銚子電鉄で犬吠埼へ

 8月4日に「青春18きっぷ」を利用して千葉県方面に出かけた話の続き。鹿島線に寄り道して茨城県鹿島神宮に参拝して、駅に戻ったところから。

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 鹿島神宮9時44分発の佐原行きに乗り、佐原の一つ手前の香取で下車。ここが成田線銚子方面との接続駅である。

 香取駅鹿島神宮と並ぶ古社、香取神宮の最寄り駅である。香取神宮は日本建国=天孫降臨の前に高天原から鹿島の祭神・武甕槌(タケミカヅチ)とともに出雲に降って、大国主神大己貴命オオナムチ)に「国譲り」を迫った経津主(フツヌシ)を祀る神社で、初代・神武天皇の時代に創建されたと伝わり、皇室からも深く崇敬されている。鹿島神宮と同じく「要石」があるそうだが、社殿は南向きらしい。下総国一ノ宮である。こちらにも参拝してみたかったが、駅から徒歩30分と書いてあり、断念。いつか参拝したい。

 香取駅無人駅で、前回下車した時は貨車を利用した駅舎だったが、新しく神社をイメージしたような駅舎に変わっていた。


(2000年3月の貨車を廃物利用した香取駅舎)

 香取では15分ほど待って、10時15分発の銚子行きに乗る。もうダイヤは正常に戻って、列車は時刻表通りにやってきた。209系の6両編成。房総の海と菜の花をイメージした青と黄色の帯はすっかり色あせている。

 利根川右岸の田園と里山の風景を眺めながら、電車は走り、松岸で総武本線と再び合流して、銚子には10時56分到着。

 ここからはいつものように銚子電鉄に乗り換え。降りたホームの前方に乗り場がある。銚子電鉄といえば、大阪の南海電鉄の古い車両が「新車」としてやってきたことが最近の話題で、それが今回のちょっとした楽しみでもあった。

 何やら妙な人(?)がホームに立っている。そして、電車がやってきたが、前から走っている昔の京王線の車両だった。それにしても、赤い頭の女の子は何者なのか? 「銚子市特別観光大使リコちゃん」と書かれた襷を掛けている。


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 あとで調べたところによると、リコちゃんとは15代続く銚子市内の農家が銚子の農業PRのために生み出したオリジナルキャラクターで、ウッド村ファームでトマトの管理を担当する高校1年生で実は宇宙人という設定らしい。それが銚子市の特別観光大使に任命されて、観光PRにも一役買っているようだ。

 真っ赤な髪の毛と緑のリボン(葉っぱ?)や手袋の色などはトマトをイメージしているそうで、リコちゃんはリコピンからきているのか? チコちゃんの親戚みたいでもあるが・・・。

 上の動画で電車が停止すると同時に女性の運転士がリコちゃんに手を振っているのが確認できるが、この人は2018年夏に乗った時は車掌だった人だと思う。車内で一日乗車券「弧廻手形」を買ったので、なんとなく覚えている。

 今日は車内で男性の車掌さんから700円の「弧廻手形」を買うが、仕様が変わって、銚電名物のぬれ煎餅1枚無料サービスが消えていた。

 この電車は前回はお化け屋敷電車になっていた車両だ。今年も8月11~15日に運転されるらしい。

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f:id:peepooblue:20180819130040j:image(2018年8月)

 赤字経営で、つねに廃線危機に直面している銚子電鉄だが、今日はけっこうな乗車率で、車掌さんは汗だくになりながら、切符を売っている。弧廻手形を買う人が多いようだ。IC乗車券の類は一切使えないので、途中駅でも下車客の切符を回収したり、乗ってきた人の切符を確認したり、なければ車内券を発行して料金を受け取ったりで、大忙しだ。ドアの開閉は運転士の役目のようだった。

