真岡鐡道の旅

 この夏の「青春18きっぷ」の旅はまだ2回しか出かけていないのに9月になってしまった。列島各地に記録的な豪雨をもたらした台風10号が予想以上にのろのろと迷走し、まだ影響が残っている。9月1日朝の時点で東海道新幹線は東京~名古屋間で運転見合わせ、東海道線も小田原~熱海間で運転見合わせ、小田急線も伊勢原~秦野間で線路の盛り土が崩れて運転見合わせ。要するに東京から西へ向かうのは難しい状況だ。北関東方面のほうがまだマシではないかと考え、とりあえず9月1日に栃木県方面へ出かけてきた。行きたい場所は別にあるのだが、それは来週、天気が回復していることを期待して、今週はとりあえず栃木県あたりへ。

 朝食後に家を出て、新宿から埼京線で赤羽へ行き、8時17分発の宇都宮行きに乗車。この列車の本来の始発駅は熱海(6:04発)だが、今日はどこから来たのだろう。

 この列車で宇都宮まで行き、日光線に乗っても、烏山線に乗っても、そのまま東北線で黒磯や白河、さらに先まで行ってみてもいいかな、などと考えていたのだが、車内で時刻表を眺めているうちに気が変わって、9時23分着の小山で下車。旅行をする時、行先がはっきりと決まっているマトモな人にとってはスマホがあれば十分であるが、どこかへ行きたいけれど、行先が決まっていないという場合には今でも時刻表は必携である。

 で、どうすることになったかというと、小山から水戸線で下館に行って、真岡鐡道(下館~茂木)のSL列車に乗ろうと思う。下館10時35分発の「SLもおか号」があり、時刻表に「9月1日までの土・日曜と8月10→12日運転」とあるから、今日は運転日なのだ。実はSLの牽く列車というのは山口線留萌本線などで見たことはあるけれど、まだ一度も乗ったことがない。一度、真岡鐡道のSL列車に乗るチャンスはあったのだが、その前に訪れた益子のお寺で住職にお堂の中を案内してもらったりしていたら、予想以上に時間がかかって乗り遅れてしまったのだった。ということで、今日は初めてのSL体験だ。

 小山9時45分発の下館行きに乗車。E531系の5両編成。小山駅のある東北本線は直流電化だが、水戸線は交流電化で、小山と次の小田林の間に切換区間がある。E531系はどちらも走れる交直両用電車である。

 小山を発車した電車は東北線から分かれて左へカーブし、直線区間に入る。やがて、直流1500ボルトと交流20000ボルトの異なる電流が流れる区間の間に架線に電流が流れていないデッドセクションがあり、ここで切換えが行われ、予め十分に加速した電車はモーターが止まった状態で惰性で通過する。昔はこの時、車内灯も消えて、夜間でも車内が数十秒間、真っ暗になったものだが、今は車内灯が消えることはない。ただ、エアコンの音が消えて、しばらくすると再び入るので、デッドセクションを通過したことが分かる。

 (動画)音で楽しむデッドセクション通過。2:15頃、空調が停止。2:48頃に再起動。


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(東結城~川島間で鬼怒川を渡る)

 小田林の手前で茨城県に入り、結城を過ぎ、濁流となった鬼怒川を渡って、右から関東鉄道常総線、左から真岡鐡道の線路が近づいてきて、10時08分に下館到着。

 真岡鐡道の乗り場にまだSL(C12)の姿は見えない。改札口を出なくても、真岡鐡道のホームへ直接行けば乗車券もSL整理券(500円)も買えるようなので、跨線橋を渡って真岡鐡道乗り場へ行くと、いつのまにかスイカみたいな色の気動車が到着していた(10:09着)。SLもおか号の前に出る10時17分発の茂木行きだ。そして、乗り場には「台風接近のため10時35分発SLもおか号は運休いたします」という貼り紙があるではないか。ええっ!

