HATFIELD & THE NORTH/Hatfield & The North (1973)

Hatfield & The North

Hatfield & The North

 英国のカンタベリージャズロックを代表するバンド、ハットフィールド&ザ・ノースを初めて聴いたのは高校生の時。いわゆるプログレ系としては、まずキャメルの音楽にはまって、2代目ベーシスト、リチャード・シンクレアの声に魅了され、彼がキャメル加入以前に在籍したキャラヴァンやハットフィールドも聴くようになったわけだが、最初からわかりやすかったキャラヴァンに比べて、このハットフィールドの1stは初めはなんだかさっぱり解からない、という印象だった。A・B面とも曲が切れ目なく繋がっていて、どこからどこまでがどの曲なのかも分からないし、アレンジも複雑で、すっかり迷宮に迷い込んだような気分にさせられた。でも、高校生の小遣いでは決して安くはない金額(といっても2,000円だったと思うけど)を出して買ってしまったので、とりあえず何度か聴いてみた。そうしたら、解かった。これは素晴らしい作品だ、ということが。そして、音楽の迷宮に迷い込むことこそが音楽を聴くことの魅力であり、快感なんだ、ということも。
 デイヴ・スチュワート(kb)、フィル・ミラー(g)、リチャード・シンクレア(b,vo)、ピップ・パイル(ds)の4人に、ロバート・ワイアット(vo)やフルート、サックス奏者がゲストに加わり、さらにここぞという時に天から舞い降りてくる天使のような歌声を聞かせてくれるアマンダ、バーバラ、アンの女の子3人組のコーラス隊ノーセッツ(イギリスのキャンディーズとは誰も呼ばない…)。彼らが生み出した音楽的遊び心に溢れた作品。今となっては、こんなにカッコよくて、美しくて、しかも、とぼけた作品をどうして難解に感じたのかと不思議に思ってしまう。
 彼らは2枚のアルバムを発表しただけで、1975年に解散。一般的には2nd“The Rotters’Club”の方がよりスッキリしているせいか、評価が高いが、僕はむしろ1stを聴くことが多い。ハットフィールドはその後、何度か再編され、2005年10月には来日も果たした。