処理水の海洋放出はじまる

 東京電力福島第一原発放射能で汚染された水が大量に溜まり続けている問題で、60種類以上ともいう放射性物質を安全面では無視できる程度にまで除去し、どうしても除去できないトリチウム半減期は約12年)は海水で基準以下のレベルまで薄めた「処理水」の海洋放出が今日から始まる。

 東日本大震災メルトダウンを起こした原子炉の地下に流れ込む大量の水(冷却水、地下水、雨水)が放射能で汚染され、溜まり続ける問題に対して、さまざまな対策が考えられたが、結局はタンクの増設を重ねて溜め込む以外に方策が見つからなかったようで、それも限界に達していた。要するに、汚染水問題に関してはお手上げ状態で、政府も東電も限界ギリギリまで追い込まれて、海洋放出以外に選択肢がなくなったということなのだろう。汚染水はこれからも発生し続けるし、処理水の放出も最低でも30年は続くという。

 そもそも汚染水の発生源である溶け落ちた核燃料の除去は事故から12年経ってもほとんど手つかずの状態であり、未来の技術と人材に頼らざるを得ないというのが現状なのだ。

 核燃料に直接触れた水を浄化装置で安全なレベルにまで処理したとはいえ、海洋に放出するというのは世界でも日本だけであり、処理水は安全だとしても威張ることでも自慢することでもない。それに「安全」といっても、それは原発事故直後にたびたび耳にした「ただちに健康に影響が出ることはない」という意味だろうから、長期的な環境への影響については確かなことは言えないのではないか。

 また、処理水を放出しなくても、地球全体の海洋はすでにマイクロプラスチックなどさまざまな物質で1万メートルを超える深海まで汚染されているのが現状で、海で暮らす生き物の体内にも汚染物質が蓄積されているのである。

 北海道の知床半島で降った雪からもマイクロプラスチックが検出されたというから、きっとこの空にも汚染物質は漂っているのだ。

 今宵の月。

(きょうの1曲)Peter Hammill / Porton Down


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