小湊鉄道の旅2022(その3)

 昨日梅雨入りした東京は今朝は青空だったが、すぐに曇って、弱い雨も降る。しばらくはこんな天気が続くようだ。

 さて、6月4日に小湊鉄道沿線を旅してきた話の続き。里見駅から飯給駅まで歩いて、10時48分発の五井行きに乗ったところから。

 先刻、上総川間から里見まで乗車したのと同じキハ214とキハ201の2両編成で、もちろん乗務員も同じ人。女性の車掌さんで、「次は○○でございます」というアナウンスが耳に残る。キハ40は日英中韓の4か国語の自動放送だったが、キハ200は車掌の放送のみである。こちらのほうが味わい深い。

 30分以上かけて歩いた区間を4分ほどで戻り、里見に着くと、対向線路にSL風ディーゼル機関車が牽くトロッコ列車が待っていた。

 ここでタブレット(通票)の交換がある。通票とは通行手形のようなもので、ごく簡単に説明すれば、特定の区間(閉塞区間)に1つの通票しかなく、これを持たないと列車はその区間に入ることができない。そうすることで、単線区間での列車の衝突を防ぐ仕組みである。かつては全国のローカル線で見られたが、今どき、こんな古典的な方式を採用している鉄道は珍しい。それが小湊鉄道では上総牛久~上総中野間で採用されている。この区間では里見だけで列車の行き違いができるので、上総牛久~里見間と里見~上総中野間にそれぞれの通票があり、里見駅で交換が行われる。今の場合だと、駅員はトロッコ列車が持ってきた上総牛久~里見の通票を運転士から受け取り、上りホームであとからやってきた五井行き(この列車)の運転士に渡す。代わりに五井行きの運転士から里見~上総中野の通票を受け取って、トロッコ列車の運転士に渡す。なので、あとから到着した五井行きはすぐに発車できるが、トロッコの方は駅員が通票を持って戻ってくるまで出発できないわけである。その分、停車時間が長くなり、その間に下りホームでの物販コーナーが繁盛するという仕掛け(?)である。とにかく、このようなタブレット交換を見られることは大変貴重なことである。伝統芸能のように無形文化財に指定してもよいのではないか、とすら思う。

 

 さて、列車はすぐに発車。養老川を高滝ダムでせき止めたダム湖を右に見ながら走り、高滝に停車。この駅もかつては行き違いか可能な駅だったが、今は旧下り線が廃止され、使われなくなった下りホームには紫陽花などが咲いている。

 大イチョウがシンボルの上総久保を過ぎ、上総鶴舞で下車。時刻は11時。

 上総久保~上総鶴舞間で前面展望撮影をしてみた。車掌さんの「次は上総鶴舞でございます」のアナウンスが聞ける。


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 1995年夏の自転車旅行でたまたま通りかかり、まるで時間が止まっているかのような趣のある駅の佇まいに惚れ込んで以来、何度も訪れているが、何度来ても良い駅だと思う。「関東の駅百選」にも認定されているし、ドラマやCMなどにもたびたび登場している。もちろん、大正14年建築の駅舎は登録有形文化財である。

 駅前からは茂原行きのバスがある。ただし、平日2本、土休日1本のみ。今日はもう最終バスが出た後だ。円形のバス停看板も最近はあまり見かけなくなった。

 駅の便所。これも開業時からのものだろうか。女性はこのドアを開けるのはちょっと躊躇するだろう。でも、ご安心を。別に新しく清潔なトイレが設置されている。

 この駅には駅舎内にアマガエルがたくさんいたという記憶があるが、探してみても今日は見当たらない。カエルだらけの駅がいいのか悪いのか、意見が分かれるところだろうが。

 ホームの植え込みで探してみたら、いた。

 ちびカマキリ。

 これはキリギリスか?

 ショウリョウバッタ

 ここで里見駅で買ったおにぎりを食べる。

 ひとつ食べ終えたところで、ケンケンとキジが鳴いた。すぐそばだ。探してみると、線路際の草むらにいたので、海苔がこびりついた指でシャッターを押す。

 撮影失敗。

 ほかにオオヨシキリも「ギョギョシ、ギョギョシ」とさえずっている。今年初めて耳にした。あとはウグイスなど。コサギが5羽、上空を飛んでいった。

 この駅のベンチで一日中座っていてもいいな、と思う。

 近くにある光明寺の鐘が鳴りだした。まだ正午には少し間があるので、どういうタイミングで鳴らしているのかは分からない。動画にしてみた。
 ちなみに次の列車は11時55分発の上総中野行きである。


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 50分ほどの滞在で上総鶴舞駅を堪能し、再び上総中野行きに乗車。本当に同じ区間を行ったり来たりだ。今度はキハ211と210のコンビ。

 3度目の里見駅でまたトロッコ列車と行き違い。トロッコの終点の養老渓谷駅では機関車の付け替えができないので、帰りは機関車が最後尾のバック運転である。

 前回はトロッコ列車は上総牛久~養老渓谷間の運転だったが、いつの間にか五井発着に改められていて、平日1往復、休日2往復。五井~養老渓谷間を普通の列車は1時間10分ほどで走るが、トロッコは2時間前後かけてゆっくり走る。一度だけ乗ったが、車内を吹き抜ける風が心地よかった。

 里見をあとにさらに奥地へ。トロッコでなくても、窓から吹き込む風は心地よい。今はコロナ対策で換気のために都会の電車でも窓を少し開けているが、それとは全然違った気持ちよさ。昔の汽車旅を思い出す。

 扇風機の風も気持ちいい。

 さて、今度はどこで降りようか。一応、終点まで行くつもりではあるが、終点に用事があるわけでもない。また途中で気が変わって降りてしまうかもしれない。

 続きはまた明日。