バレンタインとミンピー

 今朝、窓の外からクマゼミの声が聞こえてくる。この夏初めて耳にした。
 クマゼミは本来、関東には生息しないセミだが、最近は東京でもさほど珍しくはなくなっている。
 さて、今日の写真も多摩動物公園のオランウータン。
 現在、日本の動物園では33頭のボルネオオランウータンが飼育されているが、そのうち3分の1にあたる11頭が多摩にいる。それぞれに個性があるが、一番の問題児はバレンタイン(31歳♀)だろう。
 バレンタインはイギリスの動物園で誕生し、人工哺育で育ったため、ほかのオランウータンと接したことがほとんどない。多摩の前は横浜のズーラシアにいたが、そこでもお客さんの前に出ることはほとんどなかったようだ。そこでオランウータンとしての社会生活を学ぶために娘のチェリア(2歳)と一緒に昨年12月に多摩にやってきたわけだ。
 母親の育児放棄で、やはり人工哺育だったチェリアは代理母のジュリーと一緒に生活し、ほかのオランウータンとも接する中で、見違えるほど逞しく成長しているが、バレンタインは多摩でもほとんど単独で暮らしている。
 せっかく多摩に来ても、バレンタインがほかのオランウータンと接することなくひとりで暮らしているのでは進歩がない。では、誰と同居させるか。白羽の矢が立ったのは、誰とでもうまくやっていけるミンピー(10歳♀)だったようだ。
 この日はまずミンピーがヤシの実を持って出てきた。




 あとから出てきたバレンタインは櫓までダッシュ。そのままてっぺんまで登ってしまった。バレンタインは地面に降りることも嫌いなのだ。

 櫓の上から見下ろしているバレン。ミンピーが持っているヤシの実が気になるようだ。

 ミンピーもバレンがヤシの実を欲しがっているのに気づいているのか、櫓の下段に移動。




 さらにミンピーはバレンに近づく。ここまでおいで、と言っているかのようだ。

 バレンも上から身を乗り出して見ている。

 来た。



 肝心なところを撮り損ねたのだが、バレンはミンピーが床に置いていたヤシの実を取ると、素早くまた櫓の上に登っていった。

 そして、ヤシの実にありつくことができたのだった。


 その後もミンピーは恐々とバレンに接近を試みる。なにしろ、バレンはメスとしてはかなり大柄なのだ。
 若い娘と巨漢のオバサン。
 結局、バレンが拒絶するように追い払い、ミンピーはまた地面まで降りてしまった。

 この先、バレンタインがミンピーに心を開く日が来るかどうか、成り行きに注目。