 11時15分に銚子を出た電車は20分で犬吠駅に着いた。ここで下車。

 犬吠駅は沿線で一番の観光地、犬吠埼の最寄り駅であるから、駅舎内に土産物売り場もあり、ぬれ煎餅や前回は完売だった「まずい棒」なども売っているが、夏場だからか、たい焼き屋は休みだった。経営状態が「まずい」銚子電鉄は鉄道収入よりも煎餅やたい焼きなどの副業の収益の方が圧倒的に多く、そうした状況を「まずい棒」以外にもいろいろな自虐ネタにして打ち出してもいる。

 「鉄道会社経営もさっぱりと甘くない・・・まずそーだ」

 「電車屋なのに自転車操業!」

 笑ってばかりもいられないが、安全運行だけはちゃんとお願いしたい。

 犬吠駅の2階には鉄道写真家・中井精也さんのギャラリーがあり、中井氏が理想とする、でも失われつつある鉄道の風景を再現したジオラマの展示もある。

 先ほどの電車が外川から折り返してきた。

 さて、犬吠埼へ向かって炎天下の道を歩き出す。暑いけれど、海の見える風景というのはやはりいいな、と思う。相変わらずセミが賑やかで、アオスジアゲハがひらひらと飛んでいる。

 草むらではキリギリスが鳴いている。キリギリスは日常の生活圏にはいないので、この声は僕の中では夏の旅のイメージと結びついている。姿を見つけたいといつも探してみるが、大抵は見つけられない。

 閉鎖された水族館の前を通り、犬吠埼にやってきた。正午が近いので、とりあえず昼食にする。

 磯定食。マグロとメカジキの刺身。焼き魚はサバの干物。

 

 さて、灯台へ犬吠埼灯台にはもう何度も訪れていて、そのたびに上まで登っているが、今回もまた登る。昔は150円だったが、前回は200円、今回は300円になっていた。この間、2020年には国の重要文化財に指定されている。GPSなどの発達によって灯台の光を頼りに航海する時代は過去のものになりつつあるが、犬吠埼灯台はこれからも末長く大切にされることだろう。

 99段のらせん階段と鉄の梯子を登って、灯台の上部に出る。関東地方の最東端に位置し、太平洋に突き出た犬吠埼なので、地球がまるいことが実感できる。


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 犬吠埼の北側、君ヶ浜。

 灯台の南側、長崎鼻

 灯台のレンズ。

 灯台の電球はそれほど大きなものではない。というか、小さい。巨大なレンズによって光を明るく、遠くまで届けることができる。灯質は単閃白光、毎15秒に1閃光。光達距離は19.5海里(約36キロ)である。
 

 灯台の敷地内には霧信号所の建物がある。

 霧信号は濃霧などで視界が不良の際に音によって、航行する船舶に灯台の位置を知らせる装置で、一般には霧笛と呼ばれている。北海道東部などで霧笛が吹鳴されているのを何度か聞いたことがあるが、今では役目を終え、すべての霧信号所は廃止されてしまった。犬吠埼の霧信号所も2008年3月末で廃止となったが、その後、国登録有形文化財、さらに重要文化財に指定され、建物も吹鳴装置も保存され、現在はボタンを押せば、今日のように天気が良くても霧笛を聞くことができる。日本の霧笛は電磁力により発音板を振動させて音を出すダイヤフラムホーン方式が主流だったが、犬吠埼では圧縮空気を利用したエアサイレン方式で、牛の鳴き声みたいな独特の音である。


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 入口にはカーテンが掛かっていて、ツバメが入らないようにするためだと書いてある。重要文化財だから、内部にツバメが巣を作ってしまうと困るのだろう。

 霧笛舎内に展示されている犬吠埼灯台初代レンズ。フランス製で、灯台が完成した明治七(1874)年から昭和二十六(1951)年まで使用された。

 灯台見物はここまでにして、今回はもうひとつ犬吠埼で見たいものがあるのだが、とりあえず、今日はここまで。

 

 つづく

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