江ノ島散策(1)

 コロナ禍の影響もあって、ずいぶん長く海を見ていないな、と思い、一番手近な海ということで江ノ島へ行ってきた。

 9時過ぎの電車で出かけ、成城学園前に着くと、すぐに江ノ島行きロマンスカーがあることが分かり、ホームで特急券を購入。片瀬江ノ島まで行ってもよかったのだが、今日は一つ手前の鵠沼海岸駅から散策を始めようと考えていたので、とりあえず藤沢まで。

 北千住発の「メトロはこね・メトロえのしま91号」。60000形MSE。いわゆる青いロマンスカーである。

 最初は空席が目立ったが、「はこね」との切り離し作業がある相模大野でかなり乗ってきて、座席はほぼ埋まった。家族連れが座席を回転させて向かい合わせにしたところで、「感染予防のため座席を向かい合わせにするのはお控えください」とのアナウンスがあり、また元に戻したりしている。

 快適な45分で藤沢に10時05分に着き、各駅停車に乗り換えて鵠沼海岸駅で下車。

 サーフボードを積んだ大型フック付き自転車とすれ違ったりして、いかにも海が近い町らしい雰囲気。でも、ひどく錆びついた自転車を目にすると、海辺の暮らしというのはなんでもすぐに錆びてしまって大変なんだろう、とも思う。真っ黒に日焼けした人も多い。

 巣立ったばかりのツバメの子どもたちが電線で賑やかな住宅地を抜け、海岸に出た。もう少し晴れるかと思っていたが、案外雲が多く、海も青くはない。海の向こうに見える箱根の山々は頂に雲が湧き、それがまるで噴煙のようだ。富士山は裾野だけが見えている。

 まずは片瀬海岸のほうへ歩くが、やはり人が多い。海の家の建設も始まっている。のんびりと海を眺める気分でもない。日曜日なので、静かな浜辺など期待できないのは最初から分かっていたことではあるが、「意外に人が少ないね」なんて言っている人もいた。

 賑わっている水族館の前(裏?)を通り、片瀬漁港までやってきた。

 防波堤灯台。釣り人が多い。海パン一丁で寝そべっている人も多いが、膝を抱えて全裸で座っているオッサンもいた。ここでは許されるのか?

 漁港では何やらイベントをやっていて、屋台がたくさん出ている。トンビもたくさん集まっている。

 ここで何か買って食べるのはかなり危険。

 この後、観光客に交じって江ノ島に渡り、湘南港方面へ。ここに来ると、必ずイソヒヨドリを見かけるので、今日も期待していたら、それより先にクロサギ発見。その向こうに群生しているのはカメノテか。

 クロサギを見るのは久しぶりだ。青森県深浦町長崎県対馬で見た記憶はあるが、江ノ島では初めてか。

 足の裏は鮮やかなオレンジ。

 湘南港灯台の周辺も釣り人だらけで、ゆっくり海を眺める感じでもない。半裸で寝そべっている人も多い。

 堤防上には帯状に石を敷き詰めたような足つぼロードがあり、僕は歩かなかったが、靴を脱いで歩いているおじさんの動きと表情が面白かった。相当痛そうだった。

 やはりイソヒヨドリ発見。まぁ、ここでは探さなくても、いつもいる。

 イソヒヨ♀。

 これは幼鳥かな。

 江ノ島の崖。

 江ノ島の主要部分を構成するのは地質的には葉山層群と呼ばれる新生代第三紀中新世の地層である。1650万年前~1200万年前に海底で堆積した砂岩、泥岩、礫岩などからなり、三浦半島中部を横断するように二列の地層が存在し、それが江ノ島にも続いているようだ。江ノ島で見られるのは層の厚さが3500メートル以上もあるという葉山層群のうちの大山層で、約1500万年前に堆積した火山灰を含む凝灰質砂岩である。

 1500万年前といえば、大陸の一部だった日本列島が日本海の形成と同時に大陸から離れ、現在の位置まで移動してきた頃であり、またフィリピン海プレートの北上により、伊豆の火山島や海底火山の衝突が始まった時期でもある。葉山層群は南のフィリピン海プレート上で丹沢山地伊豆半島を生み出した火山のそばで堆積し、それが北上してきて日本列島に付加したものなのだろう。大陸プレートの下に沈み込めずにフィリピン海プレートから引き剥がされて列島に付加したわけだから、当然、凄まじい地殻変動を受けているはずで、傾いたり、歪んだり、割れたりした、著しい変形の結果が現在の姿である。しかも、それが隆起したり、また沈降したり、波で削られたりして、断崖絶壁に囲まれた江ノ島になっているのだ。もちろん、いまの江ノ島が最終的な完成形というわけではなく、これからもその姿はどんどん変わっていくのである。

 葉山層群の上部には関東ローム層が見え、白い軽石層が帯状に挟まっているのも確認できる。江ノ島が隆起した後、箱根や富士の火山灰や軽石が堆積したわけだ。

 しかし、1500万年前の地層の上に数万年前のローム層がのっているとなると、その間の地層はどこへ行ってしまったのだろう。荒波で削り取られてしまったということだろうか。島の周辺にも平坦な岩場が広がっている。

 崖の上のトビ。

 崖に咲く百合。

 吸水中のアオスジアゲハ。

 正午も過ぎたが、観光客を手ぐすね引いて待ち構えているような店にはあまり入りたくないので、昔ながらの食堂で昼食。かつ丼を食べる。美味しかった。

 つづく