今年で結成50周年を迎えたフランスのMAGMAが4年ぶりに来日。東京で2公演、大阪で1公演の計3回のステージだ。今回のツアーは“50 ans apres”(50年後)というサブタイトルがついていて、そのうち東京の初日はAcoustic Versionと銘打たれている。
僕は来日情報を見逃していて、気がついた時にはチケットの発売開始からだいぶ日が経っており、初日だけは入手できたものの、2日目はソールドアウトになってしまった。というわけで、今回は初日しか行けない。
それにしても、まさかの初来日が1998年。あれからもう21年も経つのか。その後、数年おきに日本でライヴを行うようになったので、僕も何度も彼らの演奏を生で体感してきたわけだが、その間にメンバーの入れ替わりがあったり、その時々のコンセプトに基づいた選曲や演奏だったりで、それぞれに個別の体験として記憶に残っている。
そして、今回は1970年代から断続的にライヴで演奏されながら未完のままだった大作「Zess」がついに完成し、フルオーケストラを加えてスタジオレコーディングがなされ、この夏にCDが発売されたことを受けての来日公演である。
初日の会場は渋谷のスペイン坂上にあるライヴハウスWWW。オールスタンディングだ(つらいなぁ)。整理番号順で僕は最後のほうに入場したわりにはステージの近くにスペースを見つけて、なかなかいいポジションがとれた。
開演前の薄暗いステージ上には向かって左にグランドピアノ、右にヴィブラフォン。ほかにマイクスタンドが2本、あとはタンバリンなどが見える程度。ドラムセットはない。このアコースティック編成のライヴも貴重であるし、楽しみでもあるのだが、やはり明日のエレクトリック編成のライヴも観たかったなぁ、と思う。チケットを取り損ねたことがつくづく悔やまれる。
しばらくすると、マグマの中心人物Christian Vanderがステージに現れた。満員の客席から拍手が沸き起こり、「クリスチャーン!」の声が飛ぶ。Christianは指一本でピアノの一音を出して、客席に手をあげて応えると、また姿を消した。Christian、今年で71歳である。
さて、開演は19時。
まずChristian Vanderがピアノの前に座り、ソロで歌う。1曲目はOFFERINGの“Ügüma mà mëlìmëh gïngeh”。Christianは過去に日本でソロライヴを行っているが、その時の雰囲気に近い。
次の曲は聞いたことがあるような、ないような曲。彼の音楽の根底にはJohn Coltraneの音楽があるわけだが、その歌声はJohnの魂の咆哮を思わせ、客席が圧倒される。
やがてStella Vanderがステージに登場。彼女も今年12月で69歳になる。二人合わせて140歳! 曲はLe Ballet Des Sorcieres 。
そして、Stellaのソロ作からRonde de Nuit。この曲からIsabelle Feuilleboisが登場。Stellaの声にハーモニーを添える。
この後、ステージ脇にあったスタンドマイクが中央に置かれ、3本になり、Herve Akninが登場。彼だけ歌詞のカンペあり。
Stella、Isabelle、Herveの3人のヴォーカルとChristianのピアノで始まったのがZess。この曲を生で聴くのは初めてだ。感激! と思ったら、イントロだけで終わってしまった。
そして、ここでピアノがChristianから初来日の新ピアニスト、Jérôme Martineauに交代し、ヴィブラフォンのBenoit Alziary、新ギタリストのRudy Blasも登場。ギターはアコースティックだ。マグマの曲でアコースティックギターというのはあまり記憶がない。
それで始まったのがK.A。完全版ではなく、抜粋演奏。Christianはバックでタンバリンを叩きながら、歌っている。Stella もタンバリンを手にしているが、実は彼女はこの手のパーカッションに関しては達人的にうまい。もちろん、歌声も素晴らしい。
Magma Acoustique Chile 2017 (Parte 7)
さらにBenoitのヴィブラフォンがあのイントロを奏で始めると、大歓声。M.D.K.だ!
これは完全版で、会場も熱狂的に盛り上がった。終盤でChristianのソロヴォーカルがフィーチャーされ、まさにJohn Coltraneが乗り移ったようなパフォーマンスだった。
ドラムもベースもない演奏ながら、異様な盛り上がりで会場が一体になり、これで本編終了。
M.D.K.のアコースティックヴァージョンの動画があった。
Magma acústico Chile 2017 - Mëkanïk Dëstruktïẁ Kömmandöh
アンコールは熱狂を鎮めるようなEhn Deissだった。
Magma Acoustique Chile 2017 (Parte 10)
全体で2時間弱。いやぁ、すごかった。よかった。
Stellaが「明日また会いましょう」。周りの人はみんな行くんだろうなぁ。いいなぁ。
Setlist
1.Ügüma mà mëlìmëh gïngeh
2.Celui qui a Donne / Seul dans la Nuit / Le Temps Passe est Merveilleux /
Hymne a Wagner / Blues for Alice Coltrane
3.Le Ballet D es Sorcieres
4.Ronde de nuit
5.Zëss (introduction only)
6.K.A. I
7.Mekanïk destruktïw kommandöh
(encore)
8.Ehn deiss
翌日のセットリストは以下のようなものだったらしい。
Ëmëhntëhtt-ré
Theusz Hamtaahk / Wurdah Ïtah / Mekanïk destruktïw kommandöh
Encore:
De Futura
さらに大阪では1曲目がKöhntarköszに差し替えられたようだ。全部観た人もいるんだろうね。