小湊鉄道の旅2022(その5)

 小湊鉄道の旅の話の続き。たぶん最終回。

 養老渓谷13時45分発の五井行きに乗車。キハ40の2両編成。

 キハ200はロングシートだが、キハ40はボックスシートなので、進行方向を向いて、窓から吹き込む初夏の風を感じながら列車に揺られていると、昔の旅の記憶が蘇ってくる。

 しかし、窓辺を肘掛がわりにしていると、肘に線路際の草や木の枝が当たるので、ちょっと危険。

 飯給駅付近から里見駅まで車窓を動画撮影してみた。風切り音のノイズがちょっとうるさいが、実際は本当に心地よい。切通し部分で北に傾いた地層も確認できる。


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 上総久保。

 上総鶴舞、上総牛久も過ぎて、馬立でトロッコ列車と行き違い。五井から上総牛久まではタブレット交換もなく、こちらの列車が到着すると、トロッコはすぐに発車していった。

 登録有形文化財馬立駅舎。

 そして、次の光風台で下車。14時32分着。

 光風台は昭和51年に開業した、100年近い歴史を持つ小湊鉄道では最も新しい駅で、1面2線の島式ホームと駅舎は跨線橋で結ばれている。小湊鉄道跨線橋があるのは五井とここだけである。要するにこの路線で一番味気ない駅だが、考えてみれば、この駅だけ乗降したことがないのだった。ということで、光風台で下車し、隣の上総山田まで歩くことにする。これで小湊鉄道の全18駅、すべてで乗るか降りるかしたことになる。何の自慢にもならないけれど。

 光風台と上総山田の間で列車は養老川を渡るが、その鉄橋のそばにポプラ並木があるのが前から気になっていて、ちょっと行ってみようと思ったわけである。

 しかし、勘を頼りに歩いていたら最初から道を誤り、養老川に出ずに山の中へ入ってしまった。

 完全に道に迷っているわけだが、ここでスマホで現在位置を確認するようなことはしない。太陽の位置から大体の方角を割り出し、あくまでも勘を頼りに目的地をめざす。

帰宅後に地図帳を広げて、自分がどこでどう道を誤ったのかを確認する作業が楽しいのだ。

 ホトトギスの鳴く丘陵地帯で、キビタキの声も耳にし、路傍の石仏やホタルブクロの花に目を留めたりしながら歩き、どうやら上総山田方面に通じていそうな道が見つかった。

 急カーブの連続する坂道を下り、安須という集落を抜けると田園風景が広がり、養老川を渡る。遠くにポプラの列が見えるが、鉄道の鉄橋は見えない。オオヨシキリが賑やかにさえずっている。

 やがて、国道にぶつかり、そこに「上総山田駅入口」の標識を見つけ、ひと安心。15時20分頃、駅に着いた。

 この駅舎も文化財登録されている。

 駅舎内にはツバメの巣があり、屋根の下にはスズメが巣を作っている。また、駅には誰が世話をしているのか、猫も暮らしているようだ。

 次の列車は15時51分発。

 貨物側線にはレール運搬車が留置してある。

 羽田を離陸したらしい飛行機が次々と通る。

 まもなく近くの踏切の警報機が鳴りだし、まずは15時50分発の上総中野行きがやってきた。先ほど、光風台で降りた列車の折り返しである。

 少し遅れて五井行きがやってきた。

 今日3度目の乗車となるキハ214と201のコンビは車両故障があったとかで数分遅れていた。先ほど飯給~里見間で撮影した動画をあとで見直したら、里見駅でこの列車と行き違った時にキハ201の床下を乗務員が覗き込んでいるのが映っていた。最長老の201に何かトラブルがあったらしい。

 キハ214の運転台に成田山のお守り。

      

 禁煙区間が五井~上総牛久となっているが、もちろん今は全区間が禁煙である。思えば、昔は大都市の電車以外は喫煙可が当たり前だったし、電車の窓の下には吸い殻入れが備わっていたものだ。東海道新幹線に初めて禁煙車が導入された時も16両編成のうち先頭の1号車だけが禁煙だった。昭和というのはそんな時代でもあったのだ。

 五井到着は定刻だと16時05分だが、それより少し遅れたようだ。

 五井駅の風景。車庫の建物も文化財である。

 今回の小湊鉄道の旅はこれでおしまい。