七星。
21時頃から山の中でトラツグミが鳴きだした。昔、鵺(ヌエ)として恐れられた怪獣の正体である。まるで闇の奥で誰かが口笛を吹いているような神秘的な声。確かに知らなければ、いったい何者だろうか、と不思議な気分にさせられ、いろいろな想像をさせられる声だ。ただ、僕がトラツグミの声を聞くたびに、深夜の公園でブランコがひとりでに揺れて、金属がきしむような音をイメージするのとは少し違って、もっと柔らかい声だ。
トラツグミはこの後、明け方までずっと鳴き続けた。また、フクロウも鳴いていたらしいのだが、僕は聞き逃した。
夜も更けて東の空に木星が昇ってきた。都心方面の空が明るいが、これはカメラのマジックで、実際にこんなに明るいわけではない。
西の稜線に沈む月。
天体望遠鏡で遠い遠い銀河M51を見たり(よく分からなかった)、ナントカ星団だか星雲だかを見たり、肉眼で「うしかい座」の1等星アークトゥルスや「おとめ座」のスピカ、北東の稜線から昇ってきた「こと座」のベガなどを見上げたりして22時過ぎまで星空を観察していたけれど、昨夜は睡眠不足気味なので、持参の寝袋に潜り込み、しばらく仮眠。都民の森には宿泊施設がないので、参加者は各自寝袋持参なのだ。
相変わらずトラツグミが鳴いている。
(つづく)