また行ったのか、と言われそうだが、また行ってきた。といっても、2年ぶりである。
東京都の檜原村にある檜原都民の森で開催される自然教室「野鳥の声と哺乳類・星座観察」。5月11日(土)~12日(日)の一泊二日。
土曜日の5時半過ぎに家を出て、電車を乗り継ぎ、武蔵五日市駅まで行き、そこから8時10分発の都民の森行き急行バスに乗車。行楽シーズンでバス乗り場には登山者やハイキング客の長い行列ができて、バスは4台運行だった。
五日市の街を抜け、あきる野市の十里木を過ぎたあたりで、人家の門柱に猿が座っていた。あまりにも意外な場所にいたので、えっ?!と思ったが、野生だろう。
まもなく檜原村に入る。自転車で何度も走っているおなじみの道である。都民の森へ初めて行った時も世田谷の自宅から自転車だった。今日もたくさんのサイクリストが走っている。バスは何度も自転車を追い抜き、またツーリングのバイクに道を譲りながら走る。
車窓からピカピカの新緑の山を見上げているだけで心が弾むが、道中の集落もバスで一気に走り過ぎてしまうのはもったいないぐらい魅力的だ。藤があちこちで花房を垂らしている。
檜原村最奥の集落・数馬を過ぎ、奥多摩周遊道路の急坂をぐんぐん上って、五日市から1時間ほどで標高およそ1,000メートルの都民の森に到着。
バスを降りると、今日はまずヒガラの声が出迎えてくれた。山からはオオルリの声も聞こえてくる。まだ山桜が咲いている。
山での安全祈願。ひもを引っ張ると、キツツキがベルをつついて音が鳴る仕組み。
都民の森のシンボルツリー、トチの巨樹。
いろいろな野鳥の声を耳にし、巨樹を見上げながら、急坂と階段を登り、ミツバツツジに彩られた拠点施設の森林館へ。最初に姿を目にした野鳥はヤマガラだった。
参加者は小学生から年配の人まで老若男女、30人余りだろうか。過去にこのイベントで会った人が何人もいて、久しぶりに再会の挨拶を交わす。
10時からおよそ24時間にわたるイベント開始。
午前中は研修室で動物写真家・中川雄三さんによる写真や動画を使いながらのレクチャー。すでに何度も聞いていて、基本的な部分は毎回、同じであるが、撮影されたばかりの貴重な映像もあって、やはり興味深かった。
木彫りの冬毛テン(中川氏作)
中川さんがいつも強調していることは日本が世界的に見てもアマゾンやボルネオと同じぐらい多様な生物が生息するホットスポットであるということ。日本でしか見られない生き物もたくさんいるのだ。そして、それは東京も同じ。東京都を奥多摩から小笠原まで含めて考えれば、こんな自然豊かな首都は世界でも稀だろう。現在、NHKが来年のオリンピックに向けて東京の自然の豊かさを世界に知らしめるべく、英国BBCの協力も得て、奥多摩、多摩川、都市公園の三つのテーマで番組を制作中であるという。NHKではこれまでにも奥多摩の自然を番組で取り上げているが、この「奥多摩」には奥多摩町だけでなく、隣接する檜原村の都民の森で撮影された映像が多く含まれており、中川さんや都民の森の名物ガイド・浦野守雄さんも取材に協力している。前日にも民放の某動物番組が取材に来ていたそうだ。
昼食をはさんで、午後は野外観察に出かける。
中川さんや浦野さんの案内で新緑の森を歩くのは本当に楽しい。
山芍薬。
まもなくオオルリがさえずっていたが、姿は見つけられず。
標高1,078メートルからの眺望。空気の澄んだ冬だと彼方に東京湾が見える。また、この大空をクマタカなどの猛禽が飛ぶこともあるという。
スギやヒノキ、マツ、モミ、ツガなどの針葉樹とさまざまな落葉広葉樹の交じった自然の森。キビタキやオオルリ、センダイムシクイ、ヒガラ、ミソサザイ、ヤブサメなどがさえずり、ノスリの声も聞こえた。ただ、なかなかみんなの見える場所に出てきてくれない。
また奥多摩周遊道路を走るバイクの音が朝から晩まで聞こえるのも都民の森で、死亡事故多発地帯でもある。
(動画)キビタキのさえずり。背後でセンダイムシクイも鳴いている。そしてバイクの音。
しっぽのないニホントカゲが出てきた。
リスかモモンガの巣。こういうのは教えられなければ、気づかない。
都民の森の名所「三頭大滝」までやってきた。標高1,500メートル余りの三頭山の沢の水が落差30メートルほどの滝となっている。
滝を見るための吊り橋。
少し雲が出てきたと思ったら、雨がぽつぽつと落ちてきたが、大したことはなかった。しかし、夜の星空観察が心配だ。
ここでようやくオオルリの姿が見えた。
向きを変えた。
ちょっと飛んで、別の枝に移動。
オオルリ観察中。
大滝の上流側の三頭沢。そばの水たまりでアズマヒキガエルのもうすぐオタマジャクシになって泳ぎだしそうな幼生を観察。沢にはサンショウウオも棲息し、観察会も行われる。
いつもはここからさらに沢沿いに登っていくことが多いのだが、今日はここで引き返す。帰路にキビタキの姿を確認。また、キクイタダキもいた。ほかにアオゲラなどの声も聞く。
ゆっくり歩いても片道20分ほどの三頭大滝まで往復してきただけで森林館に戻った時にはもう15時45分。3時間近くもかけたことになる。なんて贅沢な時間の使い方だろうか。
森林館周辺でもあちこちでオオルリがさえずっている。オオルリは木のてっぺんや枝先など目立つ場所でさえずることが多いので、見つけやすい。でも遠い。
しばらく休憩してから、研修室で星空観察のボランティア、ナミキさんの宇宙や星座、天体観察についてのレクチャー。何度聞いても、宇宙の話というのは気が遠くなるような話ばかりだ。
その後、夕食。もう都民の森の閉園時間を過ぎているが、延長営業のレストランで食べる。
それから食後にひとりでちょっとだけ散歩。カッコウの仲間で「ジュウイチ、ジュウイチ」と鳴くジュウイチの声が聞こえた。都民の森では今年初確認ということだった。
またオオルリ。
一般のお客さんがいなくなって、静かになった都民の森。
これから夜行性動物の観察だが、その話はまた明日。
(つづく)