 雲が多めとはいえ、雨が降っているわけでも強風が吹いているわけでもなく、SLの運転に支障があるとは思えないが、運休は事前に決定していたのだろう。がっかり。初SLはまたお預けとなった。そのうちまた乗りに来よう。とにかく、真岡鐡道は益子~茂木(もてぎ)間が未乗なので、今日は全区間乗って、できれば茂木からバスで宇都宮に出たいと考えている。

(モオカ14-6。0キロポストがある。真岡鐡道は茂木まで41.9キロの路線)

 車内で茂木までの乗車券を購入。1,050円。1両のディーゼルカーに乗客は9人。ガラガラである。車内はすべてロングシート

 常総線の列車が到着したが、乗り換え客を待つことなく、10時17分に発車。

 列車は水戸線から分かれて右へカーブして、北へ針路をとる。

 この真岡鐡道は旧国鉄真岡線で、歴史は古く、明治末の1912年に下館~真岡間が開業。1920年に茂木まで開通した。国鉄民営化から1年後の1988年4月に第三セクターの真岡鐡道に生まれ変わって現在に至る。

 車窓は平凡といえば平凡で、のどかな田園風景が続くが、こういう景色は好きである。田んぼが黄色く色づきかけている。

 2つ目の折本駅では駅舎の瓦屋根の一部にブルーシートが掛けてあったが、先日の台風7号の影響だろうか。

 茨城県筑西市から栃木県真岡市に入って久下田に停車。ここで上り列車と行き違い。

 前方に有名なSLの形をした大きな駅舎が見えてきて、真岡に到着。駅構内にさしかかった瞬間、この駅で降りたいと思った。蒸気機関車が展示され、ほかにも国鉄形のディーゼルカーディーゼル機関車など懐かしい車両がいろいろ留置されている。しかし、茂木までの切符を買ってしまったし、今回は途中下車は断念。

(SLの形をした巨大な真岡駅舎が見えてきた)

(SL9600形か)

(左にキハ20-247、右にDE10-1014、SL列車用の50系客車など。C12の姿は見えなかった)

(下館行きと二度目の交換)

 真岡で8分ほど停車する間に下館行きと行き違いがあり、10時50分に発車。ここから線路は東へ向かう。乗客は真岡までにほとんど降りて、僕を含めて2人だけになった。

 思っていたより天気も良くなって、これならSL列車を走らせてもよかったのではないかと思ってしまうが、仕方がない。もし運転されていたら、どのぐらいの乗客があっただろう。

 焼き物で有名な益子には11時04分頃到着。もとは線路が2本あったようだが、今は駅舎のあるホームに線路1本だけの駅になっている。ここから年配の夫婦が乗ってきて、乗客が4人になった。

益子駅に到着。11:05発)

 益子からが初めて乗る区間である。線路はここから再び北へ向かう。

 益子の次の七井で3度目の列車行き違いがあり、多田羅、市塙と行くうちに、平地がだんだん狭まってきて、列車は山裾を行くようになる。

 市塙を過ぎると、線路はまた東へカーブして、笹原田、天矢場と山間の小駅に停まり、少し開けて、渓流が近づいてくる。道の駅らしい施設があり、たくさんの鯉のぼりが泳いでいると思ったのだが、鯉のぼりにしてはちょっと地味な色合いだ。あとで調べてみると、「鮎のぼり」なのだった。茂木町内を流れる那珂川が鮎の捕獲高日本一であることにちなんだようだ。

(道の駅もてぎの鮎のぼり)

 終点の茂木には11時34分に到着。SLの方向転換をする転車台がある。

 茂木からは宇都宮までバスがあり、次の発車は13時30分。約2時間ある。駅前の観光案内地図を見ると、見どころはいろいろあるが、駅からけっこうな距離がありそう。近いのは茂木城址だ。ということで、城山公園をめざして歩き出した。

 つづく