小湊鉄道の旅’19(その1)

 夏になると千葉県のローカル線、小湊鉄道に乗りたくなる。時代が令和になっても昭和の頃からほとんど変わらない文化財のような鉄道である。というわけで、僕は毎年のように小湊鉄道に乗っているわけだが、去年は乗っていないので、2年ぶりである。

 朝5時過ぎに家を出て、電車を乗り継ぎ、千葉県市原市内房線五井駅には7時半に着いた。ここが小湊鉄道の起点である。

 JRからの乗り換え口で駅弁を売っていた。地元のおばちゃんたちが作ったらしい素朴なお弁当で、いろいろな種類があったが、僕はあさり飯のお弁当を朝食用に買った。450円。さらに小湊鉄道の一日フリー乗車券1,800円も購入。ちなみに小湊鉄道ではIC乗車券は使えない。

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 階段を下って、小湊鉄道のプラットホームに降りると、一気にタイムスリップした気分になる。

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 この感じはもはや日本のほかのローカル線では味わえないものだ。

 7時41分に上総牛久からの列車が2両連結でやってきた。

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 これが折り返し7時54分発の上総牛久行きになるわけだが、切り離して1両だけになる。たった1両の列車でもワンマン運転ではなく、小湊鉄道では全列車に車掌さんが乗務している。

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(切り離し作業中)

 行先表示も昔ながらのスタイル。塗装が剥げている。

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 昭和30年代~40年代の車両なので、バリアフリーの面では問題が多いのも事実。冷房はあるが、車内はものすごく涼しいというわけでもない。

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 平成生まれのJR電車と昭和30年代~40年代生まれの小湊鉄道気動車。同じ五井駅でもJRのホームと小湊鉄道のホームではまるで空気感が違うのが不思議。

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  7時54分に発車。次の上総村上で列車の行き違い。

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 次の海士有木(あまありき)駅には8時03分着。ここで下車。僕は小湊鉄道に乗ることも好きだが、小湊鉄道の沿線を歩くことも好きなのだ。

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 一駅ごとの佇まいも魅力的。

 ほとんどの駅に当たり前のように駅員がいて、貨物列車も運転され、各駅の貨物ホームで貨車への積み下ろしが行われていた時代の小湊鉄道に乗ってみたかった。

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 昔ながらの風景が残ってはいるが、多くの駅が無人化され、乗客も減り、往年の活気は着実に失われている。

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 次の列車まで40分。隣の上総三又駅まで歩いてみよう。

 朝からすさまじく暑いので、額から流れ落ちる汗をタオルで拭きつつ、日傘(晴雨兼用)をさして歩く。クマゼミが鳴いている。もちろん、ミンミンゼミやアブラゼミニイニイゼミツクツクボウシも鳴いている。草むらではキリギリスが鳴いている。

 小さな踏切。

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 線路に沿って道があるわけではないので、上総三又まで意外に距離があり、30分ほどかかってやっとたどり着いた。

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 単線の線路にホームを添えただけの簡素な駅。

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 まだ朝食をとっていないので、五井で買ったまま食べずに袋に入れて持ち歩いている駅弁をここで食べたかったのだが、もうすぐ列車が来てしまう。次の列車に乗ってから車内で食べることしよう。

 踏切が鳴り出し、遠くから列車が近づいてきた。

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 旅はまだ始まったばかり。

 つづく。